いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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10吋(インチ)レコードを聴きながら

*[コラム] 10吋(インチ)レコードを聴きながら

 

10吋(インチ)はいいですね。ポツポツとレコ屋に出たところを見つけて集めている。10インチは78回転のSPと同じサイズ。でも、重たくて割れやすいSPとは違い、ヴィニールで軽く割れにくい。日本盤だと1950年代後半から60年代初頭くらいまでのものをよく見かける。薄型のコーティング仕様で独特の着色のジャケがレトロ感満載な感じ。12インチのお馴染みのアルバムサイズのLPレコードが出るまでは、LP(ロング・プレイング)といえば10インチだった。

 

ここのところ、往年のミュージシャンの新譜CDを買うと、「でかジャケ」などと称して拡大サイズのジャケが特典で付いてくるけれど、このサイズが大抵10インチなんですよね。12インチよりコストが安いからだと思うけれど、中途半端なサイズだと思っている人もいるかもしれない。

昨日買った10インチ3枚。1枚目は1959年にコロムビアからリリースされたマイトガイ小林旭大いに歌う』。「銀座旋風児」と書いて「ギンザマイトガイ」と読ませる。最高です。主演映画のタイトル曲”ギターを持った渡り鳥”を改めて聴くと、田端義夫風の生エレキの音色とか、ドゥ・ワップから来ているんだろうけれど、後のムード歌謡でもお馴染みとなる「ドゥー・ワー」なんてコーラスといい、良いですよね。そもそも股旅+西部劇っていう文化的折衷も面白い。

2枚目はTAKESHI TERAUCHI AND HIS BLUE JEANS『SCREEN MOOD ON THE ROCK(スクリーン・ムード・オン・ザ・ロック)』。コレ、調べてみると1963年に東京・キングレコードからリリースされた、寺内タケシとブルー・ジーンズ(ジャケ裏の解説では「寺内タケシとブルー・ジンズ」と表記)初のLPとのこと。背表紙に寺内やブルー・ジーンズの表記はないから、お店なんかでBGMとして使われた、ロックで映画音楽を演奏するムードものの一つだったのだろう(選曲は出演していたジャズ喫茶のお客さんのリクエストらしい)。ヴェンチャーズの”Walk Don’t Run”(ジャズ・ギターのジョニー・スミスの曲ですね)、そして”Jailhouse Rock(カンゴク・ロック)”に始まり、“High Noon(ハイ・ヌーン)”(『真昼の決斗』)、”Mack The Knife(匕首マック)”(『三文オペラ』)、”The Third Man Theme(第三の男)”などを収録。解説のメンバーに含まれていないけれど、ジャケットの演奏写真(日劇ウェスタン・カーニバルか?)にはボーカルの ほりまさゆき と、後にワイルドワンズを結成する加瀬邦彦も写っている。

そして3枚目は『スリー・キャッツのセクシイ・ムード 桃色の風』コロムビアから1960年にリリースされた2枚目のLP。浜口庫之助が手がけた”黄色いサクランボ”に代表されるお色気路線で知られる女性ボーカル・トリオ。結構タイトルは露骨なんですが、見た目的には女性ジャズ・ボーカルものの線だったことがわかる。そもそも女性ジャズ・ボーカルものの一部は、マイクロフォンを効果的に使って吐息を耳元のように聴かせるジャンルだった。ここには収録されていない”黄色いサクランボ”は、ゴールデン・ハーフが1970年にカバーして大ヒットした。そういえば、大正生まれの私の祖父が亡くなる前に、当時大学生だった私がレコードを集め始めていることを知って、突然「スリー・キャッツの黄色いサクランボのCDを探してもらえんか」と電話がかかってきたことを思い出す。ゴールデン・ハーフではない、もう一度聞きたい、と何度も念を押されて。今ならすぐ探せたと思うし、YouTubeの時代なら何でもないことなんだけれど、当時の私の力では難しくて。あの頃おそらく単体のCDは出ていなかったんじゃないだろうか(その後アルバムがCD化された)。結構中古レコード屋さんなんかも回ったけれど、見つからないままになってしまったことが今でも悔やまれる。