いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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[NEW!!]評論家・映画監督の切通理作さんが店主を務める阿佐ヶ谷・ネオ書房の読書会を開催します。
哲学を学び直したい人のために ネオ書房【倫理教師・石浦昌之ライブ読書会】 12月20日(日) 18時半開場 19時開演 高校倫理1年間の授業をまとめた新刊『哲学するタネ 西洋思想編①』(明月堂書店)から、西洋哲学の祖、ソクラテスを取り上げます。 内容 ◆ フィロソフィア(愛知)とは? ◆「無知の知―汝自身を知れ」 ◆問答法はディアロゴス(対話)の実践 ◆「徳」とは何か? ◆プシュケー(魂)への配慮 ◆善く生きることとは? 入場料1200円 予約1000円  予約kirira@nifty.com
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[NEW!!]『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】が2020年10月20日に2冊同時刊行!!。
『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】2020年10月20日発売
●石浦昌之著
●定価:西洋思想編1 本体2000円+税(A5判 330頁)(明月堂書店)
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●西洋思想編2 本体1800円+税(A5判 300頁)(明月堂書店)
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[NEW!!]2020年7月31日発売『URCレコード読本』(シンコー・ミュージック・ムック)に寄稿しました(後世に残したいURCの50曲 なぎらけんいち「葛飾にバッタを見た」・加川良「教訓1」・赤い鳥「竹田の子守歌」、コラム「高田渡~永遠の「仕事さがし」」)。
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ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ「x-bijin」初のアルバム『x-bijin』(2020年6月26日発売)、リリースインフォにコメントを書かせてもらいました。
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11月15日発売のレコードコレクターズ12月号に加奈崎芳太郎『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(明月堂書店)の書評が載りました。
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編集・ライターを担当した加奈崎芳太郎著『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(エルシーブイFM「加奈崎芳太郎のDIG IT!!」書籍化)が2019年8月に発売されました。
●加奈崎芳太郎著・桑畑恒一郎写真
●定価:本体3000円+税
●A5判(上製)416頁(明月堂書店)
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【メディア掲載】
『毎日新聞』2019年10月3日掲載 「元「古井戸」加奈崎芳太郎さんが本出版 音楽活動50周年の集大成」
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『長野日報』2019年9月25日掲載 「音楽文化で伝える戦後 パーソナリティのFM番組まとめ 加奈崎さん書籍刊行」
極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」が書籍化されました。
『哲学するタネ【東洋思想編】――高校倫理が教える70章』(石浦昌之 著)2018年10月10日発売
●石浦昌之著
●定価:本体2500円+税
●A5判(並製)384頁(明月堂書店)
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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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【ブックガイド掲載】
斎藤哲也『もっと試験に出る哲学――「入試問題」で東洋思想に入門する』(2020年、NHK出版新書)

Tuck & Patti / Tears Of Joy

*[ジャズ] Tuck & Patti / Tears Of Joy(Windham Hill Jazz / 1988)

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 ジャズギターとボーカルだけの夫婦デュオ、タック&パティ。見たところ、ひと頃のバンキー&ジェイクのように見えるかもしれない。彼ら、超絶テクニックを誇るタック・アンドレス(デビュー前はGap Bandのセッションメンだったんだとか)と、ソウルフルでエモーショナルなボーカルで思わず胸を鷲づかみにされてしまう、パティ・キャスハートの二人組。たった二人の音だということを忘れてしまう程の素晴らしい演奏を続けざまに演じる。大学生くらいの頃、実家近くにあるカフェみたいな所になぜか彼らが来たことがあったけれど、5000円というチケット代がなくて、行けなかった。本当にお金がなかった。一生後悔するレベルの出来事。彼らもすでに70歳前後…いつか生演奏を聴ける日は来るのだろうか。

 

1988年にウィンダム・ヒルからリリースされたこのファースト・アルバム、ボブ・ドローの”I’ve Got Just About Everything”も印象的なのだけれど、何といってもシンディ・ローパーのカバー、”Time After Time”に尽きるのではないだろうか。かつて鬼束ちひろが全く同じ歌い回しでカバーしていたことがあったけれど、レイ・チャールズビートルズを唄った”Yesterday”同様、この名演で一つのスタンダードを作り上げてしまった。音の抑揚、心と伴走するリズム、言葉を汲み取った歌とギターの表現力…何を取ってみてもこれこそが音楽。何よりソウルが感じられ、涙が止まらなくなってしまう。「ソウル(たましい)」という、目にも見えず数字にも置き換えられないものが確かに存在していること、それがいちばん大切だということに改めて気付かされる。昨年末の紅白歌合戦も村祭りのカラオケ大会のようにしか聴こえず、申し訳ないけれど口パクで踊っている人たちにも一切関心が湧かなかったけれど、出場していなかった細川たかしやゲストで出ていた玉置浩二の方がよっぽどソウルを持っているということにはなるだろう。タイトル曲”Tears Of Joy”もとても良い。うれし涙、という意味になるけれど、喜びと涙というのは相反するイメージもある言葉だから、イマジネーションを掻き立てられる部分がある。CD時代の作品だけれど、ウィンダムヒルのリリースだし、もしかしてヨーロッパやアメリカではLPも出ていたのでは…と先日discogsで探してみると、マンハッタンのレコ屋にて4ドル99セントで発見!安レコでもすぐに送ってくれました。アナログでタック&パティを聴けるなんて…有難いことです。

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AC/DC  / Power Up

*[ロック] AC/DC  / Power Up(Columbia / 2020)

 

先日CSN&Yのことを書いたら、なんと加奈崎芳太郎さんのLCV-FMのラジオDIG IT!の新年一発目の特集もCSN&Yの『Déjà vu』でありまして。なんというシンクロ!加奈崎さんもそのことを書いてくれていたけれど(https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=840060866778953&id=100023251419779)、縁起が良いな~と嬉しくなった次第。

 

ところで短い正月の隙間時間に、買い貯めていたライブDVDやらブルーレイやらを観まくっていたら、ライブに行きたくて仕方が無くなった。コロナ禍でも行けるライブはそれなりに足を運んでいるのだけれど(どこも感染対策に相当気を遣っているから、混雑電車より安全だと思った)、デカい箱で会場が揺れる密なやつなんかを、何としても再び。友川カズキさんがコロナ禍にあって、(自分は)飛沫歌手だから、とおっしゃっていたけれど、それでしか聴衆が満たされない何かがある。客席を限り、同時並行でオンラインとか、無観客とか、YouTube配信とか…色々な手法で存続するライブだけれど、むしろ家で観れて便利ですと、それだけで満たされる人もいるのだろうけれど、やっぱり一寸違う。万障繰り合わせて、仕事をかなぐり捨てて会場まで走って駆け付け、かぶりつきで音のシャワーに浸る…っていうのがなくなっている今は、狂っちゃうくらい音楽好きな人にとっては結構辛い。パフォーマーやそのスタッフだけではなく、ライブハウスやホール、音響スタッフ、チケット販売、呼び屋、あるいはハコの近くの飲み屋もそうですよね…ライブ音楽の総体としての文化そのものが緊急事態になっている。しかしこの国の政治家のリーダーシップの無さも緊急事態になっていますから、やるせなさ、が、ゆるせなさ、に変わってしまうような所もある。

 

閑話休題AC/DCの新譜の話。

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マルコム・ヤング認知症公表の後、2017年に亡くなり、ドラマーのフィル・ラッドは殺人教唆で逮捕、ボーカルのブライアン・ジョンソン聴覚障害でツアーから戦線離脱、クリフ・ウィリアムズは引退表明…ってとうとう歴史は終わったかと思ったAC/DCが昨年末に新作『Power Up』を奇跡のリリース。コロナ禍を励ますがごとく、英米でアルバムチャート1位を記録した。思えばボン・スコットの死からも不死鳥のように蘇ったバンドだったわけで。ブレンダン・オブライエン・プロデュースのスッキリとしたハード・ロックサウンドは2008年の『Black Ice』、2014年の『Rock or Bust』に続く三部作のような感覚。楽曲はアンガスと故マルコムのクレジットになっているように、アウトテイクを録り直したもの。図抜けた曲がない、と思ったとするならば、それが理由だろう。とはいえ、そもそも個人的にはこのバンド、フリーのボーカルがロバート・プラントになったかのような、(ブライアン時代の)重たいロック・サウンドに魅了されたことが、大好きになるキッカケでもあったから、この金太郎飴ぶりがむしろツボにハマる。アナログ需要を見込んでか、輸入盤アナログにもソニーの日本盤の帯が付いていた。しつこいようだけれど、無性にライブに行きたくなってきた。

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グレッグ・リーヴスとCSN&Y『Déjà vu』

*[コラム] グレッグ・リーヴス(Greg Reeves)とCSN&Y『Déjà vu』

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CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)の『Déjà vu』…1969年というウッドストック・エラを象徴するエポックメイキングな1枚。たぶん1000回以上は聴いたはずだけれど(笑)、このジャケは何?と手が止まってしまった。手が込んだあのセピアの写真がツルツルの紙にそのまま印刷されている。背景もクリーム色に変わっているが、どうもフランス盤なんだとか。思えばフランス的感性にカスタマイズされているような…この辺が各国盤の面白さだ。そういえばスティーヴン・スティルスはフランスのシャンソン歌手ヴェロニク・サンソンと結婚し、息子のシンガー・ソングライター、クリスが生まれたんだった。このフランス盤、音はミックスがちょっと違うように聴こえて、アメリカ盤よりはイギリス盤に似た粒の立ったエグイ音。ギターソロがよりハッキリ聴こえたのが収穫だった(一部のスティルスのソロの危なさもわかったが、それでいてニールとのソロ合戦の迫力は増していた)。

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ふと写真を見ていて気になったのは、ジャケットにでかでかとクレジットもされている黒人ベーシストのグレッグ・リーブス。ドラマーのダラス・テイラーはClear Lightのメンバーだと知っていたけれど、グレッグ・リーブスは(写真左下)?

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調べてみると、彼はこのレコーディング時に14歳くらい。12歳で家出してモータウンのジェイムス・ジェマーソンの手引きでセッションマンになったんだとか。テンプテーションズの”Cloud Nine”のベースはグレッグの手によるものらしい(ジェイムスだという説もあるので判らないが)。CSN&Yに引き抜きに来たのはクロスビー&ナッシュ。アフリカン・アメリカンネイティブ・アメリカンの血もひく彼は、リベラルな白人バンドにとってはヒップなポジションだったのかも。当時リック・ジェイムス(後にファンクで大成功する彼だが、当時はモータウン在籍のバンド、マイナーバーズ――ニール・ヤングがギターを弾いていた――のメンバーだった)と一緒に住んでいた所をほぼさらわれるように、車で連れていかれたらしい。”Carry On”のフレーズを作ったり(クレジットはない)、音楽的貢献もあったようだけれど、スティルスと相性が悪かったみたいで、すぐに追い出されてしまう。麻薬によるものか黒魔術的奇行もあったらしいし、若くして手にしたプレイの奔放さや独創性が、我の強いスティルスを脅かしたのかもしれない。その後のレコーディングは数少なくて、ニール・ヤング『After The Gold Rush』ジェイムス・テイラーの兄アレックス・テイラーの『With Friends And Neighbors』収録の”C Song “、ジョン・セバスチャン『Four Of Us』収録の”Well, Well, Well”、デイヴ・メイソン『It's Like You Never Left』のタイトル曲と”Head Keeper”、クロスビー&ナッシュの” Immigration Man”(リード・ギターはデイヴ・メイソン)、リッチー・ヘヴンスの『Mixed Bag II』におけるデイヴ・メイソンのカバー” Head Keeper”とニール・ヤングのカバー”The Loner”くらい。あとはソングライターとして、ジョニー・ブリストルとの共作で、トム・ジョーンズボズ・スキャッグスがレコーディングした” I Got Your Number”が知られるものの、70年代後半はドラッグでメキシコの刑務所に入り、80年代前半にはジョージ・クリントンのレコード制作に携わるも、大学に戻って音楽から足を洗ってしまったらしい。

 

しかし、2017年に突然リリースされたのがグレッグの” Working Man”という曲。グレッグにとって音楽とのケリをつける意味でも出さざるを得なかった曲らしく、元々ニールと共に親交があったニルス・ロフグレンと作ったデモはアップルレコードに興味を持たれ、ジョージ・ハリスンも聴いたようだ。その後、デュエイン・オールマンらを加えた1971年のレコーディング、アサイラムにてグレアム・ナッシュとスティーヴィー・ワンダーが変名で加わったレコーディングが存在したが、いずれも結局お蔵入りしてしまっていた。2010年のツイッターにはLos DémonesというLAのバンドのプロデューサー、ベーシストを務めていたとあるが、音はどこにもない。あとは2006年にトム・ウェイツ・タイプの南カリフォルニアのシンガーソングライター、ジェシディナターレ(Jesse Denatale)のアルバム『Soul Parade』に参加した情報があるが、音だけでは参加の有無が判らなかった。調べていくとホームページもあったのだが(http://gregreevesmusic.com/)、何やら既視感(Déjà vu)が。おそらく以前も気になって何度か調べたものの、その度に謎が深まり、放置していたのだろう。HPでペイパルを通じて、お布施のつもりで曲を買ってみたが、返事はない。たぶん、いつまで経っても返事はないのだろう。

山本剛トリオ with 森山浩二 / 飛騨高山ジャズセッション

*[ジャズ] 山本剛トリオ with 森山浩二 / 飛騨高山ジャズセッション(MASTER MUSIC / 2018 )

 

明けましておめでとうございます。

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昨年は日本のブルーノート、と謳われるレーベル、スリー・ブラインド・マイス(TBM)の手ごろな再発がまたドカドカ出まして。そこで山本剛のピアノをとりあえず全部聴こう、となりまして。『ミッドナイト・シュガー』『ミスティ』、ヤマ&ジローズ・ウェイヴ名義の『ガール・トークなんかは本当に凄かった。時代的にもロック的感性が注入された和ジャズの最高峰だと再認識した次第。芸術性と商業性っていう永遠のテーマがあるけれど、ジャズが日本でマトモに売れた試しは無いのでは。話題になったのもフュージョンとか女性ボーカル。よって多くの日本のジャズメンはフォーク・ロック/歌謡曲のセッションメンとして糊口を凌いだ。私とて、山本剛トリオとは古井戸1975年の大名盤『酔醒』にて邂逅。山本剛は元々ミッキー・カーティスのバンド、サムライズの60年代末のヨーロッパ公演でメンバーだった人。この人のピアノの一音一音がツボにハマってしまって。そこから彼と組んでいた森山浩二というシンガーに出会い、そのスインギーなスキャットに日本一の怪物を見た次第。今後もこの人を超える男性シンガーは出て来ないんじゃないだろうか。

www.youtube.com

 

 

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森山は”ワシントン広場の夜はふけて”とジョニー・シンバルのカバー”僕のマシュマロちゃん”で1964年にシングルレコードを出した後、やりたかったジャズの世界に進み、箱バンに出演。六本木のクラブ、ミスティで山本剛トリオと共演していた折にレコーディングの機会に恵まれたそうだ。穐吉敏子の名著『ジャズと生きる』を読んだ時も思ったけれど、プレイヤーにしても聴衆にしても、いかにジャズが夜のオッサンの音楽であるか、ということは、見目麗しい女性ボーカルと比べ、特に日本では男性ボーカルが売れないことからしてよくわかる。それにそもそもジャズって音楽は大好きだけれど、ジャズ・シーン全般になぜか近寄りがたいところがあるように思えるのは、オッサンが牛耳っていて閉じた世界になっていることに起因するのかも。

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そんなわけでフランク・シナトラやペリー・コモのいない日本において不遇な男性ジャズ・ボーカリストとなってしまった森山浩二のレコーディングはとても少ない。山本剛との2枚(1976年の『ナイト・アンド・デイ』と1977年の『スマイル』)、そして1979年の『ライヴ・アット・ミスティ』(弟である弘勢憲二のエレピや、高柳昌行のギターも聴ける)が本人のリーダー作。それ以外だと俳優でジャズ信者だった藤岡琢也がプロデュースした『レッツ・スウィング・ナウ』の4作目(若かりし渡辺香津美も参加)にパーカッショニストとして名を連ねているほか、同じくパーカッショニストとして参加した藤井貞泰トリオ1977年の『Like A Child』で1曲” One Note Samba”を唄っているくらい…他にもあったら教えて欲しいもの。今ならなぜこれほどまでの才能が…と思うけれど、それでもレコーディングの機会が巡って来ないのが正直日本の実情だった。

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そんな折に先日見つけたのが、1975年当時の未発表ライブ音源で、山本剛トリオ with 森山浩二 名義の『飛騨高山ジャズセッション』。山本剛のピアノ、小原哲次郎のドラムス、大由彰のベース…ダイナミックかつ繊細な各人のソロの力量もさることながら、民生機で録られたとは思えぬ音の良さにビックリ。CDの単価が高いのは閉口したけれども、ここまでくると致し方ない。佐賀の国指定重要文化財の酒造・吉島家住宅での録音。TBMのプロデューサーだった方が記したライナーには1944年生まれの森山の父が声楽家だったこと、中学時代から米軍キャンプでタップダンサーとして踊り、日劇にも出てナベプロでシングルを出したこと(前述の”ワシントン広場”&”僕のマシュマロちゃん”のことだろう)、ナベプロ退所後はジャズ・シンガーの口が無くて苦労したこと、レコーディングの機会に恵まれた70年代を経て80年代にハワイ出身の女性と結婚し、オアフ島へ移住、90年代には仕事で歌を歌うこともなく、2000年には病に伏して亡くなっていたこともわかった。

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ちなみに『飛騨高山ジャズセッション』、2枚のアルバム未収の”’S Wonderful”が入っているのも聴きものだし、最後には20分近くに及ぶ”Downtown”が入っていて、大いに盛り上がる。ライナーには山下達郎の…と詳細なシュガーベイブのメンバー説明などもあって大いに期待してしまったけれど、何のことはない、トニー・ハッチ/ペトゥラ・クラークの”Downtown”でした。世代的にジャズ畑の人にとっては、ポピュラー・ヒットなんてシュガーベイブもトニー・ハッチも区別のつかないどうでもよいものだったのかもしれない。とはいえ、伊藤銀次さんが「ダウンタウンヘくりだそう」っていう歌詞のモチーフとして念頭にあったのはトニー・ハッチ/ペトゥラ・クラークだったらしいから、まあ良しとしますか。

 

今年は少しでも良い年となるよう、心より祈念しております。本年も本ブログをよろしくお願いいたします。

小坂忠とフォージョーハーフ / ロック・ソサエティ・ウラワ1972 RSU夏の陣

*[日本のフォーク・ロック] 小坂忠とフォージョーハーフ / ロック・ソサエティ・ウラワ1972 RSU夏の陣(ディスクユニオン / 2020)

 

年末感のない非日常が続いているけれど、非日常に慣れてしまうのもよろしくない。これが新しい日常ですなどと上から押し付けられるのはもっとよろしくないんですが。そういえば先日新たに手に入れたターンテーブル、オークション行きと相成り…決して悪くはなかったのだけれど、良くもなかったという。個々の部品がすごく軽くなってしまっていて、音もその分軽くて。ただブルートゥースもついていたし、現代的ニーズは満たしていた製品だったので、すぐに旅立っていきました。で、その代金を握りしめ、結局Technicsのド定番SL1200MK3を近所のリサイクルショップで購入。ヘッドシェルがついていたから、財政的にはカナリ助かった。大体どこでも中古だと2万円台半ばで売っている模様(後続機種はもうちょっと高い)。1989年製だけれど、かつての日本・松下電器製は素晴らしい。ダイレクトドライブの堅牢な作りで30年選手ながらビクともせず、音も半端なく良かった。お店のDJブースやレコ屋の視聴機が全部コレである理由が恥ずかしながら今更わかりました…ちょっと調べてみると、2010年にDJブームの終焉に伴いTechnicsブランドは生産終了になったものの、2015年に復活。ただ、現行のSL1200は市場価格15万くらいするみたいで…誰が買えるんだろう(笑)高利薄売ってことでしょうね。国産ではもはや、コスト的にこの手の作りのものがこの値段でしか出せない現状には落涙するほかない。ちなみにカートリッジはオーディオテクニカのAT-VM95Cが安い割に良い音で、国産優良メーカー流石!と思えました。

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そんなこんなで、まだ入手していなかった小坂忠とフォージョーハーフの1972年8月26日・埼玉会館大ホールでの蔵出し音源を聴いている。ロック・ソサエティ・ウラワという未発表ライブ・アーカイブエンケン、ブレバタ、高田渡、湯川トーベンのいた神無月とか、気になる蔵出しが多くてずっと気になっていた。オープンリールが奇跡的に残っていたようだけれど、かつて浦和のみならず各地方にロックを愛し、地元にミュージシャンを呼ぼうとした若者達がいたことに胸が熱くなる。

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コレ、LPで買う必要はないのかな、とも思ったけれど、なぜかLPを選んでしまった。でも音を聴いたら生々しいアナログの良さが出ていて驚いた。小坂忠とフォージョーハーフ、約1年間の活動の中で、ライブ音源として世に出た『もっともっと』とは違い、レコードにするための録音ではなかった分、熱をもったアンプから焦げた埃の匂いが漂ってくるかのような臨場感がある。小坂忠、駒沢裕城、林立夫後藤次利松任谷正隆という今思えばレジェンド級の布陣。駒沢のスティール・ギターがリード楽器の役割を果たしているのがとてもユニークだ。四畳半をもじったバンド名が、四畳半フォーク全盛時代へのささやかなアンチテーゼになっている。今聴くと、ポコとか、70年代前半のカントリー・ロックのレコードと共通する肌触りになっているのが面白い。商業性に足を突っ込む前のロックの純朴な感性に圧倒される。70年代の小坂忠に今なおジェイムス・テイラーのイメージが重ねられるのは、細野さんの”ありがとう”のイメージが強すぎるからだろう。『もっともっと』は1972年3月30日郵便貯金ホールの録音。本盤はその5か月後の演奏で、レパートリーは『もっともっと』収録曲マイナス2の8曲。林立夫さんの自伝『東京バックビート族』も最近読み、2018年のフォージョーハーフ再結成の映像も観たところだったので、重ねてじっくり味わえた。

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阿佐ヶ谷ネオ書房・読書会の夜

*[コラム] 阿佐ヶ谷ネオ書房・読書会の夜

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先週の日曜日、阿佐ヶ谷ネオ書房でのライブ読書会。10月に2冊同時刊行した『哲学するタネ-高校倫理が教える70章【西洋思想編】』明月堂書店)の出版イベントのような部分もあったのですが、お店とのご縁を繋いでくれた編集者の杉本健太郎さんが司会を務めてくれ、20代から80代まで幅広い方にお越しいただき、質疑も含めて盛会に終わりました。私としても読書会は初の試みだったのですが、本を手に取ってお越し頂いた方もいらっしゃましたし、かつての教え子とのサプライズな再会(嬉しかった!)もあり、哲学芸人マザーテラサワさんや哲学Youtuberのスケザネさんとも初めてお会いしたり…いつもご支援いただいている皆様にも助けられたと感じた次第です。

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そして何より店主の映画監督・評論家の切通理作さん、思っていた通りの穏やかなお人柄でありながら、50年以上の歴史を誇るという阿佐ヶ谷の元貸本屋ネオ書房の経営を引き継がれたように、サブカル色充満するリアルな「場」を作り上げていく矜持と言いますか、その力強い信念が何とも印象に残りました。私がちょうど20代半ばで文化研究をかじっていた頃に、切通さんの山田洋次の<世界>-幻風景を追って』ちくま新書)と出会いまして、こんな風に文化を深読みできるんだという衝撃を受けたことが昨日のように思い出されます。昨年出版した古井戸・加奈崎芳太郎さんの本の話をしていたら、切通さんは泉谷(しげる)さんが大好きとのこと、加奈崎さんの本の帯は泉谷さんに書いてもらいましたし、不肖私も中学生の時に初めて観に行ったライブが泉谷さんだったということで、ご縁を感じました。いつか日本のフォークを語るイベントなどもできたら…なんていうお話も頂きました。加奈崎さんのキャリアを辿る…とか、エレックの歴史とか…実現できたら良いのですが!

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ネオ書房での読書会、本日となりました!

*[コラム] ネオ書房での読書会、本日となりました!


評論家・映画監督の切通理作さんが店主を務める阿佐ヶ谷・ネオ書房((https://suginamigaku.org/2019/11/neo-syobou.html?fbclid=IwAR3Jz74PXv9DAzynGK-VvaeGvefG9nCysb74FUC6CkEOyQH1lRFJQQIjQ3k))の読書会を開催します。

哲学を学び直したい人のために
ネオ書房【倫理教師・石浦昌之ライブ読書会】
12月20日(日) 18時半開場 19時開演
高校倫理1年間の授業をまとめた新刊『哲学するタネ 西洋思想編①』(明月堂書店)から、西洋哲学の祖、ソクラテスを取り上げます。

内容
◆ フィロソフィア(愛知)とは?
◆「無知の知―汝自身を知れ」
◆問答法はディアロゴス(対話)の実践
◆「徳」とは何か?
◆プシュケー(魂)への配慮
◆善く生きることとは?

入場料1200円 予約1000円  予約kirira@nifty.com

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