いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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Rolf Cahn & Eric Von Schmidt

 *[フォーク] Rolf Cahn & Eric Von Schmidt(Folkways / 1961)

 

天気がいいとなかなかゴキゲン。唐突ながら、今年で40歳になってしまう。ジョンが亡くなった歳ですよ。色々と思うところはある。しかし我々の世代(という言い方も我々くらいまでしか通用しない?)の未来を思えば、余り明るい未来はない。そもそも未来が明るいという近代的発想が通用しない時代を生きているというのもそうだし、年齢別人口の不均衡ですよね。旧い価値観に囚われている限り、一番人口の多い世代の人たちの現状維持のために使い捨てられてしまうんじゃないかな。あらゆる組織は半分は信用しても、もう半分は信用しないほうがいいと思っている。国も含めて、ね。

 

 

てなことで、自分や家族が気持ちよく生活できる環境をつくることに興味が移っている。ベランダに風を感じてくつろげる空間を作る、とか、要らないものは思い切って捨てる(あるいは売る)とかですね。10数本あったギターも弾きたいギターに絞って売ったり、オーディオも最低限のもの以外を売ったり(思いのほか中古市場に活力があって、オークションで飛ぶように売れた)。そして今後音楽は基本レコードで聴きたいな、というのがあるので、CDでも持っているものはブックレットをスキャンして、データ化して売ったり。ちなみに保存はHDDよりSSDの方が強固かな。とはいえ余程大事なものやCDしか出ていないものは決して売りませんが。

 

 

そんなこんなというのも、増え続けるレコードが結構生活を圧迫していまして(笑)。コレクターの人ならわかると思いますが、月に100枚くらいずつ増えていくという状況が何年も続けばどうなるか、という話。定期的に処分してはいるけれど、限界はあるわけで。

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しかしレコードはやっぱり最高。今日みたいな晴れた日に窓を開け放して大音量で聴く、というのが至福。これはロルフ・カーンとエリック・フォン・シュミットのフォークウェイズからリリースされた1961年の米オリジナル盤。ジャケに分類番号が無造作に貼り付けられている。どこかのアーカイブにあったものだろう。エリックはフォーク・シンガー、イラストレイターとして知られている人。ボブ・ディランのアイドルでもあり、ディランが自身のジャケの構図の参考にしたり、ジャケ中にエリックのジャケを忍ばせたのは有名な話。

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エリックにとってのファースト・アルバムだが、ディランがデビューする1年前のリリースだ。ギタリストのロルフ・カーンはフォーク・シンガーのバックをやっていたようだけれど、ミッチ・グリーンヒルのような卓越した技量はない。結構ミストーンがあったりするけれど、アコギでリードを弾ける人はさほどいなかった時代だから致し方ない。米インディー・ロックバンドの名前と同じタイトルの”Grizzly Bear”に始まり、”Nobody Knows You When You’re Down & Out”やデイヴ・ヴァン・ロンクで有名な”He Was A Friend Of Mine”、そしてディランが90年代にカバーしていた”Frankie & Albert”も収録されている。58年前の盤だがオーセンティックなアクースティック・サウンドは古びない。

miya takehiro 2019ワンマン & BIRTHDAY LIVE (渋谷 JZ Brat / 2019.5.12)

www.youtube.com

*[ライブ] miya takehiro 2019ワンマン & BIRTHDAY LIVE(渋谷 JZ Brat / 2019.5.12)

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昨日は、ウクレレ片手に全国のフェスやライブハウスを盛り上げているmiya takehiro 2019ワンマン & BIRTHDAY LIVEを観に渋谷 JZ Bratに。もしかしてライブに行くのはかなり久しぶり?!と会場に着くなり改めて感じたのは、何だかお客さんのハッピーな雰囲気も含めて「何か」が変わっていたから。その真髄は……まるで室内『アウトドア日和』(アルバム・タイトルにちなんだカクテルも!)ってなステージを丸ごと楽しんでみてわかりました。今週末5/18(土)19(日)に恒例の「よなよなエールの超宴 in 新緑の北軽井沢 2019」(コレ、親戚が毎年行きたいと言っている)に出演することが決まっている彼、もはやコンビニでも買えるようになった人気クラフトビールよなよなエール」の歌(「ヤッホー!ビール」)を歌ってるんですよね、何しろ(楽しく飲んでいるか確認する)「アルコールチェック」までありましたから! これこそが「ビールのおかげ」ということなのかな(笑)。それにしても以前観たときの2.5倍くらいパワーアップしている印象!!これは凄いことだと思う。全国津々浦々で日々演っているからこその研ぎ澄まされたパフォーマンスだと感動してしまった。お客さんとの和やかな掛け合いも含めて。


今回のプレイヤーはmiya takehiro(vo,ukule,pf)、齋藤純一(gt)、森田晃平(b)、中丸達也(per)、やまはき玲(cho)、倉井夏樹(harmonica)という布陣。miya takehiroのみならず畠山美由紀はじめ、数多のシンガー・ソングライターのレコーディングでお馴染みの齋藤純一は優秀なジャズ・プレイヤーでありながらも所々に飛び出すブルージーなフレーズが堪らなかったし、ウッド&エレキベース、時に弓を持ち替える森田晃平(b)、そして中丸達也(per)のリズム隊も器用かつ堅実なもの。そしてシンガーソングライターとして新譜をリリースしたばかりだというコーラスの やまはき玲も、ステージに独特で華やかな存在感をもたらしていた。さらに圧巻だったのはハープの倉井夏樹。サックスやストリングスのフレーズからカントリー・タッチの超絶ソロまで吹きまくり!半端ない、ってのはこういうことを言うんでしょうね。


人が音楽を生み出さずにいられない理由は色々ある。個人的な印象だけれど、miya takehiroの作り出す音楽の核には悲しみの成分が多くあったような気がしてならない。それが個人的なものだったのか、はたまた2000年前後の混沌とした時代のムードもそこに含まれていたのか……今となってはよくわからない。何かが始まる一方で何かが終わっていくような……一瞬で消えていきそうな言葉にできない想いを、うたやメロディに乗せること……Natural Records時代から歌っている(ソロでは『COMMUNICATE by the Music』で再演している)「しゅわしゅわ」を聴いたとき、なぜか昔のステージが蘇ったような空気になって、ハッと我に返った。


そう思うと、最後はオールスタンディングで、みんなで乾杯し合えた今回のハッピーなステージ。「昭和生まれ平成育ち」の彼やぼくたちが乗り越えて辿り着いたナチュラルなライフスタイルそのものだったのかもしれない。アウトドア・ブランドとコラボしてきた彼ならではの新曲「森と歌う」も印象的だった(新譜が楽しみ!)。「令和になっても、自分が変わらなきゃ何も変わらない」……思わず、「だよね~ by EAST END×YURI」って思っちゃいました(笑)。

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(写真・https://www.facebook.com/miya.takehiroより転載)

 

アウトドア、サッカー、クラフトビールを愛するウクレレシンガー。miya takehiro official web site

http://miyatakehiro.com/

miya takehiro official blog

http://miya-takehiro.blog.jp/

 

 

 

Daniel Kwon / Little Koalas

*[SSW] Daniel Kwon / Little Koalas (Bela Slovik r-02 xox / 2019)

 

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個性派SSWのダニエル・クオン(Daniel Kwon)待望の新作『Little Koalas』はナントまさかの45回転7インチシングル!アナログに並々ならぬ思い入れを持つ彼ならではのセレクトとも思える。昨年10月18日の鈴木慶一さんのイベント「Aerial Garden Session vol.2」のゲストに出演していたのが記憶に新しいけれど(https://merurido.jp/magazine.php?magid=00023&msgid=00023-1540036478)、今回のリリースに際して慶一さんがコメントを寄せている。今回の7インチは、そのライブで売られていた新作CD-R『Lites Out』から”Little Koalas”と”Lites Out”の2曲を選んだもの。京都が本舗のjetset records(https://www.jetsetrecords.net/i/816005586309/)のディストリビューションと聞いていたけれど、芽瑠璃堂やディスクユニオンHMVはじめ様々な店舗で取り扱いがあるみたい。5月29日発売予定だけれど、予約絶賛受付中の模様。

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裏ジャケの「for uchida yuya」クレジットにまず驚いたけれど、彼の訃報と制作時期が重なっていたからみたい。そういえば『Rくん』に”A Ginger Ale, Please”ってトラックがあったけれど、ダニエルが愛してやまない若松孝二監督の内田裕也主演映画『水のないプール』での名セリフ「ジンジャーエールはジュースじゃねぇ!」を想起したことを思い出した。

 

肝心の7インチの音の印象、ハッキリ言ってCD-Rの音より当然ながら低音がボタッとアナログ的に響く。カッティングから来るものだろうけれど、この辺りが堪らない。ドラムスは元・森は生きている のお馴染み増村和彦と、マイク真木などのバックを務めている牛山健(“Lites Out”)、甘美なペダルスティールはyumboの芦田勇人、ベースは元・森は生きているのサポートメンバーgonokami kinya、それ以外の楽器・ボーカル・レコーディング・ミックス・アートワーク・デザインをダニエル本人が担当する。ジャケットは見ての通りダニエルのひねくれたユーモアそのもの。「人としては最低だが、ミュージシャンとしては凄いと思っています」という褒めているのか、けなしているのかよくわからない(笑)Lamp染谷大陽の賛辞にもあるように、ダニエル・クオンの内面を知り尽くしたメンバーで奏でられリラックスした音に仕上がっている。

 

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 彼の音楽は多様なイメージの引用・集積で作られているように思える。それがジョン・フェイヒィを思わせる2010年のシンガー・ソングライター的作品『Daniel Kwon』からリュック・フェラーリよろしく日常音のコラージュで綴られるエクスペリメンタルな2013年の問題作『Rくん』まで!極端な触れ幅で表現されてきたわけだけれど、今回はたった2曲を選んだだけに、中庸なポップに着地させたように一瞬思えた。とはいえ、Aサイド”Little Koalas”とBサイド”Lites Out”が「陽」と「陰」=「朝の光(daylight sunshine)」と「夜の闇(dark of the night)」――あたかも西洋的な「ダニエル」と東洋的な「クオン」――のごとく配置されていたのが見逃せない。ちなみに「Little Koalas」のタイトルは80年代に輸出もされた日本のTVアニメーション「コアラボーイ コッキィ」の英題「Adventures of the Little Koala」から採られたもの。ずっこける位に邪気が無いアニメ。ちなみにこのアニメの主題歌を歌っている5人組アイドル赤坂小町はご存知プリンセス・プリンセスの前身。しばし続く後奏からB面にいざなわれる。

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B面の「Lites Out」は3部作のようなつくりになっており、シングル盤ながらアルバムを聴いた後のような感覚に陥る。タイトル「消灯(Lites Out)」が示すようにベッドの上で色々な思いやイメージが交錯するような。メロディはいずれもとりわけ美しい。「for curt boetcher」とクレジットがあるけれど、A面同様ドラムスのパターンにはカート・ベッチャー風のサウンドメイクが。コーラスにはビーチ・ボーイズ風味も。最後は「カラオケで(あなたの手に触れた)」なんていう最後の照れくさいフレーズで「おしまい(Lites Out)」……再びA面で朝を迎えるという。歌詞にある「oops, I did it again」に思わずブリトニー・スピアーズを思い出しました。最高!

 

レコ発↓

5月27日(月) 20:00start

渋谷disques dessinee(http://www.disquesdessinee.com/

1,500円

 

5月28日(火)20:00start

三鷹scool(http://scool.jp/event/20190528/

予約1,800円 当日2,000円(+1ドリンクオーダー

出演

ダニエル・クオン ソロ&バンドセット

w/ 増村和彦(Drums)、芦田勇人(Pedal Steel)、PADOK(Bass)

シアトルの中古レコード屋

*[コラム] シアトルの中古レコード屋

 

1か月ぶりの更新。気付けば新年度、慌しくも街中はフレッシュな活気に満ちておりますが。年度を跨いで10日間、仕事でアメリカ・シアトルへ。アメリカには大昔住んでいたことがあったけれど、今回行ったのは20年近くぶり。トランプのアメリカはもちろん初だったので浦島状態でもあった。スターバックスやアマゾン、ボーイングマリナーズの本拠地シアトルは人種的多様性をもち、地元TVも明らかな反トランプ色を出すリベラルな街。音楽的にはジミ・ヘンドリクスニルヴァーナを生み、グランジ震源Sub Popや近年リイシューで名を上げたLight in the atticなど有名レーベルもある(細野晴臣横尾忠則『Cochin Moon』の再発LPはどこの店にもディスプレイされていた)。そんなわけで、完全オフの土日にお仕事で出会った方のナビゲーションを頼りつつ、幾つかの中古レコ屋に足を運んでみた。f:id:markrock:20190330152646j:plain

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ちなみにアメリカでビニール盤が増産傾向、という話は知っていたけれど、これは本当だったと知る。レコード・ストア・デイで昨日は盛り上がっていた日本以上かも。広大な土地もあり、大きいことはいいことだ感もあるからか。ウォルマートみたいな大型スーパーにCDと共に新譜LPが売られていたし、Barnes&Nobleみたいな大型書店にもLPコーナーが復活していた。中古レコ屋にもお客さんが常時いて、日本に比べて客層が若かったのも驚きだった。カントリー・ミュージックの一角は流石におじいちゃんが漁っていたけれど(笑)。f:id:markrock:20190330143943j:plain

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まずはシアトルのダウンタウンから坂を上ったキャピトル・ヒルにあるEveryday Music。一番行きたかった店。レコ量が半端ない!!正直全部見るのは不可能だと瞬時に悟ったので、LPとカセット限定で掘る。それにしても安いなと思った。アメリカ・オリジナル盤は昨今日本で値段が高騰し、クラシック・ロックの類で盤質がいいと3000円くらいでしょうか。これが現地では高くて10~15ドル、盤質が悪いと3~4ドル、バーゲン特価だと50セント…まじか、と思いました。f:id:markrock:20190414103942j:plain

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持ってなかったジノ・クニコのアリスタ盤やクリーンネス・アンド・ゴッドリネス・スキッフル・バンド、デズモンド・チャイルドのLPも50セント。あとはバターフィールド・ブルース・バンド、PP&M、ブリューワー&シップリーのA&M盤、ダスティ・スプリングフィールドのアトランティック盤、CD時代のジェイムス・テイラー『Never Die Young』LP、ボズやポール・ウィリアムス、ジェリー・リオペルのオリジを1~4ドルで入手。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのジョニー・コーラのソロLPも新品で4ドルくらいだったので買ってみる。あとはマライア・キャリーの想い出の『MUSIC BOX』のカセット(笑)。これも3ドルくらいだったかな。

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お次はダウンタウンからバスで北上して、フリーモントというアーティストが移り住んでいるらしいアートな街。パブリック・アートがそこかしこにある。有名なサンデー・マーケットはそっちのけで中古レコ店に向かう。f:id:markrock:20190331125809j:plain

 

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Jive Time Recordsという店はこぎれいでスタイリッシュな感じ。店オリジナルのトート・バッグなんかも置いていた。店外99セントのバーゲン箱にエルヴィスの『Golden Records Volume3』のオリジを発見。コレ、ムチャクチャ音が良かった。あとはビーチ・ボーイズ『Little Deuce Coupe』のキャピトル・レインボー・レーベルのオリジ5ドル、The Who『Live At Leeds』の米デッカのオリジ7ドル(これも音が良かった)、ここからはちょっと高い気もしたけど、バーズの『Fifth Dimension』オリジ17ドルくらい、旅の記念に、と持っているのとマトリクス違いのエミット・ローズのファースト13ドル、ティム・バックリー『Look At The Fool』10ドル。ちょっとこの店では散財してしまった。そう、ビートルズの米キャピトルのオリジはアメリカでも高い、という事実に気がついた。平均15ドル以上するイメージ。これはむしろ日本で探した方がいいのかもしれない。f:id:markrock:20190414101821j:plain

 

最後は同じフリーモントにある、Daybreak Records。ここは安くて名店だった。f:id:markrock:20190331135345j:plain

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店外には激安カセットが陳列。店内に入るとボブ・ディラン『Another Side Of Bob Dylanの360soundのボロい米オリジが2ドルとか。バーズ『Younger Than Yesterday』のオリジは7ドル、ディラン『Bring It All Back Home』はオリジ持ってはいるけど一応10ドルで入手。ウェスト・コースト・ポップ・エクスペリメンタル・バンドのサード『VOL.III A Child’s Guide To Good & Evil』は初めて見たけどこれは10ドルくらい。フリート・フォクシーズっぽい音だと思った。

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あとはレス・ポール&メリー・フォードの『The Hit Makers』やBobby Gentlyの『Ode To Billy Joe』のオリジが99セント。1976年に”Happy Days”をヒットさせたプラット&マクレインのファースト『PRATT/McCLAIN』はマイケル・オマーティアン、スティーヴ・バリが手がけたダンヒル系列作で2ドル。あとはボニー・レイットの1989年の名盤『Nick Of Time』、フリーのA&Mオリジ『Fire and Water』ブラインド・フェイスのアトコ・オリジナルがそれぞれ3ドル。まあ他にも日本で大枚出したやつが激安で売られていましたが、そこはスルーで(泣)。

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30代くらいの店主の方に「東京から来たよ」なんて話していたら、何でもその方は明日東京に買い付けに行くんだと。どこに行くのかと聞くと、下北フラッシュ・ディスク・ランチ、渋谷・新宿のディスクユニオン…って私が普段行ってるとこじゃん!っていう。日本とアメリカでお互い逆のことをしてるのが、何だか、ね。「店のオーナーなのか」って聞かれたので「いやいやただのレコード好きの音楽ファンだよ」と答える。「お互いヴァイナル・ジャンキーだな」と苦笑した…というお話。レコードは当分の間なくなりそうもないと思った。

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細野晴臣 / HOCHONO HOUSE

*[日本のフォーク・ロック] 細野晴臣 / HOCHONO HOUSE(Victor / 2019)

 

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 ホソノさんの新譜。しかもソロ1作目HOSONO HOUSEの完全セルフ・リメイク(プロデュース、ミックス、ボーカル、楽器)という趣向。でもこの辺の感じが「いま」が時代の転換点であることを伺わせる。アベノミクスとかいう偽りの捏造高度成長もそろそろ終わる(終わっている?!)現代。そもそもオリジナルがリリースされた1973年は高度成長の「終りの季節」だったわけでしょう。本盤にはその70年代のリヴァイヴァルがあった90年代的感覚も。この時代のホソノさんはテクノ~アンビエント指向だったわけだけど、またそれが戻ってきているという。ジャケはHOSONO HOUSE『S・F・X』をミックスしたような感じ。

 

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「HOCHONO(ホチョノ)」というタイトルには照れとユーモアも。確かに伊賀航、伊藤大地高田漣といったライブでお馴染みの面子でHOSONO HOUSEをリメイクしたら、近年のライブのようなオールドタイミーかつブギウギな感じになることは想像がつくし、新鮮味には欠ける。しかも71歳の彼が一人でリメイクするのに、全編シンガー・ソングライター的に仕上げればどうしても老いを感じさせてしまうわけで(とはいえ弾き語りテイストを残した「冬越え」に一番心を揺さぶられたが)。いずれにしても、適度に温かくヒューマンな打ち込みを入れたのは大正解だと思った。曲順を逆にしてるのも、過去に遡るようで、アルバムを聴く時間は進んでいくという二重構造で。1975年のライブ音源から収録された「パーティー」は時代の奥行きやタイムトラベル風味をもたらしていて。ヴァン・ダイク・パークス的バーバンク感もある。自身のセルフ・ライナーもあるので、想像力を働かせて聴いてみたい。ちなみにあえてLPで買ってみたけど、マスタリングの音が凄く良かったので一安心。

 

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 シアトルのレーベルLight in the Atticが出したコンピレーション『Even A Tree Can Shed Tears: Japanese Folk & Rock 1969-1973』には「僕は一寸」が収録されていたけれど、近年の細野晴臣の海外での再評価はご本人にとっても嬉しいことだったのだと思う。YMOのコンセプト・メイカーでありながら坂本龍一の影に隠れてしまった当時を思うと、その評価が逆転した印象。海外の音楽ファンで日本のポピュラー・ミュージックに興味を持った人達が、突出した作品の全てに細野さんが関わっているという法則性に気が付いたのだった。ちなみにそのコンピ、2017年のムック本『Folk Roots, New Routes フォークのルーツへ、新しいルートで』にもフィーチャーされており、私も本にちょっと関わらせてもらったのだけれど、その中に細野さんとデヴェンドラ・バンハートの対談も収録されていた。編著者のモンチコン清水君が言っていたけれど、その辺りで細野さんは海外での自身の音楽の再評価の手応えを得たんじゃないか、と。

 

 

ちなみにそのLight in the Atticから昨年、HOSONO HOUSE海外初リリースCD&LPが出ている。日本のレコ屋に海外から買い付けに来ている人を多く見かける昨今だから、需要もあるのだろう。ベルウッドのオリジナル・ファーストは流石に入手困難で、1979年の1500円再発LPを持っているけれど、音がこもっているのが不満だった(90年代に再発されたCDの方が音は良かった)。で今回、Light in the Attic盤LPも入手してみた。

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ジャケはゲイトフォールドで抜群によい。ベルウッドのアメリカンなレーベル・デザインも◎。ただ、音の方は良し悪しな感じも。「ろっかばいまいべいびい」のボーカルが消え入る部分は持ち上げられて、レベルが揃っている。でも、ボーカルの粒だちの新鮮さはベルウッド盤の方が良かった。まあ、マスターの状態とかもあるんでしょうけれど。てか元々狭山のホソノ・ハウス録音でありまして、曲によってはマスター自体がそこまでクリアな音像じゃないのかも。まぁ何を言おうとも、全部好きなんですけどね(笑)。不思議なんだけれど、アタマの中にはいつも完璧な音像でHOSONO HOUSEが鳴っている。その理想=イデアそのもの、を追い求めるためにホソノさんを聴き続けているのかもしれない。

Lindy Stevens / Pure Devotion

*[SSW] Lindy Stevens / Pure Devotion (Decca / 1972)

 

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 最近何気なく買ってみて感動した盤。リンディ・スティーヴンスというミルウォーキー出身の女性ジーザス系シンガーソングライターの唯一作。ダニエル&マシュー・ムーア兄弟の参加も目を引く(プロデュースはマシュー・ムーア)。フリー・ソウルな冒頭の”Ask The Lord”で掴みはOK。タイトル曲の”Devotion”が完全にローラ・ニーロ風なピアノ弾き語りの大名曲。崇高なハイトーンのこの1曲だけで本当に素晴らしいと思ってしまった。名匠ロバート・アペルがエンジニアリングを手がけた初期作品ではなかろうか。セクション、ダニー・クーチのソロ、ニール・セダカなどで一世を風靡する人。だから、そっちの音が好きな人にも堪らないはず。しかしここでギターを弾くのはクーチではなく、後の名セッション・ギタリスト、ディーン・パークスなのでありまして。彼にとって、1971年のヘレン・レディのファーストに次ぐ、ポップ・フィールドでのセッション初期作だと思われる。ディーンはストリングスと木管のアレンジも手がけている。中にはキャロル・キング風の楽曲もあるが、質は高い。珠玉の1曲はシングル・カットされた”Pennygold”。ローラ・ニーロの”Stoned Soul Picnic”をもっとアップなノーザン・シャッフルにしたような甘酸っぱい感触で!f:id:markrock:20190305233645j:plain

 

Guy Carawan / The Best Of Guy Carawan

*[フォーク] Guy Carawan / The Best Of Guy Carawan(Prestige / 1961)

 

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2015年に87歳で亡くなったガイ・キャラワン(1927年LA生まれ)。この人が公民権運動のアンセムとしてジョーン・バエズ他が歌った”We Shall Overcome(勝利を我等に)”を歌い始めた人のひとりだということは余り知られていない。この”We Shall Overcome”、元々はC.アルバート・タインドリーによって作曲され1900年に楽譜出版されたゴスペル”I’ll Overcome Someday”。これが1940年代のタバコ労働者のストライキに使われ、ルシール・シモンズという女性活動家のヴァージョンを組合のオーガナイザーだったジルフィア・ホートンが気に入り楽譜出版される。それを見たピート・シーガーが歌詞を一部変えて歌い、後にピートのウィーバーズのメンバーとなるフランク・ハミルトンがガイ・キャラワンに教え、彼が学生運動で世に広めた…そんな話になる。ちなみにジルフィア・ホートンはテネシーにあったハイランダー・フォーク・スクールの設立者、マイルス・ホートンの妻。ハイランダー・フォーク・スクールで労働者の行動や人種平等を学んでいたローザ・パークスアラバマ州モンゴメリーでバス・ボイコット事件の発端を作り、モンゴメリープロテスタント教会の牧師だったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが黒人差別撤廃を非暴力で実現する公民権運動のリーダーとなったことはよく知られている。

 

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 ガイ・キャラワンの演奏を聴くと、大衆化される前のフォークのかたちを捉えることができる。ギターやバンジョーを片手に歌われるオーセンティックなフォーク・ソングにはニグロ・スピリチュアル(ゴスペル)やアパラチアン・フォークの色も濃く残っている。ちなみに”We Shall Overcome”と同じメロディを持つ”No More Auction Block”(黒人奴隷が「もうオークションにかけないで」と懇願する)はボブ・ディランが”Blowin’ In The Wind(風に吹かれて)”のメロディに転用した。つまり”We Shall Overcome” も”Blowin’ In The Wind(風に吹かれて)”も、元の素材は一緒ということになる。これもフォークの伝統の一種だろう。ガイ・キャラワンが歌う”Shule Aroon”は「シュー・シュー・シューラールー」で知られるP.P&M(ピーター、ポール&メアリー)の”Gone The Rainbow(虹と共に消えた恋)”になり、これまたキャラワンが歌う古いバラッド”Nine Hundred Miles(900 Miles)”は、後に女性バンジョー弾きのヘディ・ウェストによって”Five Hundred Miles(500マイル)”として改作されることになる。他にも”We Are Soldiers”はレッドベリーの” Goodnight, Irene”と同じメロディだったり、定番”Midnight Special”があったりと、聴いていて楽しい気分にもなる。それと同時に、P.P&Mを手がけた敏腕(悪辣?)プロデューサーだったアルバートグロスマンという男は改めて相当商才に長けていたのだと思う。フォークの精神性を残しつつも、キレイでメロディアスな商品に仕上げてしまったという(一方、深層心理的ユダヤ系としての屈折はフォークやブルーズ、ロックにおけるアパラチア系白人や黒人の心情とシンクロしていたのだろう)。同じくアルバートが手がけたボブ・ディランの1962年のファーストに収録されていた”The House of the Rising Sun(朝日のあたる家)”はディランより6歳年上だった1936年生まれのデイヴ・ヴァン・ロンクのヴァージョンを拝借したものだった。それが英国アニマルズによってエレクトリック化され、大ヒットされたわけだけれども、その時ヴァン・ロンクは何を思ったか。60年代フォーク・リヴァイヴァル期に先行する一、二世代前の彼らには、商業化するフォークに複雑な思いがあったのではなかろうか。

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