いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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Jimmy Webb / Slipcover

*[SSW] Jimmy Webb / Slipcover (BMG / 2019)

 

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全く話題になる気配がないけれど(笑)、ジミー・ウェッブの新作。20年前、あの日のジミー・ウェッブ・ファンは今どこで、何をしているのだろう? 2000年代に入って再びシンガー・ソングライター・モードに入っていたから、完全な自作による新作歌モノを期待していたけれど、1曲を除き自作ではない70年代SSW/ロックをピアノ・インストで聴かせると知って当初面食らった。それでも、ジミーのソロ・アルバムで聴ける、まるで歌っているかのような味わいのあるピアノを思い浮かべつつ、ちょっと期待もしていたのだけれど…これがマコトに素晴らしかった! 冒頭ストーンズ『Sticky Fingers』の”Moonlight Miles”からして、どこを切り取ってもジミー節としか言いようが無い、エモーショナルかつヒューマン・ビートで綴られた繊細なピアノ・サウンド。不覚にも心を揺さぶられてしまった。2曲目は”God Only Knows”でしょう…ジミーがデビューしたプロジェクト、ストロベリー・チルドレンのシングル”Love Years Coming”にも多大な影響を与えている曲。ここまで来ると、歌など必要ないと思えてくる。f:id:markrock:20190726010807j:plain

そもそもジミーがランディ・ニューマン邸でピアノを披露したところ、ピアノ・ソロでアルバムを作ることをランディに勧められたのだという。彼の見立ては正しかった。そのランディ・ニューマンの”Marie”、ウォーレン・ジヴォン”Accidentally Like A Martyr”、ジョニ・ミッチェル”A Case Of You”、ビリー・ジョエル”Lullabye(Goodnight, My Angel)”、レフト・バンク(マイケル・ブラウン)”Pretty Ballerina”、スティーヴィー・ワンダー”All In Love Is Fair”、ビートルズポール・マッカートニー)”The Long And Winding Road”、サイモン&ガーファンクルポール・サイモン)”Old Friends”…ジミーが60~70年代にしのぎを削ってきた戦友のようなミュージシャンたちの楽曲を心をこめて演奏する。ジミー自身の名曲”The Moon Is A Harsh Mistress”もとりわけ素晴らしかった。

 

自身によるライナーではレッキング・クルーのラリー・ネクテル(ジミーが手がけたフィフス・ディメンションのレコーディングに参加している)やフロイド・クレイマーのピアノ・プレイへの賛辞を惜しまない。「音楽のロマンスは60年代には生きていた」…という指摘は、現代のポピュラー音楽への批評とあきらめを含んでいるけれど、それには同意するほか無い。初のピアノ・ソロ・アルバムは本当の自分だ、と言わんばかりに、ジャケットはジミー自身によるイラストだった。

Doris Day / Doris Day’s Greatest Hits

*[ボーカル] Doris Day / Doris Day’s Greatest Hits (Columbia / 1962)

 

ドリス・デイ、そういえば今年5月に97歳(!)で天に召されましたが。米コロムビアからリリースされたDoris Day’s Greatest Hits三鷹パレードさんで見つけたので買ってみた。1958年にモノでリリースされたものを1962年に擬似ステレオにしたもの。2eyesの米オリジナル。ステレオのボリュームを上げると、音は素晴らしかった。どこか別世界に連れて行かれるような感じ。弦の響きとか、もう至福。裏ジャケはボーカル・ブースに入るドリス。それにしても初っ端の一声でピッチを外さない。日本のテレビの音楽番組なんかを見るとピッチが悪すぎて3秒で消したくなってしまうのと…比べてはいけないか。歌手なら当たり前、と思われるかもしれないけれど…。曲によってはガール・ポップとして聴けなくもない。ところで彼女の一番の代表曲「ケ・セラ・セラ」は”Whatever Will Be, Will Be”の題でクレジットされている。「なるようになる」とうそぶくほかない、狂ったご時勢だけれど、音楽だけが傍にいてくれる。

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Blue Rose / Same

*['60-'70 ロック]  Blue Rose / Same (Epic / 1972)

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60年代や70年代のレコードを中心に聴き続けているけれど、まだまだ知らない盤がある。70年代初頭のエピックは1枚きりの無名バンドのレコードを沢山出していて、その殆どが当たり、ということに最近気がついた。これもそんな一枚で、ブルー・ローズというバンドのレコード。「青いバラ」ですから「存在し得ないもの」の喩え。このバンドの実態は、ソングライターのテリー・ファーロングがLAのセッションメン、レッキングクルーの流れを汲むマイケル・オマーティアン(本盤ではマイク・オマーティアン名義)と共に作り上げたソングライター・デモのようなものにも思える。A面1曲目の”My Impersonal Life”というのが本当に素晴らしい楽曲で、スリー・ドッグ・ナイトが1971年のアルバム『Harmony』の2曲目、”Never Been To Spain”と”An Old Fashioned Love Song”の間に挟まれて収録されていた。テリー・ファーロングの楽曲はブルージーでソウルフルでありながら、メロウなLAポップスの伝統に加えたもので、70年代初頭のスワンピー・ポップの王道をいくもの。スリー・ドッグ・ナイトに採り上げられたのも頷ける。演奏にはハーヴィー・マンデルが熱いソロを弾いている曲もあり、ジム・プライスのレコードで演奏していたベースのジョン・ユーライブのクレジットも。その他のバンドメンバーにはゲイリー・ニコルソンやジム・エド・ノーマンとアンクル・ジムズ・ミュージックを組んでいたドラマーのゲイリー・ステュ(ロジャー・トロイのジェリーロールのメンバーでもあった)もいる。アコギと分厚い弦とコーラスで綴られる”Chasin’ The Glow Of A Candle”はスプリングスティーンが新作でやろうとしたような、ある種エキセントリックなLAカルト・ポップスだと思う。f:id:markrock:20190720141102j:plain

Buzz Rabin / Cross Country Cowboy

*[SSW] Buzz Rabin / Cross Country Cowboy (Elektra / 1974)

 f:id:markrock:20190707172300j:plainリンゴ・スターのカントリー好きは有名だけれど、それというのも、ロカビリーの中にふんだんに含まれているカントリー/ヒルビリー成分に感化されていたということだろう。リンゴ同様、カール・パーキンスをレスペクトしていたジョージ・ハリスンだって同じだった。とはいえ、ビートルズ解散後のある種の全盛期(1970年)にナッシュビル録音のカントリー・アルバムをリリースしたというのは結構挑戦だと思うし、道楽性があったのかもしれない。そのアルバム『Beaucoups of Blues』のタイトル曲を作ったのがこのバズ・レビンという人。ルイジアナ生まれのロデオ・ライダーでDJ、そしてヒット・ソングライターだと紹介されている。その”Beaucoups of Blues”のセルフカバーを含む本作はエレクトラからリリースされた彼の唯一作。リンゴのアルバム・タイトル曲を提供したことは彼にとって嬉しいことだったはず。プロデュースはリンゴ同様、ピート・ドレイク。クレジットを眺めるとウォッシュ・ボード(スクラブ・ボード)にリンダ・ハーグローヴの名が見える。音はむちゃくちゃ鄙びている。ブルーグラスっぽいのもあったり。ジム・エド・ブラウンに提供した”Man And Wife Time”もある。タイトル曲の"Cross Country Cowboy "のイントロは"Mr.Bojangles"を髣髴とさせて。ウィスキーと葉巻を手に持つ酒場のバズはヒッピー世代のカントリー・ミュージシャンとしてかなりリアルな姿だったんじゃないだろうか。

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Willie Nelson / Willie Nelson’s Greatest Hits (& Some That Will Be)

*[カントリー] Willie Nelson / Willie Nelson’s Greatest Hits (& Some That Will Be) (Columbia / 1981)

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ウィリー・ネルソンですよ。現在御歳86歳ですか。この時からお爺ちゃんのような風貌だから、今もあまり見た目のイメージは変わっていない。カントリー・ミュージックには保守的なイメージがあるけれど、アメリカ人もジョニー・キャッシュやウィリー・ネルソンにはロックのそれと同じようなその範疇からはみ出るイメージがあるみたい。通称トリガーとして知られる穴の開いたガットギターを抱えて、リアルタイムで良いアルバムを出している。2000年代に入ってから毎回のように買っているけれど、2016年以降の近作4作(Willie Nelson Sings Gershwin』『God's Problem Child』『Last Man Standing、そして2018My Way)は特に恐ろしい完成度だと思う。もし明日あの世に行くなら、棺に入れますね(無理か)。

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普遍の伝統芸能の世界だが攻めている。カントリーだから変わらないと思いきや、その世界も結構流行り廃りがありまして。80年代に確立したウィリーの音作りの確かさなのだろう。ジャズとカントリーの折衷なんて、今思えば音楽的に何の不思議もないのだけれど、実はアメリカーナの先鞭だったわけですし。

 

 

で、これは1981年の2枚組のベスト盤。Stardustの大ヒットもあって、ひとつの地位を確立した頃。このレコードを買った理由はなんといってもジャケ(笑)。内容は非の付け所がないわけで。淡い油絵みたいなその雰囲気に80年代AOR的感性を見る。リアルでありながら、写真ではなくわざわざイラストにすることで、時を永遠に封じ込める。イラストは日系アメリカ人イラストレイター、グラフィック・デザイナーのブライアン・ハギワラ。ビリー・ジョエル『Streetlife Serenade』も彼の代表作のひとつだ。

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The New Colony Six / Revelations

*[ソフトロック] The New Colony Six / RevelationsMercury / 1968

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ニュー・コロニー・シックスといえば、60年代後半に活躍したシカゴ出身のソフト・ロック・バンド。ソフト・ロックといっても、60年代のマーキュリーのB級バンドのガレージ色も当然ある。Revelationsと題されたこのレコード、メンバーのロニー・ライスが書いた”I Will Always Think About You”ビルボード22位のヒットとなっている。彼らにとって3枚目のアルバムになる。改めて聴いてみると、当時飛ぶ鳥を落とす勢いのジミー・ウェッブの線を行ったことがよくわかる。ジョニー・リヴァースみたいな、ね。しかし名曲じゃないですか!タイトルのRevelationsでふと思ったけれど、Revelationというジミー・ウェッブの曲ばかりをカバーしたバンドが同じマーキュリーから1969年にアルバムを出していたことを思い出した。たぶん関係はないけれど、イメージが繋がるのが面白い。”Dandy Handy Man”なんて曲はサージェント・ペパーズ風のファンキー・ソフト・ロックだったり、それぞれのメンバーが書いてくる曲はソフトロックの王道からカントリー風味のものまで、バラエティに富んでいる。何曲か書いているパット・マクブライド、ライトハウスのメンバーでソロも出しているボブ・マクブライドと勘違いしていた。ボブ・マクブライドはエリック・カルメンラズベリーズ以前にメンバーだったサイラス・エリーでベースを弾いていた。

 

 

しかしこういう子供だましバンドのレコード、大抵擦り切れているのはなぜだろう。

 

Rolf Cahn & Eric Von Schmidt

 *[フォーク] Rolf Cahn & Eric Von Schmidt(Folkways / 1961)

 

天気がいいとなかなかゴキゲン。唐突ながら、今年で40歳になってしまう。ジョンが亡くなった歳ですよ。色々と思うところはある。しかし我々の世代(という言い方も我々くらいまでしか通用しない?)の未来を思えば、余り明るい未来はない。そもそも未来が明るいという近代的発想が通用しない時代を生きているというのもそうだし、年齢別人口の不均衡ですよね。旧い価値観に囚われている限り、一番人口の多い世代の人たちの現状維持のために使い捨てられてしまうんじゃないかな。あらゆる組織は半分は信用しても、もう半分は信用しないほうがいいと思っている。国も含めて、ね。

 

 

てなことで、自分や家族が気持ちよく生活できる環境をつくることに興味が移っている。ベランダに風を感じてくつろげる空間を作る、とか、要らないものは思い切って捨てる(あるいは売る)とかですね。10数本あったギターも弾きたいギターに絞って売ったり、オーディオも最低限のもの以外を売ったり(思いのほか中古市場に活力があって、オークションで飛ぶように売れた)。そして今後音楽は基本レコードで聴きたいな、というのがあるので、CDでも持っているものはブックレットをスキャンして、データ化して売ったり。ちなみに保存はHDDよりSSDの方が強固かな。とはいえ余程大事なものやCDしか出ていないものは決して売りませんが。

 

 

そんなこんなというのも、増え続けるレコードが結構生活を圧迫していまして(笑)。コレクターの人ならわかると思いますが、月に100枚くらいずつ増えていくという状況が何年も続けばどうなるか、という話。定期的に処分してはいるけれど、限界はあるわけで。

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しかしレコードはやっぱり最高。今日みたいな晴れた日に窓を開け放して大音量で聴く、というのが至福。これはロルフ・カーンとエリック・フォン・シュミットのフォークウェイズからリリースされた1961年の米オリジナル盤。ジャケに分類番号が無造作に貼り付けられている。どこかのアーカイブにあったものだろう。エリックはフォーク・シンガー、イラストレイターとして知られている人。ボブ・ディランのアイドルでもあり、ディランが自身のジャケの構図の参考にしたり、ジャケ中にエリックのジャケを忍ばせたのは有名な話。

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エリックにとってのファースト・アルバムだが、ディランがデビューする1年前のリリースだ。ギタリストのロルフ・カーンはフォーク・シンガーのバックをやっていたようだけれど、ミッチ・グリーンヒルのような卓越した技量はない。結構ミストーンがあったりするけれど、アコギでリードを弾ける人はさほどいなかった時代だから致し方ない。米インディー・ロックバンドの名前と同じタイトルの”Grizzly Bear”に始まり、”Nobody Knows You When You’re Down & Out”やデイヴ・ヴァン・ロンクで有名な”He Was A Friend Of Mine”、そしてディランが90年代にカバーしていた”Frankie & Albert”も収録されている。58年前の盤だがオーセンティックなアクースティック・サウンドは古びない。