いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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markfolky@yahoo.co.jp

[NEW!!]2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚のライナーノーツ寄稿しました。
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[NEW!!]2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚のライナーノーツ寄稿しました。
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[NEW!!]2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)のライナーノーツ寄稿しました。
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ジェフ・ベックのこと

*[コラム] ジェフ・ベックのこと

 

ジェフ・ベックが亡くなったとのこと…新年早々本当に動揺。そして幸宏さんのことはすぐには受け入れられそうもない。ジェフの追悼記事、いつものことながら昔話ばかりが多くて何とも言えなかったけれど、昨年リリースのジョニー・デップとの共演作『18』に至るまで近作も素晴らしい出来だった。

『LOUD HAILER』リリースに合わせた2017年の東京ライブも素晴らしく、あの指弾きを生で見られてよかったと今にして思う。ちなみに3曲目に演じられたのは世界で最も過小評価されているギタリスト、ロニー・マックのカバー"Lonnie on the move"(原曲はボビー・ブランドの"Turn on your love light")。ライブ前年の2016年にロニーが亡くなっていたので、特別な意味が感じられた(YouTubeにある"Lonnie on the move"の中には、ジェフによる同じくロニーのカバー"Wham"を載せているものもあるから要注意)。リンク・レイ、スコッティ・ムーア、ジミ・ヘンドリクス、ロニー・マック…産声を上げたばかりのロックン・ロールとその音楽的発展をふまえ、ルーツを大切に咀嚼しながらも唯一無二・孤高のギター・プレイを作りあげたジェフのことを想いながら。

 

「こんなロックは知らない 要らない 聴かない君が 上手に世間を渡っていくけど」(GLIM SPANKY ”大人になったら”)を安直にパクって「ロックなんか聴かない」とか歌ってヒットさせてる人もいましたけれども(ファンの方、ごめんなさい…)。真の音楽愛を持ってルーツを継承する若手ミュージシャンが大方この国では雲散霧消してしまったことにも、何とも言えない気持ちになってしまった。例えばアメリカやイギリスでそうした音楽が継承されているように今も思えるのは、それぞれの文化にしっかりとルーツが根付いているからだろう。そう考えると、日本におけるロックなるものは、ある種のアメリカニズムの一環として戦後日本の一時期に定着した流行にすぎなかったのかもしれない。とはいえ、世界平和の共通言語として、一つの反骨の思想として、ロックを聴き、伝えていく意味はあるのではないだろうか。改めてジェフの残した音楽を聴きながら。

R.I.P.


2017年の来日公演の際に書いたレビューを!
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00023&date=2017%2F02%2F

Art Garfunkel Jr. / Wie Du-Hommage an meinen Vater

*['60-'70 ロック] Art Garfunkel Jr. / Wie Du-Hommage an meinen Vater ( TELAMO / 2021 )

どんな音楽通でも、名前を見ない限り、このスキンヘッドおじさんを特定するのは困難だろう。本名ジェイムス・ガーファンクル、サイモン&ガーファンクルアート・ガーファンクルの息子、アート・ガーファンクル・ジュニアである。父アートとデュエットした親友ジェイムス・テイラーと同じファーストネームを名付けてもらったということになる。アート・ガーファンクルは3本の指に入る大好きなミュージシャンだけれど、この盤は手に入れるのに時間がかかった割にちょっとキツ目の盤だった。発売からしばらく経ってやっと冷静に聴けました。

アートの90年代後半から00年代の公演には妻キムと共に帯同し、”The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)”では家族3人、ジェイムスは父と同じ衣装と髪型で天使の歌声を聴かせてくれたものだったが(渋谷のオーチャードあたりで何度か見ました)、時の経つのは早いもので。

ちなみに大きく成長してからもアートの公演では時折デュエットを披露。ボーカリストとしては、正直親の七光りが無ければ特徴もなく厳しいものがある中での今作、初のアルバムとなるわけだけれど、移住地のドイツ語で、S&Gおよびアートの代表曲をゲストを交えて歌うというところに落ち着いたようだ。アルバムタイトルは、『あなたのように―父へのオマージュ』といったところ。

割と面白いなと思ったのは、アートが子ども(ジェイムス)のために作った1997年のアルバム『Songs from a Parent to a Child』に収められているキャット・スティーブンスのカバー”Morning Has Broken”とか、1993年の『Up 'Til Now』(このジャケにも息子ジェイムスが映っている)から、キャロル・キング作でエヴァリー・ブラザーズが歌った”Crying In The Rain”が収録されていたこと。家族で一緒にツアーを回っていた頃、おそらく知らぬ間に覚えていた楽曲を収録したと思われる。なんだか心動くものがあった。何より、父アートが”Der Condor zieht (El Condor Pasa)”と”Raum des Schweigens (The Sound Of Silence)”、そしてCDにはクレジットがなかったけれど、”Geh mit mir durch den Regenbogen (Bridge Over Troubled Water)”の3曲で息子の一人立ちに華を添えている。アートのレコーディングは、2013年にジミー・ウェッブのセルフ・カバー・アルバムで歌った”Shattered”以来ではなかろうか。ゾクっとするアートの歌声は流石と思い知らされた。

さらに5曲追加の拡大盤も出ている。

Buddy Guy / The Blues Don’t Lie

*[ブルーズ] Buddy Guy / The Blues Don’t Lie ( Sony Music / 2022 )

ブルーズの新譜をこうして聴くのはなんとも新鮮な気分。バディ・ガイ御年86歳(!)のニュー・アルバム『The Blues Don’t Lie』。日本盤発売直前だけれど、サンプルを聴くことができた(日本盤は”Leave Your Troubles Outside”をボーナス収録)。

 

恐ろしくパワフルなギターとボーカル。ジャケの表情にみなぎる充実感、これで伝わりますよね。「ブルーズは嘘をつかない」ってなタイトルも最高。60年前にルイジアナを出て、ワン・ウェイ・チケットでシカゴへ…喋るのは苦手だからギターに喋らせよう…なんていう冒頭”I Let My Guitar Do The Talking”。自伝的作品だけれど、これはバディが話す人生を今作の白人プロデューサー、トム・ハムブリッジが曲に仕立てたもの。続くタイトル曲”Blues Don’t Lie”はそのトムの単独作だけれど、BBを思い出すような素晴らしいマイナー・ブルーズだった。ビートルズの"I've Got A Feeling"のカバーもあったり飽きさせない作り。クラプトンもストーンズもジミヘンも、バディに憧れて…というところがあったわけだけれど、クラプトンですら共演すると気張っているお子ちゃまに見えてしまうという。今回の共演者はキング牧師の暗殺を決して忘れないという”We Go Back”を共に歌ったメイヴィス・ステイプルズはじめ、エルヴィス・コステロ、ちょっと意外にも思えたジェイムス・テイラー、同じく齢80を超えても達者なファンキー・ブルーズ爺さんボビー・ラッシュ、21世紀のアメリカーナの雄ジェイソン・イズベル、そしてウェンディ・モートンという顔ぶれ。本編ラストは同郷ルイジアナのスリム・ハーポの名曲”King Bee”をアコギで弾き語る。BBともどもコマーシャルなブルーズ良作を生んできた彼のプリミティブな肉声に参りましたの一言。

Richie Havens / Common Ground

*[SSW] Richie Havens / Common Ground (Connexion / 1983)

1969年、伝説のウッドストックにて、次の出演者が飛行機で到着する「場つなぎ」で即興で演じられたという”Freedom”で知られる黒人フォーク・シンガー、リッチー・ヘイヴンス。修行僧のようないで立ちにターコイズの指輪で、ギルドのアコギを抱え込んで歌うラヴ&ピース世代の象徴のような人でもあった。ギターのリズム感が尋常じゃないんですよね。オープン・チューニングのギターでパーカッシブに倍速リズムのカッティングを刻みながら、ディープ・ヴォイスの歌はバラードのノリという唯一無二の音。カバーを全て自分の世界に引き込んでしまうから、あのボブ・ディランも30周年記念コンサートに彼を呼んで”Just Like A Woman”を歌わせていた。同じディランの”All Along The Watchtower”と、ジェイムス・テイラーの”Fire And Rain”、ジョージ・ハリスンの”Here Comes The Sun”が稀代の名演でした。

60年代フォークやロックの人たちは80年代に作品を出せず苦労した人も多いが、リッチーもその例にもれず。ただ、彼のディープ・ボイスはソウル風味のAORサウンドとの親和性は結構高く、1983年にイタリアでこんなアルバムを作っていた。アレンジ・プロデュースに加わっているのはイタリアの大御所ピノ・ダネリ。ピノとの共作によるファンキーな”This Is The Hour”をはじめ、トータルで聴き所が多い。ザクザク刻むアコギはないけれど、ボーカリストとしての魅力が確かめられる作品だ。同じくボーカリストとしては1991年にEpicからリリースされた『Now』という大傑作も残している。


ちなみに内ジャケの姿はまるでアイザック・ヘイズのような!

Roger Miller / A Trip In The Country

*[SSW] Roger Miller / A Trip In The Country (Mercury / 1970)

カントリーの大御所ロジャー・ミラー。シンガー・ソングライターの草分けとしての足跡もある。1992年に惜しくも亡くなっておりますが。こちらは1970年にマーキュリーから出たアルバム『A Trip In The Country』。マーキュリーからはこの1枚だけ。タイトル『A Trip In The Country』と聞けば、カントリーのスタジオ・ミュージシャンが超絶テクを披露したあのArea Code 615の傑作セカンド『Trip In The Country』を思い出すけれど、同じ1970年リリース。ロジャー・ミラー盤には、Area Code 615に参加したチャーリー・マッコイやバディ・スパイサーがいる。

 

ロジャー・ミラーの『A Trip In The Country』が興味深いのは、大滝詠一が1997年のナイアガラ・リハビリ・セッションで取り上げた”Tall, Tall Trees”と”Nothing Can Stop My Love”が収録されていること(2016年の大滝のアルバム『DEBUT AGAIN』(デビュー・アゲン)の初回ボーナスCDに収録)。

”Tall, Tall Trees”はジョージ・ジョーンズ(1957年にシングル・リリース)とロジャー・ミラーの共作で、アラン・ジャクソンが1995年にカバーし、USカントリー・チャートで1位を記録している(プロモ映像がYouTubeで観られますが結構いい感じ)。大滝が直接興味を持ったきっかけはリアルタイムできっとそこだろう。ロジャーのヴァージョンもバディ・エモンズの痛快なスティールギター・ソロを含め、最高です。

youtu.be

youtu.be

大滝さんの濃密なラジオからはルイジアナ・ヘイライドのこととか、色々教わったのだけれど、エルヴィスの産湯を浸かったという彼が、アメリカン・ポップス探究の途上にて、日本人があまり関心を持ってこなかった部分のカントリー・ミュージックを当時一つのキーワードとしていたことは間違いないと思う。私自身も特にアメリカの音楽を熱心に聴いてきたわけだけれども、カントリーはあきれるほどに奥が深い。カントリーそのものな50年代のロックンロールはもちろんだけれど、大滝が惹かれていた60年代前半のアメリカン・ポップス(リッキー・ネルスンあたりがわかりやすい)、そして70年代の一般的なアメリカン・ロックやAORなどと言われる音楽、さらにある種のソウル・ミュージックだって、その実はカントリーだということに気が付く。え?と思う人がいるかもしれないけれど、雑食の音楽ファンならわかってもらえると思う。大滝のとぼけたユーモア感覚や言葉遊びやオチのセンス、いわゆる「ノリ」の部分にカントリー仕込みの感性がみられるような。しかも、『A Trip In The Country』がリリースされた1970年は、はっぴいえんどがデビュー・アルバムはっぴいえんど(ゆでめん)をリリースした年でもあったわけで。この辺りの円環とリハビリ・セッションの選曲を深読みしてみるのも面白い。

Julian Lennon / Jude

*[ロック] Julian Lennon / Jude (BMG / 2022)

 

気付けば肌寒い季節になってきまして。頂いた原稿のお仕事色々やっていたら1年ぐらい、暇になる隙間がなかった。暇があろうとなかろうと釣りには行ってしまうから、更新は遅れるという悪循環にはまっていた。しばらく前に疲れ切ったところでコロナにもなりましたね~こちらは思った以上結構しんどく出てしまい、風邪じゃないということを体感しました。

さて、積まれている新譜の中から、あのジュリアン・レノンの11年ぶりの新作Judeを。レコード原理主義者の私はもちろんLPで入手。ビートルズ、ジョン…おそらく亡霊のような幼年期の想い出と戦うジュリアンも59歳といういい年齢になられて。父ジョンと瓜二つの(先妻シンシアとの)息子ジュリアンはジョンの死後1984年にデビュー。デビュー盤でフィル・ラモーンがプロデュースするなど相当お金をかけてもらったのだと思うけれど、結構売れた。こちらはサイン入りLPという家宝のひとつ。

ただしその後、人気は凋落して、レコード会社との契約は切れる。きっと苦労もしたはずだ。大学生になりたての頃だったか、1998年に『Photograph Smile』というパーソナルな作品が久々にリリースされて、Avexの日本盤が新譜レコ屋でも結構プッシュされており、買いました。それを聴いてビックリ!これは天才だと思いました。ジョンで言うところのプライマル・スクリーム療法ではないけれど、父に捨てられた自身の不幸な出自と隠し切れないビートルズの幻影と戦う内省的な作風に、一気にファンになってしまった。”Day After Day”がとにかく素晴らしい曲!2世ミュージシャンの括りでいまだに語られるのは不幸だとも思う。2世で首相補佐官になったどっかの人とはデビュー時に持つ資質は違っているものと想像されます。知らんけど(笑)

2000年代以降の作品。2009年のEP『Lucy』と、2011年のアルバム『Everything Changes』

新作に話を戻すと、プロデュースはジュリアン自身と彼のバンドのギタリスト、ジャスティン・クレイトン。10曲の内すでに4曲はYouTubeで先行配信されていた。冒頭”Save Me”、”Freedom”や”Stay”あたりはジュリアンの真骨頂かと。”Love Don’t Let Me Down”なんていうビートルズ引用もあるから、すでに吹っ切れてる部分はあるのかも。ポール・マッカートニーが哀れなジュリアンのために作った”Hey Jude”をアルバム・タイトルに持ってきているくらいだし。メロディで言うと、”Not One Night”やOasisっぽいブリット・ポップ風味を現代的に展開させた”Lucky Ones”が印象的だった。ラストの”Gaia”はジュリアンと同時期に世に出たブルー・ナイルのポール・ブキャナンがゲスト参加している。LPは、針飛びを恐れてかわからないけれど、少々音圧低めの印象もあったが、ジャケのトータルの雰囲気はデビューから3作目までのモノクロを踏襲しており、とてもよい。

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最後に、ウクライナ戦争の最中の今年4月にアップされた、Extremeのヌーノ・ベッテンコートと演奏した”Imagine”を。

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10吋(インチ)レコードを聴きながら

*[コラム] 10吋(インチ)レコードを聴きながら

 

10吋(インチ)はいいですね。ポツポツとレコ屋に出たところを見つけて集めている。10インチは78回転のSPと同じサイズ。でも、重たくて割れやすいSPとは違い、ヴィニールで軽く割れにくい。日本盤だと1950年代後半から60年代初頭くらいまでのものをよく見かける。薄型のコーティング仕様で独特の着色のジャケがレトロ感満載な感じ。12インチのお馴染みのアルバムサイズのLPレコードが出るまでは、LP(ロング・プレイング)といえば10インチだった。

 

ここのところ、往年のミュージシャンの新譜CDを買うと、「でかジャケ」などと称して拡大サイズのジャケが特典で付いてくるけれど、このサイズが大抵10インチなんですよね。12インチよりコストが安いからだと思うけれど、中途半端なサイズだと思っている人もいるかもしれない。

昨日買った10インチ3枚。1枚目は1959年にコロムビアからリリースされたマイトガイ小林旭大いに歌う』。「銀座旋風児」と書いて「ギンザマイトガイ」と読ませる。最高です。主演映画のタイトル曲”ギターを持った渡り鳥”を改めて聴くと、田端義夫風の生エレキの音色とか、ドゥ・ワップから来ているんだろうけれど、後のムード歌謡でもお馴染みとなる「ドゥー・ワー」なんてコーラスといい、良いですよね。そもそも股旅+西部劇っていう文化的折衷も面白い。

2枚目はTAKESHI TERAUCHI AND HIS BLUE JEANS『SCREEN MOOD ON THE ROCK(スクリーン・ムード・オン・ザ・ロック)』。コレ、調べてみると1963年に東京・キングレコードからリリースされた、寺内タケシとブルー・ジーンズ(ジャケ裏の解説では「寺内タケシとブルー・ジンズ」と表記)初のLPとのこと。背表紙に寺内やブルー・ジーンズの表記はないから、お店なんかでBGMとして使われた、ロックで映画音楽を演奏するムードものの一つだったのだろう(選曲は出演していたジャズ喫茶のお客さんのリクエストらしい)。ヴェンチャーズの”Walk Don’t Run”(ジャズ・ギターのジョニー・スミスの曲ですね)、そして”Jailhouse Rock(カンゴク・ロック)”に始まり、“High Noon(ハイ・ヌーン)”(『真昼の決斗』)、”Mack The Knife(匕首マック)”(『三文オペラ』)、”The Third Man Theme(第三の男)”などを収録。解説のメンバーに含まれていないけれど、ジャケットの演奏写真(日劇ウェスタン・カーニバルか?)にはボーカルの ほりまさゆき と、後にワイルドワンズを結成する加瀬邦彦も写っている。

そして3枚目は『スリー・キャッツのセクシイ・ムード 桃色の風』コロムビアから1960年にリリースされた2枚目のLP。浜口庫之助が手がけた”黄色いサクランボ”に代表されるお色気路線で知られる女性ボーカル・トリオ。結構タイトルは露骨なんですが、見た目的には女性ジャズ・ボーカルものの線だったことがわかる。そもそも女性ジャズ・ボーカルものの一部は、マイクロフォンを効果的に使って吐息を耳元のように聴かせるジャンルだった。ここには収録されていない”黄色いサクランボ”は、ゴールデン・ハーフが1970年にカバーして大ヒットした。そういえば、大正生まれの私の祖父が亡くなる前に、当時大学生だった私がレコードを集め始めていることを知って、突然「スリー・キャッツの黄色いサクランボのCDを探してもらえんか」と電話がかかってきたことを思い出す。ゴールデン・ハーフではない、もう一度聞きたい、と何度も念を押されて。今ならすぐ探せたと思うし、YouTubeの時代なら何でもないことなんだけれど、当時の私の力では難しくて。あの頃おそらく単体のCDは出ていなかったんじゃないだろうか(その後アルバムがCD化された)。結構中古レコード屋さんなんかも回ったけれど、見つからないままになってしまったことが今でも悔やまれる。