いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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markfolky@yahoo.co.jp

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[NEW!!]2020年7月31日発売『URCレコード読本』(シンコー・ミュージック・ムック)に寄稿しました。
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[NEW!!] ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ「x-bijin」初のアルバム『x-bijin』(2020年6月26日発売)、リリースインフォにコメントを書かせてもらいました。
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11月15日発売のレコードコレクターズ12月号に加奈崎芳太郎『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(明月堂書店)の書評が載りました。
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編集・ライターを担当した加奈崎芳太郎著『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(エルシーブイFM「加奈崎芳太郎のDIG IT!!」書籍化)が2019年8月に発売されました。
●加奈崎芳太郎著・桑畑恒一郎写真
●定価:本体3000円+税
●A5判(上製)416頁
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【メディア掲載】
『毎日新聞』2019年10月3日掲載 「元「古井戸」加奈崎芳太郎さんが本出版 音楽活動50周年の集大成」
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『長野日報』2019年9月25日掲載 「音楽文化で伝える戦後 パーソナリティのFM番組まとめ 加奈崎さん書籍刊行」
極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」が書籍化されました。
『哲学するタネ【東洋思想編】――高校倫理が教える70章』(石浦昌之 著)2018年9月発売!!
●石浦昌之著
●定価:本体2500円+税
●A5判(並製)384頁
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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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【ブックガイド掲載】
斎藤哲也『もっと試験に出る哲学――「入試問題」で東洋思想に入門する』(2020年、NHK出版新書)

『URCレコード読本』が出ました!

*[コラム] 『URCレコード読本』が出ました!


コロナで発売予定日が後ろ倒しされたりもしましたが、URCレコード読本』シンコー・ミュージック・ムック)が7月31日に発売となりました。後世に残したいURCの50曲(なぎらけんいち「葛飾にバッタを見た」、加川良「教訓1」、赤い鳥「竹田の子守歌」)&コラム「高田渡~永遠の「仕事さがし」」を書かせて頂きました。

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ちょうど原稿を送った直後に、あの騒動の渦中の杏さんがYouTubeで「教訓1」をカバーしたんですよね。時代を超えたメッセージソングだと感じ入った次第。

www.youtube.com


本が届いて改めて全部読みましたが、初出エピソード多数で贔屓目抜きで面白い!編集の荒野さんによる、歴史に残る労作だと思います!

www.shinko-music.co.jp


アーティストたちの証言で綴る“日本初のインディ・レーベル”の軌跡

1969年に設立され、フォーク・ブームの牽引役となった“日本初のインディ・レーベル”、URCレコード
50年の節目にふたたびリイシューがスタートした同レーベルの歴史を、所属したアーティストたちの証言を手がかりに、改めて徹底検証する。
「後世に残したいURCの50曲」もピックアップ。日本のポピュラー・ミュージックを一変させた先駆的レーベルの実像に迫る保存版!

【CONTENTS】
名曲セレクション
後世に残したいURCの50曲
URCレコードの歴史(小倉エージ)

アーティストによる証言①
高石ともや
中川五郎
中川イサト
休みの国

元ディレクターによる証言
レコード制作現場の実状(小倉エージ)

アーティストによる証言②
金延幸子
ティーヴ・ガンが語る金延幸子の魅力
斉藤哲夫
大塚まさじ
三上 寛
なぎら健壱
古川 豪
やぎたこが語るレジェンドたちとのコラボ

世代別URC体験トーク・セッション
Soggy Cheerios(鈴木惣一朗×直枝政広)
中村ジョー(イーストウッズ/元ザ・ハッピーズ)×石垣窓(フリーボ)
佐藤良成(ハンバート ハンバート)×前野健太

コラム
岡林信康:『岡林、信康を語る』で明かされたURC在籍時の心情
高田 渡~永遠の「仕事さがし」
今日的視点で見るURCレコードの後継者たち
URC50周年記念コンピレーションCD

フーテナニーってナニ?

*[コラム] フーテナニーってナニ?

 

「HOOT」は「フーテナニー」の意でフォーク・エラによく使われた言葉。アバのメンバーになるビョルン・ウルヴァーススウェーデンで作ったフォーク・グループはフーテナニー・シンガーズだったけれど、これは流行語をそのまま使っちゃったベタな恥ネーミング(笑)スウェーデンは当時、英米より文化的時差があったとわかる。「フーテナニー」は元々世界恐慌後の1930年代・ニュー・ディール時代に米・民主党のヒュー・デ・レイシー(共産党員でもあった)の団体が使った言葉で、後にピート・シーガーウディ・ガスリーといったアメリカン・フォークの父が定着させた。その中身は、複数のアーティストを集め、観客と一緒に歌う(シング・アウト)というライブのスタイル。ハコ的には、ワンマンを任せられない新人に数曲ずつ発表の機会を与えて彼らの家賃の支払いを助けつつ、いろんなアーティストのステージを観たい客のニーズも同時に満たせた。自分さえよければ、ではないリベラルの発想ですよね。こういうのがあったから、洋邦問わずフォーク世代のミュージシャンは思想的に留まらず、人間関係の面でも連帯できたのだろう。そう思うと、フォーク世代以後のベテラン・ミュージシャンは、今こうした連帯が弱いから、ちょっと可哀そう。格差を自己責任とか言って見過ごす時代になり、1・2曲、昔のヒット曲だけちょろっと歌わしてもらえるイベントでもなければ採算も合わないから、ビッグイベントのオファーはまず一向に来ない…そんなベテランも多いんじゃないかな。固定ファンばかりだと、ファンが増えることはないから、業界も尻すぼみになって。ま、フーテナニー的なイベントは今もなくはないんですけどね。アコースティック系が多いけれど、それは入れ替えのセッティングに時間を取らないからだろう。

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 前置きが長くなったけれど、この『HOOT TONIGHT!』( Warner / 1963 )なるライブ盤、カリフォルニアのハーモニー・ポップの伝統に位置するモダン・フォーク・カルテットのライブが2曲(”Jack Fish”と”Jordan’s River”)収められているから入手してみた。いわゆる白プロモだが、あまり売れなかったのかな。聴いてみると、ソロ作をよく聴いていたバド・ダシェル(&キングスメン)とか、ゲートウェイ・シンガーズ(メンバーのルー・ゴットリーヴはグレン・ヤーブローらとライムライターズを作り、トラヴィスエドモントンは抜けた後、バド・ダシェルとバド&ダシェルを作る)とか。そしてリン・ゴールドが歌う美しい”Anathea”のクレジット「Terry Collier」に惹きつけられた。テリー・コリアーとあるけれど、黒人フォークシンガーでフリーソウル界隈でも持て囃された「テリー・キャリアー(Terry Callier)」では?と思って調べると、彼の最初期のクレジット作品のようだった。テリー・キャリアーはデヴィッド・クロスビーと60年代に短期間デュオを組んでおり、シカゴにツアーで訪れたミリアム・マケバのバッキングを担当していたジム・マッギンことロジャー・マッギンにデヴィッドを紹介したんだとか。バーズ(The Byrds)結成前夜のエピソードである。

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Spyder Turner / Stand By Me

*[ソウル] Spyder Turner / Stand By Me ( MGM / 1968 )

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昨日買ったレコで、一番はじめに聴き始めてみた。デトロイトで育ったソウル・シンガー、スパイダー・ターナーの代表作『Stand By Me』。本名はドワイト・D・ターナーで、スパイダーは彼につけられたニックネーム。”Stand By Me”はもちろんベン・E・キングの代表作で、ジョン・レノンもカバーしたあの曲。ジェイムス・ブラウンの”I Feel Good”やスモーキー・ロビンソンの”My Girl”、チャック・ジャクソン”Any Day Now”などの唄真似がこれでもかと織り込まれる楽しい仕上がり。サム・クックの”You Send Me”が織り込まれるあたりで、スパイダー・ターナーも演っていたドゥ・ワップ的階段コード進行の曲だなと改めて気付かされたり。このカバー・ヴァージョンは1968年にそこそこヒットして一躍時の人となった(ビルボード12位、R&Bは3位)。アルバムにはサム&デイヴ”Hold On I’m Coming”やジェリー・バトラー”Your Precious Love”といったソウル・ヒット・ナンバーに加え、”Moon River”や”Dream Lover”なんかも含まれていて、ビリー・スチュワートとか、ジャッキー・ウィルソンのような白人聴衆寄りのメロウなソウルを演じるイミテーターだったとわかる。ただ、スパイダー自身もそれに不満を感じたのか、後にノーマン・ウィットフィールドの元でレコードを作ることになる。アルバム『Stand By Me』で素晴らしいと感じたのはアップなノーザン・テイストの”I’m Alive With A Lovin’ Feeling”。「ヘヘイヘイ」とか言っちゃう、そっちの筋の人には堪らない楽曲。アルバムの全編アレンジはマイク・セオドアとデニス・コフィー!

長谷川博一さんの本『追憶の泰安洋行』

*[コラム]  長谷川博一さんの本『追憶の泰安洋行

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連載を胸躍らせながら読んでいたので、こんなに突然のお別れになってしまうとはいまだに信じることができない…音楽ライター、本物の音楽ジャーナリストだった長谷川博一さんのことだ。細野晴臣が1976年に残したトロピカル三部作の第二章泰安洋行を関係者のインタビューや分析を交えて深掘りする、という2016年7月~2018年11月のレコードコレクターズ誌連載がこの度一冊の本、長谷川さんの遺作として世に出た。当時連載を読んでいて、久々にお金を投じる価値のある雑誌記事を読んだ気持ちになったことを思い出すし、長谷川さんも、近年の音楽評論の低潮を憂いつつ持ち前の気概で書いた文章だと推測する。ワールドスタンダード鈴木惣一朗さんのあとがきもまた不思議なもので、アパートでレコードを聴き合う良き友人だったふたりが30数年ぶりに再会、打ち合わせ中に「(入院して)声帯を除去するかもしれないから、話すのは最後になるかもしれないなぁ」と(長谷川さんから)知らされ、数日後に訃報を聞いたのだと…さらにその数ヵ月後「長谷川博一」という着信が鈴木さんの携帯に鳴り、リダイヤルすると、見知らぬ人が出て…それを長谷川さんが託したメッセージと受け取ってこの本は完成したそうだ。

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 個人的には中高生の頃、NHK-BSロック大全集という洋楽の生演奏(しかもサタデーナイトライブ!)を流してくれる番組に夢中になった。YouTubeもなく、動くミュージシャンをおいそれと観れなかった時代。動くジャクソン・ブラウン、ランディー・ニューマン、ポール・サイモンジェイムス・テイラーニール・ヤングボブ・ディラン…ビデオテープが擦り切れるくらい観ました。そこに南こうせつ奥居香と一緒に出演していたのが気鋭の若手音楽評論家・長谷川博一その人。ロック世代のミュージシャンと同世代の評論家にありがちな(悪くいえば)「俺たちの~」「マブダチの~」といった暑苦しく独善的なスタンスとは対照的で、長谷川さんの知的/クールかつ俯瞰的なまなざしと、音楽への温かい理解・飽くなき愛情・包容力に、私はロックやフォークといった音楽に接する態度そのものを教わった。

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 初めてお会いしたのは、これまた私の人生を変えることになるエレックレコードの方々が再集結した「エレック唄の市2009」(於・九段会館)。たしか前座の演奏とケメさん、生田敬太郎さんあたりを見た後でロビーに出たら、一目で「あっ長谷川さんだ!」と。大柄でネルシャツがとてもよく似合っていた。恐れを知らぬ私が、「NHK-BSの番組の大ファンでした」…なんて話しかけると、とても喜んでくれて、ライブのセットリストを見せてくれた上で「じゃあ飲みに行きますか、でもチケットせっかく買って来てくれたのに悪いかな…」なんて。でも二つ返事で飲みに行くことになって、お茶の水の行きつけの店でご馳走になった。

 

その時、長谷川さんは海野弘の1930年代論を読んでいたけれど、きっとミュージシャンの楽曲ないし背景を理解するためだったのだと思う。本物だと思った。音楽活動を再開したケメのイノセンスの話に始まり、大好きなロックの話、フォークの話、長谷川さんが雑誌『This』はじめ深く関わっておられた佐野元春さんの話、スプリングスティーンの話、ビートニクの話、エキゾチカの話、政治の話、教育の話、プロレスとロックは似ているという話、仏教にいま関心があるという話…結局話が尽きず、山の上ホテルのバーに場所を移し、ただただ音楽のことや政治のことを話した。純粋に音楽のことが大好きな姿に感動するとともに、初対面の単なる若輩音楽ファンだった私に、偉ぶることなくフラットに接してくれた姿に心動かされた。そして何より長谷川さんが、近代化以来日本にとっていまも永遠のテーマである、西洋との狭間で表現することの有り様を深く考え抜く姿に、感銘を受けたのだった。

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これは、細野晴臣のセルフオリエンタリズム全開のトロピカル三部作を論じた今作『追憶の泰安洋行や2013年の労作・宇崎竜童との編著『バックストリート・ブルース 音魂往生記』白夜書房)(この本、小川真一さんがインタビューを手掛けた荒木一郎『まわり舞台の上で』と共に、古井戸・加奈崎さんの本を作るときの参考にした)にも通底している。そもそも出世作だった『Mr.OUTSIDE わたしがロックをえがく時』(1991年、大栄出版)、『きれいな歌に会いにゆく』(1993年、大栄出版)で、長谷川さんがソングライティングについてインタビューを行った桑田佳祐忌野清志郎宮沢和史佐野元春泉谷しげる山口洋中川敬小田和正吉田美奈子矢野顕子近田春夫、浅川マキ…彼らの価値が30年経っても古びない理由を考えてみてもよいだろう(ちなみにこの本、佐野さんの番組「ザ・ソングライターズ」のアイデアとなったのでは?と長谷川さんに聞いた時、明確な返事はなかったけれど、長谷川さんが亡くなった際、佐野さん自身によって「振りかえれば、この番組を企画した時、長谷川さんの本のことが記憶にあったのだと思う。そのことに感謝の気持ちを伝えたかったが叶わなかった。」と種明かしされた)。

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『追憶の泰安洋行にこんな一節があった。「日本の音楽表現は今、音楽そのものと音楽を使った何か別ものの芸能とに分かれているように思う…細野バンドの面々が生み出すものは、音楽そのもの」…音楽を長く愛してやまないファンの方ならきっとわかって頂けると思う。矢沢永吉さんの取材前日にこんなメールを頂いたこともある。「はっぴい以降の同様の流れを汲む国内アーティストで佐野さんと同じくらいの影響力(知名度も含め)を持つ人がきわめて少ない、ということが日本のロック界の大きな不幸なんですよね。」「佐野さんレベルの知力の人が後塵にもう5人くらいいたら日本の業界も、もっとロック的だったろうなと思います。そのうちの一人が自分ではないかと勝手に自認してもいるのですが。」…この長谷川さんの言葉にも深く同意するほかない。「きっと石浦さんだったら、「ランニング・オン・エンプティ」とプロレスの意味の相似を理解してもらえるのではないかと思います。」とメールを頂いた後に読ませて頂いた三沢光晴外伝』。長谷川さんのアナザーワークの中でも指折りの名著だった。その後、しばらく連絡が取れなくなってしまって、昨年の訃報を聞いた。それでもまた、いつかどこかで、お会いできると信じている。これからも、長谷川さんがそうであったように、音楽を信頼していきたいと思う。

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Booker T.Jones / The Runaway

*[ソウル] Booker T.Jones / The Runaway(MCA / 1989)

 

完全にスルーしていた盤。こんなの出てたっけ、という。A&Mからの『I Want You』の次作が1989年のコレ。そしてMGs1994年の再編作を挟んだその次のソロは20年後!2009年の『Potato Hole』

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ここのところ、CDとの過渡期の87~89年のLPを重点的に集めている。ラップ前夜のブラコンとかもマイナーな人含め結構LPが出ている。CDになると急に興味が薄れちゃうんですが。ただこの時代、中には今の新譜LPなんかとは比べ物にならないレベルの高音質LPがあるんですよ。実はオンタイムのCDより音が良い盤があったり。とはいえ世代的にはなぜか一番音を聴く機会が少なかった時代。90年代に入るとリアルタイムの記憶があるのだけれど。

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で、ブッカーTジョーンズですよ。レイト80’sそのもの、な自身による打ち込みのクールなサウンドにいつものヒップなハモンドB-3オルガンが浮遊する。チープと捉える人もいるかもしれないけれど、結構気持ちいい。面白いのは、いろんなギタリストとの共演が楽しめること。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのクリス・ヘイズ、TOTOのスティーブ・ルカサー、ジャジーないぶし銀のプレイが光るフィル・アップチャーチ、リズム・カッティングの鬼ポール・ジャクソンJr.、泣く子も黙るラリー・カールトン先生、そしてデヴィッドT・ウォーカー御大。ベースはネイザン・イーストが参加して固いサポートを。スティーブ・ルカサーとかクリス・ヘイズなんかは、きっとMGズに加入した気分でアガってたんじゃないかなと想像。ルカサーは弾きまくりですが。個人的にはフィル・アップチャーチが参加した”The Cool Dude”がスティービー・ワンダーを思わせる切ないメロで最高だった。マスタリングはバーニー・グランドマンでした。

Steve Gillette / Alone…Direct

*[フォーク] Steve Gillette / Alone…Direct (Sierra/Briar Records / 1979)


久々にレコ掘り屋の聖地・下北フラッシュ・ディスク・ランチへ。インスタでも通販を始めておられるのですが、やはりお店が一番!元古井戸・加奈崎さんの本もお渡しすることができ、チラシも置いて頂けた。椿さんは学生時代、古井戸の「何とかなれ」を演奏したことがおありとか!

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色々買いましたが、フォーク魂がうずいたのは、スティーヴ・ジレット1979年の弾き語り盤『Alone…Direct』。これは本当に素晴らしかった。スタジオ・ライブ形式のダイレクト・レコーディングだったみたいだけれど、代表曲の数々をギルドF-50とマーティンD-18 & 28、そしてギブソンJ-50を使い分けて弾き語る。凄まじい演奏力。変則チューニングも多く使っていることに気がつく。取り上げているのは、イアン&シルヴィアが取り上げてヒットし、後にカバーしたジョン・デンバーなど300以上のヴァージョンが存在する代表曲”Darcy Darrow”、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドやリンダ・ロンシュタットが歌った”A Number And A Name”、サンシャイン・カンパニーやスワンプウォーターが取り上げた”Back On The Street Again”、名曲”Gamblin’ Man”など60年代の楽曲だ。ロック世代が一目置いていたことは、同年にRegency Recordsよりリリースした『Little Warmth』のプロデュースをグレアム・ナッシュが手掛けたことからも伺える。1967年にヴァンガードからリリースした『Steve Gilletteには、前述の”Darcy Darrow”、”A Number And A Name”、”Back On The Street Again”と共に、パメラ・ポランドが作った”Goin' Home Song”が収められている。語りモノバラッドの伝統をオリジナリティの領域に昇華させたのが彼の個性だった。

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茂忠(しげちゅう/小坂忠・鈴木茂)/ まだ夢の途中

*[日本のフォーク・ロック] 茂忠(しげちゅう/小坂忠鈴木茂)/ まだ夢の途中(Columbia / 2020)

 

コロナの自粛期間中でしたか、フォローしている小坂忠さんのツイッターでこのリリースを知りまして。オンライン注文限定のCDシングルでサイン付という。しかし!気が付いた時が〆切日の日付をちょうど回った所で(笑)…とはいえ聴いてみたい一心でクリスチャンレーベルのミクタムにひとまず注文しますと、アガペーの愛ですね…すぐにサイン付で送って頂けました。ただただ感謝。

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 いま闘病中のセンチメンタル・シティ・ロマンスの中野督夫さん、そして鈴木茂さんとの還暦トリオのステージで拝見したときから、新曲を聴いてみたいと思っていた。忠さんも大病をされて復帰されたところ。年を重ね、時代はこんなに変わってしまったけれど、理想主義の火を消してはいけない、まだ夢の途中…という忠さんのメッセージが胸に残った。決して明るいムードの曲調ではないのだけれど。2006年に出た『まだ夢の続き』という自伝のタイトルとも地続きなのだと思う。この本における感動的なエピソード(クリスチャンになったきっかけ)にも揺さぶられてしまっていて、今秋に明月堂書店より刊行予定の『哲学するタネ―西洋思想編①』の中でも取り上げさせて頂いた。バンドは小坂忠鈴木茂小原礼Dr.KyOn、西海孝という安定の布陣。NHKラジオ深夜便の今年2~3月「深夜便のうた」に選ばれている。

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 そういえば、4月に2001年のポピュラー復帰作・細野晴臣プロデュースの大名盤『People』がクリア・ヴァイナルでリイシューされた(バーニー・グランドマンによるカッティング)。アナログで聴く『People』も文句ナシでした。新たなインタビューも封入。忠さんの円熟のボーカルに聴けるコク、旨味を堪能するとともに、細野さんの時代を超えた音選びがいかに優れているか、ということも思い知らされた。