いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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markfolky@yahoo.co.jp

[NEW!!]週刊ダイヤモンド2020年12月5日号の佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)のブックレビュー 知を磨く読書第372回 に『哲学するタネ 高校倫理が教える70章【西洋思想編①】』が取り上げられました。
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[NEW!!]「読者たちの夜会」(2021/1/14 LOFT9渋谷) 2020ベストビブリオバトル にて、哲学芸人マザーテラサワさんが『哲学するタネ―高校倫理が教える70章【西洋思想編1・2】』を取り上げてくれました。
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[NEW!!]評論家・映画監督の切通理作さんが店主を務める阿佐ヶ谷・ネオ書房の読書会を開催します。
哲学を学び直したい人のために ネオ書房【倫理教師・石浦昌之ライブ読書会】 12月20日(日) 18時半開場 19時開演 高校倫理1年間の授業をまとめた新刊『哲学するタネ 西洋思想編①』(明月堂書店)から、西洋哲学の祖、ソクラテスを取り上げます。 内容 ◆ フィロソフィア(愛知)とは? ◆「無知の知―汝自身を知れ」 ◆問答法はディアロゴス(対話)の実践 ◆「徳」とは何か? ◆プシュケー(魂)への配慮 ◆善く生きることとは? 入場料1200円 予約1000円  予約kirira@nifty.com
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[NEW!!]『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】が2020年10月20日に2冊同時刊行!!。
『哲学するタネ】――高校倫理が教える70章』【西洋思想編1】【西洋思想編2】2020年10月20日発売
●石浦昌之著
●定価:西洋思想編1 本体2000円+税(A5判 330頁)(明月堂書店)
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●西洋思想編2 本体1800円+税(A5判 300頁)(明月堂書店)
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honto西洋哲学 1位・2位に2冊同時にランクインしました(2020/10/25付)

【書評掲載】
週刊ダイヤモンド2020年12月5日号 佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)のブックレビュー「知を磨く読書 第372回」

2020年7月31日発売『URCレコード読本』(シンコー・ミュージック・ムック)に寄稿しました(後世に残したいURCの50曲 なぎらけんいち「葛飾にバッタを見た」・加川良「教訓1」・赤い鳥「竹田の子守歌」、コラム「高田渡~永遠の「仕事さがし」」)。
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ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ「x-bijin」初のアルバム『x-bijin』(2020年6月26日発売)、リリースインフォにコメントを書かせてもらいました。
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「halfway to a hosono house?」 ohno tomokiとダニエル・クオンによるデュオ 「x-bijin」、ほぼ宅録による初のアルバムは、甘美なペダルスティールにのせてダニ エルが滑らかなボーカルで歌いこなす桃源郷ポップス。遠藤賢司に捧げた「グレープ フルーツ」からして初期松本隆を思わせる日本語の美しさが際立つのはなぜだろう? はっぴいえんどとポール(・マッカートニー)が産み落としたタネは、ジム(・オルーク )と出会ったペンシルヴァニアで果実となり、多摩産シティ・ポップのフレッシュジュ ースに姿を変えて、甘酸っぱい喉ごしと共に僕たちの前にある。(いしうらまさゆき)
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11月15日発売のレコードコレクターズ12月号に加奈崎芳太郎『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(明月堂書店)の書評が載りました。
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編集・ライターを担当した加奈崎芳太郎著『キッス・オブ・ライフ ジャパニーズ・ポップスの50年を囁く』(エルシーブイFM「加奈崎芳太郎のDIG IT!!」書籍化)が2019年8月に発売されました。
●加奈崎芳太郎著・桑畑恒一郎写真
●定価:本体3000円+税
●A5判(上製)416頁(明月堂書店)
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【メディア掲載】
『毎日新聞』2019年10月3日掲載 「元「古井戸」加奈崎芳太郎さんが本出版 音楽活動50周年の集大成」
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『長野日報』2019年9月25日掲載 「音楽文化で伝える戦後 パーソナリティのFM番組まとめ 加奈崎さん書籍刊行」

極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」が書籍化されました。
『哲学するタネ【東洋思想編】――高校倫理が教える70章』(石浦昌之 著)2018年10月10日発売
●石浦昌之著
●定価:本体2500円+税
●A5判(並製)384頁(明月堂書店)
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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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【ブックガイドに掲載されました】
斎藤哲也『もっと試験に出る哲学――「入試問題」で東洋思想に入門する』(2020年、NHK出版新書)

John Mayer / Sob Rock

*[ロック] John Mayer / Sob Rock ( Columbia / 2021 )

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youtu.be

もう本日30回ぐらい聴いたかな…というジョン・メイヤーの新譜『Sob Rock』。ジャケット見て笑っちゃいました。完璧な80年代仕様。YouTubeで”Last Train Home”を聴いてみると、シンセがまさに”Africa”時代のTOTOそのもの。しかもTOTOに参加しているキーボーディストのグレッグ・フィリンゲインズとパーカッションのレニー・カストロもいるという。マレン・モリスがゲスト参加する後半のコーラスも良い感じ。こりゃ仕掛け人は誰だろうと思ったら、メイヤー自身とドン・ウォズでした。ドン・ウォズはボニー・レイットやディランのプロデュースで有名になりましたが、近年はブルーノート・レコードの社長をやりつつ、ストーンズブライアン・ウィルソングレッグ・オールマンライアン・アダムスなんかをプロデュースし、やりたい仕事でルーツ回帰している模様。ストーンズが混じっていたとしても、ある種の広義のアメリカーナなんですよね。ジョン・メイヤーもそこに違和感なく含まれる。ドンは見た目がデッドのジェリー・ガルシア化していると思ったら、ボブ・ウェアの現行バンドのメンバーにもなっていた(ジョン・メイヤーも現行デッドとアルバムのツアーをやるみたい)。

 

話を戻って、このジョン・メイヤーの新作。アナログで買ったんですが、YouTubeで聴きまくってたのとまた印象が変わりまして、音良いですよ。ってかフェティシズム的なつくりですよね。レーベルはしかもコロンビア。シュリンクにシールが貼られた、薄手の輸入アナログでいうと、中古で450円ぐらいで売ってたような…あの感じ。もう最高ですよね。カセットも往年のコロンビアのつくりで出しているみたいだし、Spotifyで見かけたのはあの「Nice Price」が貼られたやつ!いやはや、ノスタルジーを刺激する仕掛けが素晴らしい。タイトル『SOB ROCK』もセンスがいい。Sobはすすり泣くという意味なのだけれど、私なら『涙ちょちょ切れロック』と訳しますね(笑)

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地味と思う人もいるかもしれないけれど、聴き続けていくと、おそろしく練られた普遍性をもつサウンドとメロディだとわかる。そして涙がちょちょ切れるという。歌モノの体裁ながら、ギターは要所要所、弾きまくってます。ピノ・パラディーノが参加した”New Light”にはa-haの”Take On Me”とか、歌詞にはキング・ハーヴェストの”Dancing In The Moonlight”が含まれていると思ったり。マレン・モリスがハーモニーをつける”Why You No Love Me”はエア・サプライの”Even The Nights Are Better”のリズムパターンが隠し味になっているような。”Wild Blue”はマック・ノップラーのダイアー・ストレイツとJ.J.ケイルを混ぜたようなクールなテイストで。そして”Shot In The Dark”はサビ後ろがバックストリート・ボーイズの”I Want It That Way”のメロディを彷彿とさせつつ、サウンドはエイティーズな切ない名曲で…

youtu.be

アルバムの文脈を説明するとき、「ヨット・ロック」というキーワードが出てくるだろう。ヨットがジャケットに出てくるような70~80年代懐メロといった意味で、日本独自ジャンルの「AOR」とは一部重なるけれど、重ならない部分もある。日本のAORはスタイリッシュとか洗練というキーワードで捉える人が多いけれど、そうした音楽はアメリカだとちょっとダサい歌謡ロックみたいなイメージがある。大好きですが寺尾聰みたいというか…コロナ禍にあって、こんな遊び心のあるアルバムが出て来たというのは、「あの頃はよかった」という参照枠としてヨット・ロック的サウンドが選ばれたということなのだと拝察する。じゃ、また聴こうっと。

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Mixed-Up Confusion(ゴチャマゼの混乱)

*[コラム] Mixed-Up Confusion(ゴチャマゼの混乱)

 

ブートレッグ・シリーズの新作リリースが告知されたボブ・ディランに1965年の性的虐待の訴えが起こされたとか。ディラン側は全面否定しているけれど、内心虚ろなニュースに聞こえたりも。目的は被害者自身の不快とされる経験の清算とお金だと想像はできる。セックス・ドラッグ&ロックン・ロール時代の様々なミュージシャンの逸話を知っているだけに(クリーンなイメージのあるビートルズのメンバーでさえ、あんなことやこんなことを…)、ディランへの尊敬は何一つ揺らがないんですが。もし真実だったとしても、歴史的文脈を無視して、現代のモノサシを何とかの一つ覚え的にあてはめることの暴力性ですよね。五輪の小山田・小林事件の時にも同じことを思いました。だからといって、現代におけるセクシャル・ハラスメントの加害者をまさか肯定したり、ここぞとばかりにポリコレ批判をする人たちに与する気持ちも、申し訳ないが全くない。どちらもある種の政治的主張を「ホレ見たことか」と裏付けるためだけのものだから。だから、(同じことをしても)叩かれる人もいれば、叩かれない人もいる。「五輪批判をした人が、フジロックに出ているのは矛盾」というのも正論でもなんでもなく、質と量を吟味するとあまり矛盾はしていないと思うし、「だから五輪も問題なかった」とはならないと思うのだけれど。マスコミをやり玉にあげる人もいるけれど、それもカタルシスみたいなもので、マスコミの倫理を監視する目は必要であるにしても、誰かがお金を出して情報を動かすためのそもそもメディア(媒介者)でしょ、という話にもなる。まあとにかく、こんな愚かな議論ばかりやっていると、社会はどんどんつまらなくなると思う。デジタルにお金を生み出す新自由主義成果主義、数値主義がリスクマネジメントやコンプライアンスを強いる余り、石橋を叩いて渡らせる社会へと人々を平準化させてしまったということ。元々新自由主義は、途上国に分け前を取られた先進国が、少ない分け前を安全パイで奪うために生まれた経済システムだったわけで。それを導入した小泉政権以来、「変なおじさん」はブルドーザーで一掃され、名実ともにこの世からいなくなってしまった(同郷の志村さん、大好きでした)。あと新自由主義者はお金が第一なので、芸術が手段になっちゃうんですよね。タワマンのてっぺんにいても、そういう趣味にお金を使うことはなさそうな感じ。タダなら音楽聴くのかな。いや、これは私のような貧乏人の考えか(笑)この辺は新自由主義が生まれた歴史的文脈なのだろうけれど、残念としか言いようがない。

 

「おれはつかまったゴチャマゼの混乱に ねえきみ そいつにころされそうだ

 さて 人が多くいすぎるんだよ でみんなよろこばすのはむずかしいよ

 さて ボーシは手にもってさ きみ おれは旅にでかけるのさ

 さて 女を探してる 同じゴチャマゼ頭の女をさ

 さて おれのあたまはナゾの山 からだの温度はあがっていくばかり

 さて こたえをさがしているんだが でもだれにきいたらいいのかな

 でもあるきつづける まよいもつづく それでもあわれな足はとまりはしない

 じぶんのすがたをうつしてみたい 上みて 下みて 宙ぶらりん」

 (ボブ・ディラン「Mixed-Up Confusion(ゴチャマゼの混乱)」片桐ユズル中山容訳)

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アナログのノイズ(雑音)

*[コラム] アナログのノイズ(雑音)

 

毎日ハシゴしながらレコード屋に通っている人は一定数いるに違いない。というのも、(ここ20年来、私もほぼ2日と空けずそういう生活をしてきたわけだけれど)お客さんを観察していると、新しく継ぎ足されたレコだけをジャンルごと巧みに見ている人が常にいるから。とはいえ、全ジャンル満遍なく好きな人、というのはとても少ないような。私自身、今まで様々な音楽愛好家に出会う機会はあったけれど、オールジャンルの音楽ファンに出会ったことは手のひらの数より少ない。忘れずにその人を覚えているくらいだし。ロックだけ、ジャズだけ、ソウルだけ、クラシックだけ、昭和歌謡だけ…なんてのがほとんど。で、最近レコ屋に行って思うのは、やっぱりアナログが地道に踏ん張っているということ。盛り返している、とはいいませんが、間違いなく踏ん張っている。オークションなんかでも、ロックやソウルの名作がアメリカ/イギリス/日本のオリジナル盤で結構良い値が付くようになっているし、巣ごもり需要もあってか飛ぶように売れている。巣ごもりだとレコードで聴きたくなりますもんね。和モノだと一部のシティ・ポップ名盤ですね。

 

一方、フォークやGSあたりは昭和歌謡に取り込まれて以来、信じられないくらい安くなってきていて、往時の10分の1くらいですかね。数がないものはまだまだ高いですが。とはいえオムニバス含め、持っていなかったレア盤の類はここ1、2年の価格破壊でほとんど手に入ってしまった。あと、レコ屋では最近20代と思しきお客さんが普通にアナログを買っていたりもする。ソウル・R&Bヒップホップ系にちょっと多い印象。この風景には、90年代から00年代初頭までのクラブカルチャー全開な渋谷をちょっと思い出したりも。しばらく若いお客さんは店から消えていたんですが。デジタルなサブスク・Bluetoothイヤホン聴きの対極として、アンプ・スピーカーでアナログ・レコードという古色蒼然としたリスニング・スタイルを理解する、真の音楽好きがいるのかも。とはいえアナログ購買者のメインは40代以上で、私の少し下ぐらいの世代が下限なのかな。

 

私は20年以上レコードを集めてますけれども、昔は高かったから余計ですが、結構レコ屋でバトルの様相を呈することも多かったような。10年くらい前までは特にアメリカやカナダのフォークやシンガー・ソングライター系を集めていたので、セールなんかになりますと、人口が多かった団塊前後のオヤジ達(ちょうど私の親世代)がですね、その競争意識むき出しで、体当たりとかよくされました。汗まみれの二の腕を押し付けて「どけや」とか何度も言われましたし(笑)私も負けじと無言で押し返したり、買うレコ50枚積んで追い返したり…本当に大人げないですよね…今思い返しても恥ずかしいけれど、音楽を聴くために必死だった時代が確かにあったのだとは思う。でも客層が若返るにつれて、そういうお客さんも少なくなってきたのだけれど(今はソーシャル・ディスタンス…)、世間の音楽に対する飢餓感も同時に薄くなっていったという。飢餓感がときに流行や文化を創りますので、良し悪しと思いつつ。

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あとこれは自戒をこめて、のお話。職業柄、10代と接する機会も多いけれど、彼らが古い音楽に接するチャンネルは年々極めて少なくなっているということ。ビートルズの神通力もなくなってきて、せいぜいクイーンとかボン・ジョビとか。だって、私ぐらいの世代が親になってきてるわけだから。エリック・クラプトンもロック世代にとってのロバート・ジョンソンぐらい古い、といいますか、エレキを弾く10代でもクラプトンやジェフ・ベックという名前すら知らないという事実。そもそもギターよりダンスが人気、というのもあるし(個人主義的なバンド音楽に対して、ほっとくと集団主義に傾く日本文化との親和性はダンスの方が実は高い…ダンスでもヒップホップはちょっとバンドに近い気もするけれど…)。てなことで、常識を再度説明し直さないと、「わかるかな~わかんねぇだろうな~」式になってしまうということ。だからそうである限り、ロックもジャズ化する可能性があると思う。あと、基本J-POPしか聴かない、というドメスティック感覚も今の日本を覆っている(主観だけれど、今洋楽を聴いている珍しい10代は、英語が達者だったり、フラットな国際感覚をもった人が多いような気も)。そもそもJ-POPはJリーグ同様、日本回帰の保守ムーブメントだった、ということが、オリンピックの一連の騒動からもよく理解できたわけで(オリパラ組織委員会の会長、森の後任にJリーグ初代チェアマンの川淵が推挙されたりもしたし、渋谷系はやはりマジョリティに排除された…ただし渋谷系はリアルタイムでは鼻につく感じがした記憶もある)。J-POPを好んで聴いている人にそんな自覚は当然ないのだろうけれど、そうした文脈から生まれた消費構造に飲み込まれていることは確かだろう。

 

でも現代ならプレイリストがあるでしょ!という人もいるだろう。けれどもデジタルにはそもそも、基本欲しい情報しかアクセスしなくなる、という欠点がある。SNSでも好きな情報をフォローしていれば、そうした情報しか目に触れなくなってしまう。対してアナログは、デジタルの価値観で見ると無駄が多いけれど、自分の価値を広げるノイズ(雑音)を含んでいる。アナログ・レコードにはそもそもノイズ(雑音)や一回性(アウラ)があるし、良くない曲も耳にせざるを得ない(いちいち針を置き換えるのは面倒だし)。簡単に試聴もできないから、ジャケ買いして失敗することもある。でもそのような、良い曲に到達するための無駄な時間が、無駄ではなかったことに気付くこともある(何度か聴くとその良さに気付いたり、想像を膨らませてやっと手に入れた音楽に喜びを感じたり…)。

 

話を戻すけれど、アナログが踏ん張っている、というのは、人間が踏ん張っている、ということでもあり、時代に逆行しているようで、実は時代の半歩先を行っているような、なかなか尊いことだとも思えてくる。その価値を、「わかるかな~わかんねぇだろうな~」式ではなく、コスト感覚の思考でも腑に落ちる様に伝えていくこと…そこにいまは関心が向いている…てなことを、注射を2度打って、気分は朦朧としつつ書いてみた次第。

Lani Groves & Darlene Love

*[ソウル] Lani Groves & Darlene Love / Bringing It Home (Shanachie / 1987)

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これは気持ち良いアルバム!ラニ・グローブスとダーレン・ラヴの共演作『Bringing It Home』。ポップス・ファンにおなじみブロッサムズのダーレン・ラヴはフィル・スペクターが信頼を置いていたシンガー。クリスタルズの全米No.1”He's A Rebel”も実はダーレンが歌っていました。”The Boy I'm Gonna Marry”や” Wait Til My Bobby Gets Home”、” Why Do Lovers Break Each Other's Hearts?”とか良い曲ばっかり。妹さんは女性版ジャクソン・ファイヴのようなサウンドだったハニーコーンのエドナ・ライトでした。で、ラニ・グローブスの方は、70年代を中心にソウルからポップスまで様々なジャンルでほぼソウルフルな女性コーラス隊が入ってまして、その一角を構成していたお方。一番有名なのはスティーヴィー・ワンダーのバックボーカルを務めていたこと。参加作は多すぎて書けません(笑)あと、ソングライターとしても、デニース・ウィリアムズなどで知られる” That's What Friends Are For”やフランキー・ヴァリ、イモーションズで知られる “How'd I Know That Love Would Slip Away”なんかを書いている。ただ、ソロ名義もいくつかあるダーレンに比べて、ラニのリーダー作はニュージャージーのインディ・レーベルShanachieからリリースされたコレしかない。

 

とにかく選曲が素晴らしくて、インプレッションズ(カーティス・メイフィールド)の”Its Alright”、タイロン・デイヴィスの” If I Could Turn Back The Hands Of Time”、ビートルズの”Let It Be”、ビル・ウィザースの”Use Me”、ジェイムス・ブラウンの”It’s A Man’s World”、フォンテラ・バスの”Rescue Me”、ジャクソン・ファイヴの”I’ll Be There”…タイトル曲はサム・クックですね。グイグイ来る生バンドの音も、リリース年にしては80年代っぽさはなく、むしろ60年代に近い普遍性がある。この辺がインディー・レーベルから出たブルーズと同じで、売り気が無くて良い。そして何よりゴスペル仕込みの圧倒的な二人の声が◎。

Marc Cohn And Blind Boys Of Alabama

*[SSW] Marc Cohn And Blind Boys Of Alabama / Work To Do (BMG / 2019)

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これも積読CDの中から、しかも2年前だった…音楽に申し訳ないですね。ただコレ、買ってしばらく、よーく聴いていた。アメリカの特筆すべきシンガー・ソングライター、マーク・コーンの2019年の新作『Work To Do』。日本では悲しいかな、まっとうに取り上げられることはなかった。この新作、ゴスペル・グループのブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演作。ただし共演の新曲はゴスペルの”Walk In Jerusalem”、マークが手掛けた”Talk Back Mic”と表題曲”Work To Do”の3曲。しかしどうにも素晴らしい。苦みばしったソウルフルなマークの喉は絶好調だ。ブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演がこんなにハマるとは…アメリカン・ミュージックのダイナミズムと気品を表現できるマーク・コーンの才能は、彼のデビューを後押ししたクロスビー&ナッシュ、ジャクソン・ブラウンジェイムス・テイラーという顔ぶれからも理解できよう。

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後半の7曲は、ブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演ライブの模様。ライブと言っても音はすごく良い。マークの怒涛のベスト選曲”Ghost Train”、”Baby King”、”Listening To Levon”、”Silver Thunderbird”、”Walking In Memphis”、”One Safe Place”に新しい命が吹き込まれる。”Amazing Grace”のカバーも感動的だ。マークも世代的にいえば、ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』における、ステイプル・シンガーズのゴスペルの凄みを経験しているはず(”Listening To Levon”はザ・バンドのリヴォン・ヘルムに捧げられた楽曲だった)。この辺りがコラボレーションのヒントになったと想像できる。

 

プロデューサーはマークをメジャー・デビュー当時からアレンジや演奏などで支えてきた、ジョン・リヴェンサール。彼はいま、ロドニー・クロウェルと別れたカントリー歌手ロザンヌ・キャッシュと幸せに暮らしている。ただリヴェンサールはユダヤ系、ということで保守的な米カントリー界、とりわけ父のジョニー・キャッシュにはそれなりの衝撃を与えたみたいだけれど。で、そのジョン・リヴェンサールとマーク・コーンががっぷり四つで手掛けたのがサザン・ソウルの大御所ウィリアム・ベルが40年の時を経て2016年にスタックスに復帰した『This Is Where I Live』。日本のメディアではベルの復帰作をジョン・リヴェンサールが手がけた…というばかりでマークが全面参加したにもことにほぼ触れられず残念だったけれど、この作品は感動した。優れたソングライターでもあるウィリアム・ベルとジョンとマークが多くの曲を共作している。レヴォン・ヘルムの娘エイミーもボーカルで参加。ウィリアム作のブルーズの名曲”Born Under A Bad Sign”の再演もあるが、声の衰えは全くといっていいほど、ない。グラミーのベスト・アメリカーナ・アルバムを受賞して、グラミーではゲイリー・クラーク・ジュニアと”Born Under A Bad Sign”を演奏する一幕もあった。そういえばジェシ・ウィンチェスターのカバーが1曲入っているのは、2014年に亡くなった彼へのトリビュートだったのか…今夜も音楽の旅が終わりそうにない。

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John Fogerty / Fogerty’s Factory

*['60-'70 ロック] John Fogerty / Fogerty’s Factory (BMG / 2020)

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台風が来たかと思えば、お盆も雨ということでスカっとしませんが。近所で被害の大きい所もありました。お見舞い申し上げます。昨日は2週間前のリベンジで釣り決行しましたが、台風通過後の超強風により立てないレベルで、AMは竿を出せず。水の被害もある時期ですから無理をせず、木になったつもりで風に吹かれてじっと待ちまして。午後は激しい暑さながら結構釣れました。天気とにらめっこの8月になりそう。

 

本で言えば積読状態になっているCDをごそごそやっていたら、コロナのステイホーム期に出たジョン・フォガティの『Fogerty’s Factory』を発見。たぶん1回しか聴いていない(ごめんなさい)。最近こんなのばっかりなんですが。

 

コレ、フォガティの息子たちと自身の曲などをレコーディングしたというファミリー・レコード。プロデューサーのジュリー・フォガティというのはジョンの妻ですから、まさにフォガティ家のプロデューサーということだろう。そしてその間に生まれた息子タイラー、シェーンと娘ケルシーが演奏に加わっている。流石のBMG、メジャー・リリースということでボブ・クリアマウンテンのミックス、ボブ・ラドウィグのマスタリングという力の入りようだけれど、グダグダの演奏もあったりして、それはご愛嬌。本来はYouTubeで聴き流すくらいの音源なのかも。ただ、高校の学園祭バンドにジョンが飛び入りしたような、あのグイグイとノリを生み出すギターと変わらぬ迫力のあるボーカルが加わるだけで、CCRになっちゃうのがすごい。コロナのシチュエーションの中で、ジョンのメッセージが入ったりもするライブ感も、時を隔ててある種の記憶・記録になるのかもしれない。ビル・ウィザースの”Lean On Me”とか、スティーヴ・グッドマンの”City Of New Orleans”のカバーが結構耳に残った。もちろん”Centerfields”(ドジャー・スタジアムでの無観客ライブ録音)、”Have You Ever Seen The Rain”、”Proud Mary”、”Bad Moon Rising”、”Fortunate Son”なんかも入ってます。

 

ステイホームにフィットしたジャケットはCCRのアルバム『Cosmo’s Factory』のパロディ。『Cosmo’s Factory』は1970年のアルバムだから、50周年の年に出たのが今作だったということになる。ちなみにコスモス・ファクトリーという名古屋のプログレ・バンドもいましたね。

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The Challengers / Vanilla Funk

*[ソウル] The Challengers / Vanilla Funk ( GNP Crescendo / 1970)

 

世界大運動会第1弾もそろそろ終了なのですね。なんだか早いような…全く関心を持っていないことが露呈してしまうけれど。新国立とか、よく駅を通り過ぎてますけれど、全くそんなイベントが行われている雰囲気を感じない。というか東京に住んでいる身の回りの人で、関心を持っている人に会ったことがない。スポーツ好きな人とか、退職されて時間のある方とかは観ているのだろうか。期間中、酷暑の道すがらお二人だけボランティアの方とすれ違ったけれど、もののあはれを感じました。こんなことを言って嫌な気分になる人が居れば申し訳ないけれど。私の好きな音楽で言えばですよ、世界中のミュージシャンが一堂に会する歴史的ライブ(存在したらそれはそれで微妙ですが…)のために、スポーツ大会が中止になれば、素直に楽しめないと思う。運営側とそれを他人事のように下支えする国民国家の魂胆が悪いですよね。古代ギリシアから近代に至るまで長らく中断があり、再開してからもたいした歴史を持たない大会ですから、公金を入れるのはそろそろやめてもいいのではないかと思ってます。やりたい方のクラウドファンディングでやるとかね。

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最近のマイブームだったソウル関係の落穂拾いと関連して、インストも結構集めております。日本で言えば田中清司のドラム・カバーものから、石川鷹彦がフォークの名曲を演奏するといった趣向の盤まで(笑)なんだか聴いていて気持ち良いんですよね。メロディの良さが際立つというか。もちろん良し悪しはあるんですが。今日取り上げるのはチャンレジャーズ1970年の『Vanilla Funk』というレコード。新品同様のカット盤を50年の時を経て激安で入手しました。チャレンジャーズといえば、サーフ・インストで知られるグループ。ビリー・ストレンジとの共演盤もありました。ドラマーのリチャード・ダーヴィは”Mr.Moto”のオリジネイターであるベルエアーズ(Belairs)のメンバーだった。ただ本盤にサーフ色はなく、ニューソウルとか、60年代後半のニューロックの動向を反映させた選曲になっている分、フリーソウルレアグルーブ界隈で取り沙汰されたと記憶している。ヤング・ホルト・アンリミテッドの”Soulful Strut”が白眉だろうか。他にもバッファロー・スプリングフィールド”For What It’s Worth”をソウルフルな女性コーラスを交えて演っていたり、私の大好きな”I’m Gonna Make You Love Me”やザ・バンドの”The Weight”、ボックス・トップス(ウェイン・カーソン)の”Soul Deep”のグルーヴィーなカバーもある。ちなみにタイトル曲の”Vanilla Funk”はアレンジャーのデイブ・ロバーツと、ザ・セクションのキーボーディスト、クレイグ・ダージとの共作。明らかに、有名曲のハード・ロックなアレンジで人気を博していたヴァニラ・ファッジ(Vanilla Fudge)のもじりですね。