*[ロック] Julian Lennon / Jude (BMG / 2022)
気付けば肌寒い季節になってきまして。頂いた原稿のお仕事色々やっていたら1年ぐらい、暇になる隙間がなかった。暇があろうとなかろうと釣りには行ってしまうから、更新は遅れるという悪循環にはまっていた。しばらく前に疲れ切ったところでコロナにもなりましたね~こちらは思った以上結構しんどく出てしまい、風邪じゃないということを体感しました。
さて、積まれている新譜の中から、あのジュリアン・レノンの11年ぶりの新作『Jude』を。レコード原理主義者の私はもちろんLPで入手。ビートルズ、ジョン…おそらく亡霊のような幼年期の想い出と戦うジュリアンも59歳といういい年齢になられて。父ジョンと瓜二つの(先妻シンシアとの)息子ジュリアンはジョンの死後1984年にデビュー。デビュー盤でフィル・ラモーンがプロデュースするなど相当お金をかけてもらったのだと思うけれど、結構売れた。こちらはサイン入りLPという家宝のひとつ。
ただしその後、人気は凋落して、レコード会社との契約は切れる。きっと苦労もしたはずだ。大学生になりたての頃だったか、1998年に『Photograph Smile』というパーソナルな作品が久々にリリースされて、Avexの日本盤が新譜レコ屋でも結構プッシュされており、買いました。それを聴いてビックリ!これは天才だと思いました。ジョンで言うところのプライマル・スクリーム療法ではないけれど、父に捨てられた自身の不幸な出自と隠し切れないビートルズの幻影と戦う内省的な作風に、一気にファンになってしまった。”Day After Day”がとにかく素晴らしい曲!2世ミュージシャンの括りでいまだに語られるのは不幸だとも思う。2世で首相補佐官になったどっかの人とはデビュー時に持つ資質は違っているものと想像されます。知らんけど(笑)
2000年代以降の作品。2009年のEP『Lucy』と、2011年のアルバム『Everything Changes』。
新作に話を戻すと、プロデュースはジュリアン自身と彼のバンドのギタリスト、ジャスティン・クレイトン。10曲の内すでに4曲はYouTubeで先行配信されていた。冒頭”Save Me”、”Freedom”や”Stay”あたりはジュリアンの真骨頂かと。”Love Don’t Let Me Down”なんていうビートルズ引用もあるから、すでに吹っ切れてる部分はあるのかも。ポール・マッカートニーが哀れなジュリアンのために作った”Hey Jude”をアルバム・タイトルに持ってきているくらいだし。メロディで言うと、”Not One Night”やOasisっぽいブリット・ポップ風味を現代的に展開させた”Lucky Ones”が印象的だった。ラストの”Gaia”はジュリアンと同時期に世に出たブルー・ナイルのポール・ブキャナンがゲスト参加している。LPは、針飛びを恐れてかわからないけれど、少々音圧低めの印象もあったが、ジャケのトータルの雰囲気はデビューから3作目までのモノクロを踏襲しており、とてもよい。
最後に、ウクライナ戦争の最中の今年4月にアップされた、Extremeのヌーノ・ベッテンコートと演奏した”Imagine”を。