いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
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『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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Paul McCartney / Egypt Station (Capitol / 2018)

markrock2018-10-10


先行シングルの一瞬ちょっとダサイ感じの”Come On To Me”辺りの先行シングルをとってきて、「才能が流石に枯渇した」だとか、「前作『NEW』に比べて地味」だとか、好き勝手言っているヒトビトも多いポール・マッカートニーの新作『Egypt Station』。たぶんそう言うお方はYouTubeや試聴止まりでまともに聴いてないんだろうな、とここは言い切ってしまおう。第一誰だと思ってるんですかね。斎藤さんだぞ、っていう感じなわけじゃないですか(笑)。


冗談はそれくらいにして…76歳にして、フレッシュで、良く出来たポップ・アルバムだと思う。しかも16曲、ボーナス入りのデラックス版だと18曲。枯渇したミュージシャンはこんなに曲書けませんので(日本やらブラジルやら、ツアー中に書いた曲も!)。しかも、にわかに一瞬ダサい感は否めなかった”Come On To Me”も、こうしてLPで大音量で聴いておりますと、ヘフナーがブリブリ言っておりまして、ビートルズ直系のポップ・ロックと認識。さらにはマッスル・ショールズ・ホーンズの賑やかしからエレクトリック・シタールまでが入ってくるという遊びゴコロ満載なアレンジで、無茶苦茶良いではありませぬか。スタンダードなバラードの”I Don’t Know”もビートルズの新曲だと見まごうばかりだし、”Happy With You”のようなアコギの3フィンガーによる小品もホワイト・アルバム的であったりもして。”Who Cares”はもはや伝統芸能的なロック。サビはウイングスをちょっと思い出したり。ポールのお父さんの口癖を歌にした”Do It Now”は、父との想い出を振り返るようなノスタルジックな仕上がりだと感じた。

パレスチナ問題を念頭に置いた”People Want Peace”の良くも悪くもひねりのないまっ直ぐなメッセージもポールらしい。ジョンと対照的に素直な人なのだと思う。組曲的な”Despite Repeated Warnings”は環境問題についてのニュースの警句をタネに、過ちを繰り返す愚かな人間に"Yes We Can Do It Now"と呼びかける。これはどう考えても力作。”イチバン”の連呼が強烈な”Back in Brazil”はポールの(いや西洋人の)エキゾティシズムがないまぜになっていると思ったけれど、サウンドは思いのほか若々しい。そして一番今っぽい音に仕上がったのがワンリパブリックのライアン・テダーと共演した”Fuh You”。ただ、これをアルバムのリード・トラックとして初めから押さなかったのは、ポール感が薄いからかも。売れる音ながら、ポールじゃなくても出来る音だったという。でもこういう曲が1曲入っているのも重要。ちなみにこの曲以外、基本的に全編のプロデュースを務めるのはグレッグ・カースティン。この人、リトル・フィートの故ローウェル・ジョージの娘、イナラ・ジョージとザ・バード&・ザ・ビーを組んでいた人。ザ・バード&・ザ・ビーは当時アルバム買ってよく聴いてました。気付けばアデル、ピンク、シア(Sia)なんかのプロデューサーとして有名になっている。

それにしてもデラックス版のLPはちょい高(輸入盤でも4500円くらい)で、2曲少ない2枚組通常盤が輸入盤で3500円くらい。後者を買ったのは正直完全なミス。いいんです、いずれCDで買い直しますから。ちなみにLPの音は良く、プレスもしっかりしていた。当たり前だけれど、デカイ音で、それなりなスピーカーでドカンと聴かなきゃこうした音楽は意味ないですね。YouTubeでチマチマ聴いてちゃダメですわ。ポールの書いた明るいジャケもなかなかよい。ジョージ・ハリスン『ゴーン・トロッポ』的にも思えたり。エジプト・ステーション、というタイトルはちょっと唐突だったけれど、エキゾチックな感じや未知のウキウキ感とつながるイメージだったのかな。もちろん来日『Freshen Up』公演、金欠になっても行かざるを得ません!