いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

f:id:markrock:20190212213710j:image
いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

f:id:markrock:20190212212337j:image
[NEW!!]極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」が書籍化されました。 『哲学するタネ【東洋思想編】――高校倫理が教える70章』(石浦昌之 著)2018年9月発売!! ●石浦昌之著 ●定価:本体2500円+税 ●A5判(並製)384頁
詳細はココをクリック
注文はココをクリック

【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
ココをクリック

Paul McCartney

markrock2013-11-03

/ New ( HEAR MUSIC / 2013 )


ルー・リードの訃報だとか、最近なかなか受け止めきれない音楽ニュースが多くって。大好きだったベテラン・ミュージシャンがこれからどんどん鬼籍に入るだろうという現実。判っているんだけれど、冷静でいられる自信がどうにも無くて。


そんな中で聴く、来日を控えたポール・マッカートニーの新作。ネット上でも一寸見た限り賛否両論あるようで。マッカートニー?か!ってくらいの酷評もあったけれど、もはや音楽業界の未来など色々考えると、そんなに目くじらを立ててる場合でもないかな、と思ったり。何しろビートルズのメンバーが、70歳でいまも現役バリバリ、しかも『NEW』なんてタイトルの新作をリリースしてるんですから…それだけで有り難い。「ポールが動いた!」ぐらいで感動しなきゃいけない気がするんですが。

こんなことを言うのも、戦後、ロックンロール以降のポピュラー音楽がマスを巻き込んだ一大ムーブメントに成り得たのは、やっぱりベビー・ブーマー世代の存在があったからだと改めて思っているもので。人口ピラミッドを見れば本当に良くわかる。団塊世代、つまりビートルズ世代のフェイドアウトと共に、祝祭的なロックのお祭りも全世界的にフェイドアウトしていく…悲しいことだけれど、それは致し方ないことと思っているのだ。だから、どうせなら、このお祭りを楽しんでおこうかな、というわけで。11月に控えたビートルズの”新譜”『On Air - Live At The BBC Volume 2』(既発音源たったの3曲)(http://www.youtube.com/watch?v=RkPZH4MYCKM)も含めて…


さてさて、今作の内容に移ろう。2012年の前作『Kisses on the Bottom』はロック以降の世代には評判が悪かったスタンダード集(個人的にはとても良かった…)。今回はオリジナル、ってことで期待は高まる。今回借り出されたプロデューサーは4人。アデルで当てたポール・エプワース、かつてエイミー・ワインハウスを手がけたマーク・ロンソン、アクースティックな独特の音作りで60年代のベテランとの相性も良いイーサン・ジョーンズ(『Get Back』ビートルズと因縁があるグリン・ジョーンズの息子。この人は親父と肩を並べる業績を作ったと思う。初めて名前を知ったのはスティーヴン・スティルスの息子クリスの『100 Year Thing』(1996)だけれど、そこから全くブレてない。)、そして5人目のビートルズジョージ・マーティンの息子ジャイルズ・マーティン。プロデューサーの色を楽しむのも良いかもしれない。


何度か聴くと、ポール・エプワースがプロデュースした1曲目”Save Us”とかジャイルズ・マーティンの手がけた打ち込みモノ”Appreciate”あたりはヤハリ聴く人によっては賛否両論なのかもな、と思えてきた。ポール的には新境地、って感じなのかもしれないけれど、割とエイティーズ的というか、ベテランにありがちな旧い感じもして。それ以外は結構近作でも出色のソングライティングだと思うんだけどな。


個人的にはやっぱりマーク・ロンソンが手がけた2曲”New”と”Alligator”がビートルズの残り香を感じさせる好曲で軍配をあげたい。そしてこれぞイーサン・ジョーンズ、というような”Early Days”もリバプール・デイズを思い起こさせるセンチメンタルな佳曲だった。


そしてそして、買うならボーナス付きの盤かも。ジョージの遺作に入っていそうな”Turned Out”やピアノ弾き語りテイストの”Scared”なんて、なんで本編に入れなかったんだろう、ってな仕上がり。アコギのブルージーなロックン・ロール””Get Me Out Of Here”もオールド・ファンに文句を言わせない作りだし。新境地、“New”と思われるためには本編オミットも致し方なかったのだろうな。


90年代以降のポールというと、やっぱり分岐点になったのは1997年の『Flaming Pie』だろう。アンソロジー・プロジェクトやジェフ・リン含めてのビートルズ名義での新曲やらを経て、再びアクースティックでパーソナルな作品を紡ぎ出すようになったポール。ピアノだけじゃなく、マーティンのアコギをつまびいたりジャカジャカしたりして作ってるんだろうな、という曲が毎度アルバムに入っていて、今までの作風の焼き直しみたいなものも含めて、この人にしか作れないメロディ・ラインには毎回ニヤリとさせられる。その流れからすると、今作は割と演出過剰で、『Driving Rain』の失敗を思い出すような、上手くポールをコントロールし切れなかった作品のようにも思えるけれど。いやいや、はじめの話に戻りますが、やっぱり目くじらを立ててる場合でもないかな、ということで!


でも今回タイトル曲”NEW”みたいな新鮮な楽曲をまだ生み出せると判ったわけだし、ブライアン・ウィルソンとタイマン張るようなですね、やっぱり本家だな、と思わせてくれるサージェントの再来みたいなアルバムをですね、聴いてみたいなとも思うんですが、どうでしょう。