今聴いているのはスティーヴ・マリオットのソロ『Marriott』。スティーヴ・マリオットは1991年に44歳という若さで不慮の事故で亡くなった。もうちょっと長く生きていれば、キャリアを総括する名作を再び生み出せたのにな、といまだに思う。最近はハンブル・パイなんかも、地味にアメリカ盤オリジをLPで集めていたりする。
スモール・フェイセス〜ハンブル・パイと活躍したイギリスの才人なれど、器用の対極にあるようなイメージもある。だがしかし本作は豪華ゲストが大挙参加し、ソロとして唯一の最高傑作と言ってもいいだろう。しかもブリティッシュ・サイドとアメリカン・サイドでA・B面を分け、後者ではアメリカン・ソウルへの愛情を露わにしている。ブリティッシュ・サイドではハンブル・パイのグレッグ・リドレー、Tレックスのミッキー・フィン、そしてキング・クリムゾンのイアン・ウォーレスが参加。ロバート・プラントも憧れたというメタリックなシャウトも好調で、ハードなロック・サウンドを聴かせてくれる。ボビー・ウォマックでお馴染みの”Lookin’ For A Love”をハード・ロック化しているのも英国的解釈で面白い。”Wam Bam Thank You Ma'am”はスモール・フェイシズの再演。”Help Me Through The Day”はレオン・ラッセル作品でフレディ・キングが初演。
で、どっちが好きか?っていうと当然好みはB面のアメリカン・サイド。ブリティッシュ・ロック一辺倒な人ってリアルタイム世代に結構いて、そういう人は大抵ハード・ロックに行っちゃうんだけど、こういうのは受け入れられないみたい。でも、むっちゃファンキーだし、尖ってた時代のデヴィッド・フォスターがキーボードと弦・ホーンのアレンジをやっているし。ギターはレッキング・クルーのベン・ベネイ。ドラムスはマイク・ベアード。レッド・ローズのペダルスティールに名手デヴィッド・スピノザのギターソロも入ったり。清志郎がMGズをバックにがなる、みたいな「力み」が最高。黒人音楽への憧憬と、承継と。
ジャケにはなぜかドラムスのイアン・ウォーレスのサインが!クリムゾン関係で来日していたから、その頃に誰かがもらったのかな。