/ How To Become Clairvoyant ( 日本コロムビア / 2011 )
夢中になって聴いているマサカの新譜。言わずもがな、その主はアメリカン・ロックの最高峰、ザ・バンドのリーダーであり、ギタリストであるロビー・ロバートスンだ。寡作の人としても知られていて、映画として残された解散ライブ、ラスト・ワルツで1976年にザ・バンドが終焉を迎えて以来、今までに発売されたソロ・アルバムはたったの4枚。だいいち、初のソロアルバムですら1987年だったわけだ。
個人的には、新作があったとしても奇をてらった作りのものやヒップホップを導入したりと時代に阿った作品になると踏んでいたけれど、ロバートスンをプレイヤーの表舞台に呼び戻したのが、かつて共作もしているエリック・クラプトン(今作では7曲に参加、3曲を共作)だったのは大きい。成熟したアメリカン・ロックと言ってしまうのが陳腐な程の充実作だ。ピノ・パラディーノとイアン・トーマスという最強のリズム隊をバックに、ピッキング・ハーモニクスやガット・ギターを交えたギター・ソロを弾いている。いやはやまだちゃんと弾けるんですね、といったら怒られるけれど、プレイヤーとしては事実上の引退状態だったロビーだから、こうして生身のプレイを聴けるのは嬉しいという他ない。
ザ・バンド風味のバラード”When The Night Was Young”にグッと来る向きは多いはず。あと気になったのは”This Is Where I Get Off(“ここが降りる場所”)” 。ザ・バンドを解散した後、リヴォン・ヘルム、リック・ダンコ、リチャード・マニュエル、ガース・ハドスンという残されたメンバーで再結成したバンドに頑として加わることないまま、二人のメンバーを失ってしまった。彼が失われた埋めることの出来ない時間を受け止めながらも、私は車を降りて別の道を進んだんだよ、という後悔がないことを再確認させるメッセージと受け取った。
ところでタイトルの” Clairvoyant”、辞書で調べてみると「千里眼」「透視力」ということ。「千里眼になるには」というのが曲のタイトルというわけ。
クラプトン以外のゲスト参加は、スティーヴ・ウィンウッド、ロバート・ランドルフ、トレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)、トム・モレノ(レイジ・アゲンスト・ザ・マシーン)ら。今作に関しては日本盤の方が輸入盤より先の発売、しかもボーナストラック("Won't Be Back"のデモ)なので、日本盤がいいかもしれない。