いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 追悼トム・ペティ

markrock2017-10-03


トム・ペティが亡くなったとの報。にわかに信じ難くて。だまされた人も多かったウィリー・ネルソン死亡説みたいに、デマであってくれればいいのにと思った。ただでさえウォルター・ベッカーやグレン・キャンベルとか、大好きなミュージシャンの訃報が相次ぐ中で。今月67歳の誕生日を迎える間もなくペティまでもが亡くなくなってしまったなんて…まだ若かったのに。矢野顕子さんのこんなツイートを読んで、本当だったと確信した。


「先ほどツイートしたTom Pettyが亡くなったの報。私がツイートした時点で確実なソースからではなかったので消しましたが、今さっきハートブレイカーズでドラマーを長いことやっていたスティーヴフェロウニから、トム亡くなったよ、と。。。」



矢野顕子の1976年のファースト『Japanese Girl』あがた森魚『日本少年』に呼応したものだと聞いていたけれど、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのセカンド・シングル”American Girl”が念頭にあったのかな、なんて一瞬思って調べてみたけれど、レコーディングされたのは矢野顕子のアルバムの方が4ヶ月くらい早かった。でも同年のデビュー、同期なのでした。

トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのデビュー盤はシェルター・レーベル、デニー・コーデルのプロデュースだから、王道スワンプ・ロックの末席に位置していたことになる。そりゃあ新世代のアメリカン・ロックの牽引役になったわけだ。とはいえ当然ブリティッシュ・インベイジョンも通っていて、サンダークラップ・ニューマンの”Something in the Air”のカバーもハマっていた。だから、トラベリング・ウィルベリーズジョージ・ハリスンと共演できたのは嬉しかったろうな、と思う。ウィルベリーズや、ザ・バンドを超える程の迫力だったハートブレイカーズとの共演ツアーではボブ・ディランの傀儡に思えるくらいで、フォーク・ロックのスタイルを継承する立ち位置も伝わった。ディランといえば、正統ディラン・フォロワーのザ・バーズのロジャー・マッギン自身がペティの”American Girl”をカバーしているんですよね。先輩が後輩にお手本を見せているような奇跡の交歓だと思えたり。1991年の『Into The Great Wide Open』ではロジャーがコーラスでゲスト参加していたり。バーズといえば今年出たばかりのクリス・ヒルマンの新作『Bidin’ My Time』トム・ペティがプロデュースしていたのも記憶に新しかったのに。


個人的には2015年のアルバムに入れた”なんでこんな目にあわなくちゃならないんだ”という曲が「ジェフ・リンがプロデュースしたトム・ペティ・トリビュート」だったのでした。伝わらないマニアックさですみません。リアルタイムでいうと1994年のアメリカーナの先駆のようなソロ大名盤『Wildflowers』、そしてウィルベリーズの続編の趣の1989年の『Full Moon Fever』は特によく聴きました。しゃくりあげるような粘っこい味なボーカルとシンプルだけれど巧みなソングライティングが何と言っても魅力で。『Full Moon Fever』では”Free Fallin’”と”I Won’t Back Down”ですよね。”I Won’t Back Down”は9.11のテロの追悼ライブで歌われ、「オレは打ち負かされない」…ってフレーズがなんか愛国的に聴こえてちょっと物騒に思えたのを思い出す。2014年にイギリスのSSW、サム・スミスが”Stay With Me”を世界的な特大ヒットにしたけれど、明らかに”I Won’t Back Down”のサビと同じメロディでした。


あとは2009年に出た4枚組のハートブレイカーズ時代の48曲入『The Live Anthology』が音も良く、愛聴しました。前身マッドクラッチ時代の音源も含む6枚組ボックス『Playback』も好編集盤で必聴だと思う。『Hard Promises』の1曲目”The Waiting”なんかも初めて聴いたときの感動は忘れられない。リンダ・ロンシュタットのカバーもとても良かった。



うーん、5人のうち右から3人がもうこの世にいないだなんて…

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