昨日グレン・キャンベルのことを書いた後、棚を見ていたら見つかった盤。すっかり存在を忘れていた。グレン(歌手)、ジミー・ウェッブ(作曲家)とアル・デ・ローリー(編曲家)というのが、いわば坂本九における六・八・九コンビ(永六輔・中村八大)みたいなものだった。この盤はレッキングクルーのピアニストだった、そのアル・デ・ローリーのプロデュース盤。70年代後半といえばレッキングクルー組も世代交代で流石に落ち目だったわけだけれど、メロウなディスコ〜AORに挑んだ本盤はオハイオのローカル・レーベル産ながら、腐ってもアル・デ・ローリー!優れた仕上がりで。レコーディングはカリフォルニアのスペクトラム・スタジオ、そしてカリフォルニア・バーバンクのワーナー・スタジオが使われており、ミックスではあのゴールド・スター・スタジオも使われている。
そもそもリリースのGRRミュージック、このジョージ・デフェの盤しかリリースしていない模様。ローカル歌手(あるいは俳優かも)のジョージ・デフェにとってコレが唯一のアルバムで、そこからは3枚シングルが切られている。アル・デ・ロリーとジョージ・デフェの共作”European Nights(Nothin’ Fits Me Like You,Babe)”は洗練されたごきげんなディスコ・サウンド。ジョージは軽みのあるホワイト・ソウルを聴かせてくれる。イーヴィ・ザンズの”Love Makin’ Love To You”も良い時期のシカゴ(ロバート・ラムもの)を聴いているような気分にさせてくれて。この曲はイーヴィの1975年盤『Estate Of Mind』(デニス・ランバート&ブライアン・ポッターのプロデュース)に収録されていた。
ビリー・ジョエルの”New York State Of Mind”やラスカルズの”Girl Like You”のカバーもあって、後者は思ったよりも溌剌とした若々しさがあった。このジョージさん、ジャケ写を見る限りでは若造りをしているけれど、当時でもソコソコ御歳を召していらっしゃるような。そしてそう、私が引っかかったのはグレン・キャンベルの座付き作家と言ってもよいジミー・ウェッブの”Where The Universes Are”がB面最後に収録されていること。ジミーの1977年のソロ『El Mirage』のB面1曲目を飾っていた壮大なバラード。『El Mirage』の方は、流石のウェッブもソロで売れたい気持ちが逸り、ビートルズやアメリカを手がけたジョージ・マーティンにプロデュースを依頼。だから、ここにアル・デ・ローリーの本気を見るんですよね。オレならこんな風にアレンジできるよ…って。何と言っても弦のアレンジだけで往年のグレン・キャンベルの"Wichita Lineman"や"By The Time I Get To Phoenix"を彷彿とさせてくれるんですから。
参加セッションメンではジミー・ウェッブのソロにも参加していたフレッド・タケットの名前も。アルバム・タイトルはNo Guts…No Glory! だなんて、ちょっと脳天気でお茶目な感じもするけれど。