あれ?こんなのあったっけ?といって感じのデル・シャノンの盤。1961年の”Runaway”以降、飛ぶ鳥を落とす勢いで”Hats Off To Larry”諸々をヒットさせていったものの、ビートルズ、モンキーズ以降のポップシーンの中ではちょっと先輩だったわけで、2歳下のロイ・オービソンなどと同様、埋没していく。で、1966年にリバティーよりリリースされた『This Is My Bag』、スナッフ・ギャレットのプロデュースで若者達を掴もうと、シンガーに徹して同時代のヒット曲を取り上げている。その歌声には後のロック世代にも印象を残すインパクトや泣きがあって、個性的だし、とても上手い。”Kicks”、”Lightnin’ Strikes”、”When You Walk In The Room”…結構いいぞ、という。B面の”Everybody Loves A Clown”でそうか、と気付くのだけれど、ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのプロダクションで演っているというわけ。アレンジャーはニック・デカロとレオン・ラッセル。演奏はレッキング・クルーでしょう。ロイ・オービソンの”Oh, Pretty Woman”は完コピのようなアレンジで、ロイそのもののように歌う。これにはビックリ。後々デル・シャノンはイギリスのミュージシャンに慕われていたこともあり、ジョージ・ハリスン、ジェフ・リン、そしてボブ・ディラン、トム・ペティからなるトラベリング・ウィルベリーズに亡くなったロイ・オービソンの後釜として加入することになる("Runaway"の再演をレコーディングするも、デルの自殺でアルバム『Vol.2』のリリースは幻となる)。その理由が今にしてやっと、理解できた。