いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

f:id:markrock:20190212213710j:image
いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

[NEW!!]2022年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚のライナーノーツ寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230129183945j:image
[NEW!!]2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)のライナーノーツ寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20221230235618j:image

Tom Petty & The Heartbreakers

markrock2009-12-19

/ The Live Anthology ( Reprise / 2009 )


しばらく休止してましたがこの辺りで再び。昨日は古くからの友人のフォーク歌手、松田亜世くんのライブに遊びに行って来た。ギター(稲葉智)、ベース(山西宏樹)、キーボード(サントリイ坂本)、カホン(安部徹)でのバンド編成でたっぷりと、成熟した日本のフォークな世界を歌い綴ってくれて。途中、渡辺かおる、甲斐バンドの松藤英男といったゲストも参加して、唄い納めに相応しい楽しいライブに。凄く良い唄うたいですので、是非皆様にも足を運んでいただけたらと思います。それにしても松藤さん、無事に家に帰れたかな…


Asei Matsuda official Homepage 「夜明けの月」
http://homepage1.nifty.com/asei/
公式ブログ 松田亜世の『吉祥寺発金沢弁』
http://asei.cocolog-nifty.com/


「ハートブレイカーズは初めからライブバンドでやってきた。スタジオ・アルバムによってグループのストーリーが語られるけれど、我々はステージの上で生きてきたのであって、その場所こそが血が滴る場所なんだ。」


こんなことをトム・ペティ自身がライナーに書いていたけれど。確かに百戦錬磨のライブ・バンド。今まで『Pack Up The Plantation - Live !』しかライブ盤が出ていなかったと言うのも不思議なくらい。それにしても今回の4枚組48曲ってのは予想すらしていなかったボリューム。もうおなか一杯を飛び越えた分量になっている。輸入盤1枚みたいな値段で手に入れたから、DVDやボーナス・ライヴ・トラック、ブルーレイ・ディスク、LPが入ったデラックス・エディションまでは必要ないかな。


時期的に言うと、既発の1985年のライブ盤の前後。デビュー間もない1980年〜1983年くらい、それと1993年〜2007年辺りの録音が目につく。代表曲も大体入っていて。Disc3”American Girl”はそう言えばトム自身のアイドルだったはずのロジャー・マッギンがソロでカバーしたこともあった。リンダ・ロンシュタットがカバーしたDisc4-10”The Waiting”なんてのもカントリーな色合いがアメリカン・ロック好きには来るんじゃないかな。さらに、9.11テロ追悼番組でも演奏されたDisc4-6”I Won’t Back Down”はアクースティック・アレンジで収録。元々、トラベリング・ウィルベリーズの余波を利用してジェフ・リンと作ったトムのソロ『フル・ムーン・フィーヴァー』に収録されていた曲だが、ハートブレイカーズにとっても重要な作品となった。ヒットしたDisc4-9”Free Falln’”も同様。これまたソロで発表されたDisc2-4”Wildflowers”も嬉しく聴いた。スティーヴィー・ニックス(ちなみにピーター・グリーン・マックの”Oh Well”も入っている)がコーラスで参加したDisc2-8”Learning To Fly”も詩のメッセージも打ちのめされて、久々に涙。


さらに、カバーモノも実に興味深くて。インストではブッカー・T&ザ・MG’sの”Green Onions”とボンド映画の”Goldfinger”を演っている。いっぽう唄モノカバーも充実。Disc1ではボビー・ウォーマックの書いた名曲”I’m In Love”がまず目頭に来てしまった。ウィルスン・ピケットのヴァージョンがあったっけ。ソウルではJBの”Good, Good Lovin’”もある。むちゃスリリングなブルーズ”I’m A Man”とか、黒人の血もしっかり注入されているんだな、と。


後にウイングスに加入するジミー・マカロックも在籍していたサンダークラップ・ニューマンの一発ヒット”Something In The Air”(スピーディー・キーン作)にはイギリス好きもココまでか、と感心して。ブリティッシュ・ビートの甘酸っぱさを知っているからこそ、のペティのフォーク・ロック・サウンド、トラベリング・ウィルベリーズに加わったのも必然なのだなと。Disc2ではウィリー・ディクスンの”Diddy Wah Diddy”やゾンビーズの”I Want You Back Again”が。グレイトフル・デッドの”Friend Of The Devil”は往時のディランも演りそうなフォーキーなアレンジ。ゼム(ヴァン・モリスン)の”Mystic Eyes”にも驚き。Disc3にはあくまでブリティッシュ・ビート好きを印象付けるデイヴ・クラーク・ファイヴの”Anyway You Want It”があった。


改めて、最強のアメリカン・ロック・バンドを再認識したライブ・ボックス。一度でいいから生で観たいものだ。