(スコッティ・ムーア)/ Volume1 ( BMCD-2007-01 / 2007 )
ネット・サーフィンなんてのももはや死語かもしれませんが(笑)、先日発見したのが、エルヴィス・プレスリーのオリジナル・ギタリストとして知られるスコッティ・ムーアのウェブサイト(http://www.scottymoore.net/)。60年代後半から70年代にかけてのスワンピーなエルヴィスを支えたジェイムス・バートンもまだ存命だけれど、スコッティ・ムーアもまだ生きている。御年81歳!個人的にはシンプルなプレイ・スタイルも結構気に入っていて、ソロ・アルバムを集めたりもしていた。なーんて言っても出している盤は数少ないんですが。
まず彼のソロでやはり外せないのは『The Guitar That Changed The World!』でしょう。「このギターが世界を変えた!」っていう直球タイトルも素晴らしい。たまたまエルヴィスの後ろにいた、って感じなのかもしれないけれど、運命とはそういうもので。なんか、ナイトクラブ全盛期のハコバンのギタリストみたいなもんで、「職人」の風情なんですよ。決して出過ぎず、歌をしっかり支える歌伴に徹していて。Epicからの1964年のリリース。”That’s All Right”のソロとかやっぱり素晴らしいわけで。D.J.フォンタナのドラムスとジョーダネイアーズのコーラスも入って、演奏も何気なく熱い!この盤では他にも”Hound Dog”、”Money Honey”、”My Baby Left me”、”Heatbreak Hotel”、”Mystery Train”、”Don’t Be Cruel”、”Love Me Tender”といったエルヴィス・ナンバーのギター・インストをこれでもか、と楽しめる。個人的には好きすぎて、ペラジャケのオリジナル盤も入手しました。傷だらけだったけれど、音はとにかくCDより良かった。当時はエルヴィスのバッタモン的な感じのインスト集として聴かれてたんじゃないかな。
さらに、謎が多いのがギネスレコードからリリースされた『What’s Left』。1977年のリリースなのだが、公式サイトにも出てこない。もしかすると勝手にスコッティの預かり知らぬ所で、本人名義で発売されたものなのかも。余り見かけないレコードで、以前買った時もそこそこの値段がした。ピアノ&ボーカルは(リトル)ウィリー・レインフォード、ギターはスコッティと“Is Anybody Going To San Antone?”のソングライティングで知られるカントリー・レジェンド、デイヴ・カービー、ドラムスには盟友D.J.フォンタナ。A-1”Introduction”はスコッティ名義の作となっているけれど、”That’s All Right”風の3フィンガースタイルのリフを元にしたジャムセッションから生まれたような曲。エルヴィスも取り上げたローウェル・フルソンの”Reconsider Baby”やエルヴィスにとってはサン・レコードの同僚カール・パーキンスの”Matchbox”なんかも入った、ブルージー&スワンピーなロックンロール好作だ。
あと1980年のラル・ドナーのエルヴィス・トリビュート盤への参加なんかも挟んで、1997年の『All The King’s Men』(Scotty Moore DJ Fontana名義)もなかなかの参加陣で。キース・リチャーズ、チープ・トリック、ロン・ウッド&ジェフ・ベックからスティーヴ・アール、ジョー・イーライまで。ロックからカントリーまで、そのルーツは同根であるわけなんだけど、エルヴィスの影響力の凄さを思い知らされた。
さらに2006年にリリースされた『A TRIBUTE TO KING BY SCOTTY MOORE & FRIENDS』もDVDで楽しめる素晴らしいトリビュート・ライブで。マーク・ノップラー、エリック・クラプトン、スティーヴ・ギボンズ、アルバート・リー、デイヴ・ギルモアというブリティッシュ・ロックの大御所がアビーロード・スタジオに集結。ただ、日本では馴染みのないマイク・サンチェスといったミュージシャンの偽エルヴィスっぷりがファンには敬遠されてしまった感もある。
そして今回の『Scotty Moore presents The Mighty Handful』。大好きなアメリカン・ミュージックを気楽にセッションする、そんな楽しみが伝わってくる一枚。アメリカの片田舎を回ってツアーしているようなイメージ。誰もが知っているブルーズのスタンダードを嬉々として演奏する姿が目に浮かぶ。ボーカルは”I Can’t Help”のヒットでジョン・レノン(本日は33回目の命日でありました)をも魅了したというビリー・スワン!”I’ve Got My Mojo Working”、”Dust My Broom”、”Rock Me Baby”、”Hoochie Coochie Man”、”Let the Good Times Roll”…悪くないわけがない。ボーナス・トラックには、1977年盤にも収録されていた”Reconsider Baby”が入っていた。無造作にメンバーのサインがぐにゃっと投げ入れられていたのにも何ともアメリカを感じたり。