いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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「ジェフ・リンの」ELO

markrock2015-12-02


ELO名義のジェフ・リンがカムバック!思えば『ZOOM』から14年。あの頃はジョージがまだ生きていた。そのジョージのトリビュート・ライブの音楽監督だとか、プロデュース業の人でこのまま終わるのかな、という感覚もあったけれど、しっかりレコーディング・アーティストとして、しかもELO名義で戻ってきてくれるとは!

思えば2012年にはソロ名義のカバー集『LONG WAVE』やELOの新録入りベスト盤があり、2013年には『ZOOM』とソロ『ARMCHAIR THEATER』のリマスター、ボーナス・トラック入り再発があり、2014年にはハイドパークでのELO名義でのコンサート(DVDになっている)、グラミー賞でのゲスト出演があった…そう考えると満を持して、ですかね。

さて、例の如く宇宙船仕様の新作『ALONE IN THE UNIVERSE。たとえ宇宙に1人でも、音楽さえあれば寂しくない…ほぼ日本盤と同額の輸入盤LPと迷いに迷った末、ボーナス3曲の日本盤デラックスエディションで購入。正直『LONG WAVE』の時もそうだったけれど、ボーナス入りにしてはちょっと割高(3240円)で往年のファンの足下を見ているような感じはしたけれど、まあこんなご時世になってくると、業界への寄付のつもりで。しかも聴いてみると、手癖でポロッと出来たような3曲のボーナス・トラックが実にジェフ・リンのルーツを感じさせる、肩の力の抜けた名曲だったもので。本編に入れても、という楽曲もあった。



しかし誰しもがそう思うはずだけれど、冒頭の”When I Was A Boy”が白眉で。一言で言うとイノセンスかな。ここまでの人になると、老境にも差し掛かり、ポップソングで新しく歌いたいこと、なんてなくなってくるようにも思うけれど、新しい曲を作ろうと自分とイノセントな気持ちで向かい合ったら、こんな言葉とメロディがするりと出てきたのではないだろうか。この辺りの音楽愛こそが、ミュージシャンズ・ミュージシャンでもある所以のようにも思えたり。階段コードのシンプルなこの曲、ビートルズのメンバーでジェフが唯一ソロ作のプロデュースを行うことができなかったジョン・レノンの”Mind Games”のようなメロディが顔を出してくる辺りも、グッと来た。個人的には今年後半は全精力をつぎ込んだアルバム制作があったためか、ほぼ廃人状態になっているので(笑)、これを聴いて僕もまたもう一寸頑張ろうかな、と思えたのだ。



Don’t wanna play work on the milk or the bread
Just wanna play my guitar instead
When I Was A Boy I Had A Dream
ミルクやパンのために働きたくはないよ
その代わりにただギターを弾いていたいんだ
ぼくが少年だった頃 夢があったんだ



And radio waves kept me company
In those beautiful days
When there was no money
When I was a boy I had a dream
そしてラジオが友達になった
そんな美しき日々 お金はなかった
ぼくが少年だった頃 夢があったんだ


("When I Was A Boy"「ぼくが少年だった頃」)

他にもロイ・オービソンが憑依する作品があったり、ウィルベリーズ風だったり(初期ビートルズっぽい”Ain’t It A Drag”が最高で!)、そしてもちろんセルフ・レスペクトなELO時代を思わせる美味しい部分もあったりして。『Long Wave』というパーソナルなソロ・カバー・アルバムを作って、その先達の偉大なメロディが創作の刺激になったことは、大滝詠一的なジェフの創作スタイルを思えば想像が付く。



ELO名義になっているけれど、ちょっと派手目なジェフのソロっていう位の認識がいいのかな、とも思ったり。なにしろ『Zoom』や2014年のハイドパークで客演したリチャード・タンディもそこにはおらず、レコーディングはエンジニアのスティーブ・ジェイにタンバリンとシェイカーを振らせた位で基本自身の多重録音。そう、娘のローラ・リンには命令通りのコーラスを歌わせているけれど。ELO Part2みたいなノスタルジー・サーキット周りをしているELOのメンバーには再結成でも声をかけてこなかったし、自分こそがELOみたいなことを言っているから。バンド・メンバーはレコード再現のツアー用みたいな感覚があったのだろうか。でもベブ・ビヴァンの再編ELO Part2とかケリー・グロウカットの2枚のソロだとか、ELOらしさのサムシングを感じる部分は相当にあるのだけれど、この辺はファンの意識の問題かな。あと、アルバムの短さ(1曲、2〜3分台)はレコード時代の再現のようにも思え、これは回り回って大正解。1曲目のインパクトが大きいにしても、何度も聴くとそのほかの1曲1曲の個性が分かってくる。

さて、お次はジャケットは評判の悪い(笑)、ブライアン・アダムスの新作。こちらもジェフ・リン・プロデュース。こちらが今年まずリリースされた。姉妹盤として聴けるかな。こちらも僕にはイノセント繋がりのように思えた。ブライアンは今でもロックンロールの魔法を信じているミュージシャンだ。しかも前作が音楽愛溢れるカバー集(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20141213)だった(なんとブライアンの同郷カナダのデヴィッド・フォスターのプロデュース)、という所もジェフと重なり合うところがあった。冒頭”You Belong To Me”なんて思わずニヤリ、な仕上がりで。共作は1曲だけだから、ブライアンはジェフ・リンっぽいメロディを想像しながら曲を作ったんじゃないかな?それほどにジェフっぽい世界観、ウィルベリーズの後継作といってもいいような音で。後半に4曲のアコースティック・ヴァージョンが入っていて。コレ、本編の音を抜いただけではなく、ちゃんと本編とは別の弾き語りデモのようになっているのが面白かった。ジェフのプロデュース・ワークで音がどう変化したのか、も楽しめたし!