久々の更新。相変わらずのレコ買いまくりなのに、それについて書く気が起こらない日々で。ある種の無力感。嘘ばかりがまかり通る腐りきった世の中に絶望して…と言ったらカッコ良すぎるけれど(笑)最近出した本のことで色々頭が一杯だった、というのもある。そうそう、まだ具体案は未定なので詳細は控えざるを得ないけれど、私の音楽人生で最大の影響を受けたミュージシャンとの書籍企画の構想がやおら首をもたげて来てもいる。
さて、今日入手したのはロジャー・ニコルズの発掘音源モノの第2弾『Roger Nichols Treasury / Extra Tracks』。第1弾は2枚組CDとLPと両方買ったものの、まだ紹介していなかった。
紹介の順番が逆になってしまったのは、今の時代を象徴するようだけれど、正直情報量が多過ぎて、自分の中で消化できなかったという部分。ディランのブートレッグ・シリーズなんかも(今度の『血の轍』アウトテイクは楽しみであるにせよ)、もはや消化不能。愛してやまないバリー・マンの昨年リリースのデモ集『プライヴェート・トレジャーズ』ですら、消化できなかった。CDを出せる機会はそうないし、出せる時に出すというのもわかる。マニア向けに詰め込めるだけ詰め込んだ音源を聴きたいという欲望もある。でも20年前と比べて、未知の音に対する飢餓感が違って来ている。
そう思うと、プロデューサーの濱田高志さんの音楽アーキビストとしての情熱が衰えなかったことは本当に凄いと思う。当初は乗り気でなかったロジャー自身を結局は動かして、今回のリリースに至ったのだから。しかもライナーを読む限り、曲選を濱田さんに任せると言いながら、濱田さんの選曲の半分はオミットされたとか、ロジャーはコダワリがあって、なかなか難しそうな人であるような気もした。業界的にはやっぱり60〜70年代の人、というイメージなのだろうし、80年代以降のキャリアがそこまで順風満帆でなかったのは、そういった部分もあるのかもしれない。ワカリマセンが。ただ今回のCMや未発表インストを中心とするデモ集(新録含む)30曲を通して聴いてみて、かつて『スモール・サークル・オブ・フレンズ』で魅了された音楽の魔法が改めてそこにはあった。流麗で優しいメロディと、そこはかとない気品と。時代が一回りした今だから、渋谷系、って言ってた頃の、音楽を知り尽くしていた人達が、再び熱心なリスナーとして、情熱的でクールな作り手として、カムバックして欲しいと思う。