/ Demonstrations ( Cool Sound / 2011 )
アンディ・ゴールドマークと言えば、ゲイリー・アッシャーのプロデュースで1973年にリリースされたセピア色のSSW名盤『Andy Goldmark』がカルト的な人気を保っている。個人的には名盤探検隊シリーズで初めて購入。LPもよく中古屋で見かける。デモンストレーション盤のステッカーが貼られたものを多く見かけるけれど、それほど余り売れなかったのだろう。
さて、こちらもデモンストレーションズなるタイトルが付けられているけれど、こちらは彼の楽曲のデモを収めた驚きの新作だ。90年代以降、AOR再発CDの先鞭を付けてきたクール・サウンズからのリリースだ。
コレクター諸氏ならば、ごく少数プレスされて、音楽業界に出回っているデモ盤をご存じだろう。とりわけ作曲家本人が歌うデモに人気がある。しかしそんなコレクター垂涎の品も、ポール・ウィリアムス&ロジャー・ニコルズやアラン・オデイのものがCD化されてしまったんだから驚きだ。楽曲の売り込み用のデモながら、完成度の高いモノもあり、ファンには堪らない魅力がある。楽曲の素の魅力がそれなりの金を生むとレコード会社が悟った感もある。
さて、そんな時代だから、アンディ・ゴールドマークのデモが出たとしても驚かない。ただし、アンディ自身も折角出すのだからと、手を加えているモノもあり、それは正直惜しいと言わざるを得ない。作品としてのトータリティより楽曲そのものの初々しい様を聴きたいってのが正直な所だから。
だから、マイケル・ボルトンと共作した”Soul Provider”(マイケルのヒット・アルバムのタイトルにもなった)をレゲエ・アレンジで改作しているのは頂けない。個人的にはソングライターとしてのアンディに初めて注目した作品だったから。(後に前出のSSW名盤をリリースした人物と同一だと知ったときは驚いた!)
まあ、それでも80年代から90年代にかけてのアダルト・コンテンポラリーのメインストリームをいく、クワイエット・ストームなAORサウンドは十分に魅力的。ケニーGの大ヒットアルバムでピーボ・ブライソンが歌った”By The Time This Night Is Over”とか、初めて聴いたバラード”Tender Is The Night”がすこぶる良かった。他にもジャーメイン・ジャクソンの”Dynamite”とかね。無名のセッション・シンガーが歌うデモも多い中、自演を貫いているのも魅力的。ちなみに、購入時に"Crush"が特典CDとして付いてきた。
これが気に入った向きにはかつてCD化された、ワンダーギャップも是非聴いてみて欲しい。クリッターズのジム・ライアンと紅一点のホリー・シャーウッドとのトリオで、都会的な洗練された音が忘れられない。
ライナーの中田氏、名盤探検隊のアンディ盤の解説も書いていたけれど、ちゃんとシンガーソングライター時代の作品も評価してくれていることが嬉しい。AOR系のライターとなると、マトモにロックやシンガー・ソングライターものは聴いてはおらず、ましてやカントリーは知りませんなんて人が多いもの。アメリカの音楽を理解するのにジャンルの壁を作ってはいけないというのが持論だ。