いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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Roger Nichols and The Small Circle Of Friends

markrock2012-11-29

/ My heart Is Home ( Victor / 2012 )


まさかの2007年のセカンド『Full Circle』(レビューはこちら→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20071222)小西康陽のピチカート・ワン名義の『11のとても悲しい歌』に収録された”Suiside is Painless”に続き、ロジャニコの新譜?!本当ですか??っていう半信半疑のままリリース日を迎えて。早速入手しました。ユニオンだとカンバッジが付いてきた。いつも思うけどカンバッジは絶対に使いません…


ジャケットを見てみると、実に淡くてソフトロック感が出ている。セカンドとは対照的によく見るとメンバーの老いは相当のものなわけだが…そうだよね、A&Mからリリースされて、80年代後半に日本再発されたファーストは1968年発売だったわけだから。まだ現役でいてくれるだけでも感謝しなければならないでしょう。


ライナーを読むと、濱田高志さんというライターさんの並々ならぬ尽力で作品の完成にこぎ着けたことが良くわかる。ただ、中身はというと、私はもちろんロジャー・ニコルズ・トリオの駄作シングルすら愛すロジャー・ニコルズ・ファンですから、とても気に入ったけれど、ファースト1968年作のみをバイブルと考えるファンには魅力的とは言えないかもしれない。1995年のロジャー・ニコルズ・アンド・ア・サークル・オブ・フレンズ名義の『Be Gentle With My Heart』が出たときにもそう思った人はいると思うけれど。「そうなっちゃいましたか、そりゃそうだよね、30年近く経ってるんだからね…」みたいな。リスナーの耳は60年代で止まっているけれど、機材やレコーディング技術は進化して、声だってもちろん変化しているわけだし。端的に言うと一番違和感があるのは、キーボード主体のチープな打ち込みの音作りってとこなのだ。正直1995年作と今作、音作りの点ではそれほどの進化を感じない。予算上の問題もあるだろうけど、生楽器でやったらそれこそマジカルな何かが絶対生まれると思うのだが…それに加えて、演奏の再現性の方は申し分なかったブライアン・ウィルソン『Smile』ですら失われている何か、ってあったじゃないですか。そんな所はどうしてもある。”Talk It Over In The Morning”のロジャニコ・ヴァージョンはじめ、リメイク主体でファンが聴きたかった理想を現実化してくれた2作目『Full Circle』と比べると、新作主体の今作は売り上げでは勝てないかもしれないな。


でもでも、ロジャー・ニコルズという作曲家の瑞々しさが失われていないことが良くわかったのは断然今作。前評判ではジャズあり、レゲエあり、だの、どんなものかと心配したけれど、スタイルは変われど胸を打つ鉄板のロジャニコ・メロディーじゃないですか。ミュージシャンだって過去に拘りを持たれるよりは今の姿を見て貰いたいと思うわけだから、リスナーが古い楽曲を求め続けていてはミュージシャンが成長できないということ。ただ38分50秒一本聴きをしたところ、メロディにウルっと来たのは1995年作にも入っていた”Chiristmas Is Favorite Time Of Year”とあの定番”We’ve Only Just Begun”だったという…いやはやロジャー先生すみません。正直な意見ですが。ポール・ウィリアムスとの久々の共作曲だとか、ロジャーのUCLA在籍時の古い楽曲だとか、細かい楽曲解説は濱田さんがライナーに書いている通りなので、興味のある方は本作を手にされてみてはいかがだろう。


最後に。一番長らく読ませてもらっている大好きな雑誌レコード・コレクターズ誌で8月末にリリースされたロジャー・ニコルズ&ポール・ウィリアムス・ソングブック』のレビューを読んだのだけれど、「そもそも僕は、ロジャー・ニコルズとポール・ウィリアムスはソングライターのコンビとしてそんなに優秀なのか?という疑問をずっと抱いている」とだけ書きなぐっている人がいて、久々に怒りを覚えてしまった。もしかすると、渋谷系にもてはやされたロジャニコを嫌悪しているライターさんなのかもしれないけれど。だいいちなぜそんな人に愛すべきニコルズ/ウィリアムス評を書かせるんだよ、という所と、理由なくただ「嫌い」としか読み手に伝えられない文章を書くのか、という所が気になった。ここまで来ると批評でも何でもなくただの好き嫌い、でしょう。的確な批評が出来なくなってしまった音楽誌の終焉を図らずも感じ取った次第。せめて好き嫌いだったとしても、「好き」が伝わる文章が読みたいもの。


(追伸)二度目に聴いたら(これがまた不思議なのだが)、音作りに感じた違和感はなくなっていて、メロディの美しさだけが耳を離れませんでした…美しい。。4作目はジャズ・コーラスもの、だとすれば、たぶんファーストの敬虔なファンも必ずやピンと来るんじゃないかな!4作目を今から首を長くして待っています。