/ 夜風に乾杯( ポリスター・ソングス/ウルトラ・ヴァイヴ 2012 )
1994年頃だっただろうか、アルフィー坂崎幸之助司会の『BSフォーク大全集』なる番組があって。日本における70年代フォーク再評価に決定的な影響を与えた番組だと思う。私と同世代のフォーク・ファンはこの番組で高田渡や友川かずき、斉藤哲夫に遠藤賢司を知ったのだった。しかししかし、70年代ブームは終わり、80年代ブームも飽き飽きした昨今、いまだにコテコテのフォークを歌い続けているシンガーは亡くなってしまったり、メディアにもめっきり姿を見せなくなったり、している。坂崎さんだけかな、BSフジでお台場フォーク村を続けているんだけどね。
そんな所でなぎら健壱の新作『夜風に乾杯』をついつい買ってしまって。これがなんだか沁みたんだな。やっぱりこの線で私も歌い続けていこうかな、とフォークがもはや伝統芸能化していると自覚しつつ、思ってしまった。
近作では出色の出来じゃないかな。FFAからのなぎら健壱&オウンリスク名義の作も良かったけれど、ジャケットがイマイチで。それに比べると、東陽片岡氏のイラスト・紙ジャケ仕様の今作はそのアートワークだけで、見事なもの。下町の猥雑さが良く出ている。
1年前にライブで聴いた、日本テレビ系「ぶらり途中下車の旅」エンディングテーマの”踏切”でスタート。そしてウェスタン映画と昭和の映画館が思い浮かぶ”デュークによろしく”。ホントいいなぁ、というね。ここまでコテコテのカントリー・フォークを演っている人も減ってきたものだ。うん、次のアルバムはこの路線で演ってみよう(笑)。フォーク世代の気概は高石友也のカバー”労務者とは云え”(元曲はボブ・ディランの”Only A Hobo”)とか、”第三次世界大戦を見守る唄”にあり。ラストの”時代のG・1972年”の「GuthrieのG」なんて歌詞も良かった。現代のウディ・ガスリーが居て欲しい。”英ちゃん”みたいな弾き語りも、いやー、新鮮。そうだった、自分はもともとこんな音楽に憧れて音楽始めたんだったとな〜、となりました。バンドのギタリスト松本典明氏のカントリー、フォークからジャズ、ブルーズを含めたアメリカン風味たっぷりの音作りも強力かな。そうそう、タイトル曲にはサンボマスターの山口隆がボーカル参加!
初回限定盤にはボーナスCDとしてたいやきくんのB面”いっぽんでもニンジン”、落語+フォークってな語り芸の名作”葛飾にバッタを見た2000(LIVE)”を収録。いやはや、現在のなぎらさんのありようが「和」の語り部であるってのも、戦後アメリカ文化がどっぷり日本文化に根付いた証拠だと私は思っている。(詳細は10年近く前に書いた「なぎら健壱の消息について」を参考に↓)
http://d.hatena.ne.jp/markrock/20050811
なぎら健壱とNHKの元うたのお兄さん坂田修(もともとフォーク歌手!宿屋の飯盛やら、”BYE-BYE東京”やら…)が組んだフォークマン・ブラザーズのレビューと2年前のライブの感想はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/markrock/20101201
さて、最後に高校時代にBSフォークソング大全集を観まくっていた頃の影響そのままに作った曲を。将来が不安です…