いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Paul McCartney

markrock2012-02-10

/ Kisses On The Bottom ( Hear Music / 2012 )



ビートルズ・デビュー50周年の年にポールの新作。リンゴの新作も同時に当て込んできていたけれど、それもアリかな。ジョン映画にジョージ映画もあったから何かとビートルズ・ファンを飽きさせない流れがある。


しかし意外に感じたのは新曲2曲入りとはいえ、名匠トミー・リピューマなんてポールとは結びつかなかった人に委ねたアメリカン・ジャズ・スタンダード・カバー盤だったこと。ロックも老境に入り、ジャズに帰って行くのかな。ゲスト参加しているクラプトンなんかを思ってみてもそうだけれど。


最近、ミュージック・マガジンの過去の名物レビューのムック“クロス・レビュー1981-1989”ってのを読んだけれど、評価厳しすぎ!結構好き勝手書いてたんですね。作り手は相当ムッとしただろうね…ロックの成熟に伴って、ロックの聴衆も成熟し耳が肥えてきていたから、ココまで強気で言えたんでしょう。でも、2012年にもなると、ロックの偉人達も鬼籍に入り、もはやこのポールの新作を、“天性のソングライターの才能の枯渇”、なんて言う人はいないんだろうな。もはや生きていてくれるだけで、有り難いっていう境地。


さて、中身だけれど、可もなく不可もなく、ではある。ポールらしい歌い回しはあるけれど、あまりジャズ・シンガーらしいコブシ回しは無くって、ソッチのファンには食い足りないかも。ポールのファンならお気づきだろうが、近年は張らない限り声もかなり枯れているし。ただ、ロッド・スチュワートのスタンダードものもそうだったけれど、節回しはヴォーカルに専心しているだけあってかなり丁寧で。何度も聴くと実に落ち着く。コレがポールの考える「スタンダード」だったんだろうな、と。


バッキングはいまエルヴィス・コステロの妻となったダイアナ・クラールのリズム・アレンジでトリオ編成のバンドが中心。ダイアナは当然と言えば当然だが、この大抜擢にあっても全く目立とうとしていない。ギターにはジョン・ピザレリの名も見えて、ファンには嬉しいところでしょう。父バッキー・ピザレリとジョンが共演したトラックもあって。スティーヴィー・ワンダーは、唯一ダイアナ・クラール抜きのポールのオリジナル”Only Our Hearts”に一聴して彼のものと判るハーモニカで参加。ストリングス中心のスロウなバラードで、こんなオリジナルと不朽の名曲群を並べてみたくなったんだろう。ただ、もう一つのオリジナル”My Valentine”の方がポールらしいメロディとボーカルを聴かせてくれてはいるが。


そうそう、ヴァレンタインと言えば、手に入れたデラックス・エディションはヴァレンタイン・デー以降に、キャピトル・スタジオで2月9日に行ったポールのライブ音源のフリー・ダウンロードできるカードが封入されていた。そちらも期待したい。