いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Marc Cohn And Blind Boys Of Alabama

*[SSW] Marc Cohn And Blind Boys Of Alabama / Work To Do (BMG / 2019)

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これも積読CDの中から、しかも2年前だった…音楽に申し訳ないですね。ただコレ、買ってしばらく、よーく聴いていた。アメリカの特筆すべきシンガー・ソングライター、マーク・コーンの2019年の新作『Work To Do』。日本では悲しいかな、まっとうに取り上げられることはなかった。この新作、ゴスペル・グループのブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演作。ただし共演の新曲はゴスペルの”Walk In Jerusalem”、マークが手掛けた”Talk Back Mic”と表題曲”Work To Do”の3曲。しかしどうにも素晴らしい。苦みばしったソウルフルなマークの喉は絶好調だ。ブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演がこんなにハマるとは…アメリカン・ミュージックのダイナミズムと気品を表現できるマーク・コーンの才能は、彼のデビューを後押ししたクロスビー&ナッシュ、ジャクソン・ブラウンジェイムス・テイラーという顔ぶれからも理解できよう。

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後半の7曲は、ブラインド・ボーイズ・アラバマとの共演ライブの模様。ライブと言っても音はすごく良い。マークの怒涛のベスト選曲”Ghost Train”、”Baby King”、”Listening To Levon”、”Silver Thunderbird”、”Walking In Memphis”、”One Safe Place”に新しい命が吹き込まれる。”Amazing Grace”のカバーも感動的だ。マークも世代的にいえば、ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』における、ステイプル・シンガーズのゴスペルの凄みを経験しているはず(”Listening To Levon”はザ・バンドのリヴォン・ヘルムに捧げられた楽曲だった)。この辺りがコラボレーションのヒントになったと想像できる。

 

プロデューサーはマークをメジャー・デビュー当時からアレンジや演奏などで支えてきた、ジョン・リヴェンサール。彼はいま、ロドニー・クロウェルと別れたカントリー歌手ロザンヌ・キャッシュと幸せに暮らしている。ただリヴェンサールはユダヤ系、ということで保守的な米カントリー界、とりわけ父のジョニー・キャッシュにはそれなりの衝撃を与えたみたいだけれど。で、そのジョン・リヴェンサールとマーク・コーンががっぷり四つで手掛けたのがサザン・ソウルの大御所ウィリアム・ベルが40年の時を経て2016年にスタックスに復帰した『This Is Where I Live』。日本のメディアではベルの復帰作をジョン・リヴェンサールが手がけた…というばかりでマークが全面参加したにもことにほぼ触れられず残念だったけれど、この作品は感動した。優れたソングライターでもあるウィリアム・ベルとジョンとマークが多くの曲を共作している。レヴォン・ヘルムの娘エイミーもボーカルで参加。ウィリアム作のブルーズの名曲”Born Under A Bad Sign”の再演もあるが、声の衰えは全くといっていいほど、ない。グラミーのベスト・アメリカーナ・アルバムを受賞して、グラミーではゲイリー・クラーク・ジュニアと”Born Under A Bad Sign”を演奏する一幕もあった。そういえばジェシ・ウィンチェスターのカバーが1曲入っているのは、2014年に亡くなった彼へのトリビュートだったのか…今夜も音楽の旅が終わりそうにない。

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