*[カントリー] Dwight Yoakam / Swimmin' Pools, Movie Stars (Sugar Hill / 2016)
ドワイト・ヨーカムの現在の所の最新作『Swimmin' Pools, Movie Stars』(2016年)を久々に聴いている。相変わらず良いとしか言いようがない。シュガーヒルからのリリースということで、ブルーグラス風味の仕上がりになっているのが極めて新鮮だ。
セレブ然としたジャケは思わずシティポップ的にも思われるけれど、タイトルからも判る通り、映画俳優としても着実なキャリアを歩んでいる。アメリカのご婦人のストライクど真ん中のセックス・アピールのある古風なカントリー・シンガーとして80年代後半のアメリカにデビューした彼だから、キャラクターだけでも魅力的。しかし初めて90年代半ば、中学生の頃に彼を映像で見たときは衝撃を受けた。ホンキー・トンクとかそういう言葉の意味が初めて理解できたような気もして。マーティンのD-28ですかね、これをチャリチャリ弾きながらカウボーイブーツ&ハットにジーンズで、客席の嬌声を弄ぶかのように緩急使い分け、エコーの聴いた鼻声で歌うんですよね。エルヴィスを想起したけれど、その直感は間違っていなかったように思う。ガイコツマイクのロカビリーともルーツを同じくする音。2000年のインターネット新時代を象徴するような弾き語りアルバム『dwightyoakamacoustic.net』でわかったけれど、カントリーのギターリックが本当に巧みな人なんですね。
で、”Guitars, Cadillacs”のブルーグラスでの再演も交えつつ、ラストは同年亡くなったプリンスへのトリビュート”Purple Rain”。買う前から彼が歌っている様が想像できた。この感覚はロック的だと思った。白人至上主義的になりがちなカントリー界ですからね。ただ、アメリカ音楽を好む人ならわかると思うけれど、カントリーもロックンロールも、ジャズもブルーズもソウルも全部実はルーツは一緒だから、ドワイト・ヨーカムがプリンスを歌うことに全く違和感はない。そもそもカントリー、リズム&ブルーズなんてのは人種差別からできたカテゴリーであったわけだから。
家のレコ棚を探してみたら、デビュー作から3枚目まではLPがあった。もう彼も64歳なんですか。今聴いてもサイコーであります。