いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
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2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの選曲・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
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2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
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2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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Essra Mohawk / E-Turn

*[SSW] Essra Mohawk / E-Turn(Eclipse / 1985)

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 エスラ・モホーク…本名サンドラ・ハーヴィッツ、といえば、女性シンガーソングライターの中でも個性派の部類に属するだろう。フランク・ザッパと活動を共にした時期もあったりと、当時の行き当たりばったり的ヒッピー女史であったことは想像がつく。ヴェルヴェッド・アンダーグラウンドのニコの『The Marble Index』をプロデュースしたフレイジャー・モホークと結婚するとエスラ・モホークと名前を改めている。フレイジャーの本名はバリー・フリードマンだから、ユダヤ系ですね。ボブ・ディラン同様、ルーツを攪乱しようとしたことが伺える。ネイティブ・アメリカンのモホーク族から採ったのだと思うけれど、その辺りはヒッピー的感性。

 

で、エスラのリプリーズ、アサイラムプライヴェート・ストックからの70年代の3枚と比して、存在感が薄いのが1985年の『E-Turn』。「E-Turn」は文字通り「エスラの転回」そして「(今度は)エスラの番」というダブル・ミーニングになっている。何しろジャケットは、オリビア・ニュートン・ジョンの”フィジカル”におけるエアロビ変化を思わせる変貌ぶり。この後、1999年までしばらく沈黙してしまうのだけれど…

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この変身のヒントは、1983年にシーンをかっさらっていたシンディ・ローパーにある。満を持して発表されたシンディ1986年のセカンド・アルバム『True Colors』の1曲目を飾ったのはシングル”Change of Heart”(ビルボード3位を記録)。これを書いたのがエスラ・モホークだった。エキセントリックな女性シンガー・ソングライターの先駆として、元ヒッピー・ガールの(かつロカビリー女史でもあった)シンディがエスラの起死回生を願ったような1曲。これに刺激されて同様の音作りの『E-Turn』が制作されたことは間違いない。しかしニューウェーブっぽさと、アメリカン・ロックンロールの王道を交えつつ、シンガー・ソングライターっぽさも墨守するシンディの音作りのユニークさは古びないと改めて思う。

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ちなみに”Change of Heart”のエスラ版(おそらくデモ?)は、2005年発売の『E-Turn』20周年記念盤に”It's Our Future”と共にボーナス収録されている。ちなみにコレ、音を聴くこと自体は難しくないけれど、ブツで欲しいなってことで、e-bayのおそらくご本人(かそのスタッフ)ではないかと思われる販売サイトで購入するも、どうしても日本への送り方がわからないというご返信…ここなら買えるかも…というサイトまで教えてもらったけれど、そこでも入手できず、結局また別の売り主から購入。一応買えたことを報告すると、それが本物かどうか確かめられたら教えて欲しいという連絡が。つまり、ご本人の与り知らぬところでお金になってしまっているということかと思った。ちょっと残念な気持ちにもなる。店に卸した分が転売されたか、勝手にデジタル複製されたか。アナログならブートのように音質劣化する分、複製は困難なんですが(マスターがデジタルなら複製できますが)。いずれにしても70代になったエスラを想い、世知辛い感触が残った。