いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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グレッグ・リーヴスとCSN&Y『Déjà vu』

*[コラム] グレッグ・リーヴス(Greg Reeves)とCSN&Y『Déjà vu』

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CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)の『Déjà vu』…1969年というウッドストック・エラを象徴するエポックメイキングな1枚。たぶん1000回以上は聴いたはずだけれど(笑)、このジャケは何?と手が止まってしまった。手が込んだあのセピアの写真がツルツルの紙にそのまま印刷されている。背景もクリーム色に変わっているが、どうもフランス盤なんだとか。思えばフランス的感性にカスタマイズされているような…この辺が各国盤の面白さだ。そういえばスティーヴン・スティルスはフランスのシャンソン歌手ヴェロニク・サンソンと結婚し、息子のシンガー・ソングライター、クリスが生まれたんだった。このフランス盤、音はミックスがちょっと違うように聴こえて、アメリカ盤よりはイギリス盤に似た粒の立ったエグイ音。ギターソロがよりハッキリ聴こえたのが収穫だった(一部のスティルスのソロの危なさもわかったが、それでいてニールとのソロ合戦の迫力は増していた)。

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ふと写真を見ていて気になったのは、ジャケットにでかでかとクレジットもされている黒人ベーシストのグレッグ・リーブス。ドラマーのダラス・テイラーはClear Lightのメンバーだと知っていたけれど、グレッグ・リーブスは(写真左下)?

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調べてみると、彼はこのレコーディング時に14歳くらい。12歳で家出してモータウンのジェイムス・ジェマーソンの手引きでセッションマンになったんだとか。テンプテーションズの”Cloud Nine”のベースはグレッグの手によるものらしい(ジェイムスだという説もあるので判らないが)。CSN&Yに引き抜きに来たのはクロスビー&ナッシュ。アフリカン・アメリカンネイティブ・アメリカンの血もひく彼は、リベラルな白人バンドにとってはヒップなポジションだったのかも。当時リック・ジェイムス(後にファンクで大成功する彼だが、当時はモータウン在籍のバンド、マイナーバーズ――ニール・ヤングがギターを弾いていた――のメンバーだった)と一緒に住んでいた所をほぼさらわれるように、車で連れていかれたらしい。”Carry On”のフレーズを作ったり(クレジットはない)、音楽的貢献もあったようだけれど、スティルスと相性が悪かったみたいで、すぐに追い出されてしまう。麻薬によるものか黒魔術的奇行もあったらしいし、若くして手にしたプレイの奔放さや独創性が、我の強いスティルスを脅かしたのかもしれない。その後のレコーディングは数少なくて、ニール・ヤング『After The Gold Rush』ジェイムス・テイラーの兄アレックス・テイラーの『With Friends And Neighbors』収録の”C Song “、ジョン・セバスチャン『Four Of Us』収録の”Well, Well, Well”、デイヴ・メイソン『It's Like You Never Left』のタイトル曲と”Head Keeper”、クロスビー&ナッシュの” Immigration Man”(リード・ギターはデイヴ・メイソン)、リッチー・ヘヴンスの『Mixed Bag II』におけるデイヴ・メイソンのカバー” Head Keeper”とニール・ヤングのカバー”The Loner”くらい。あとはソングライターとして、ジョニー・ブリストルとの共作で、トム・ジョーンズボズ・スキャッグスがレコーディングした” I Got Your Number”が知られるものの、70年代後半はドラッグでメキシコの刑務所に入り、80年代前半にはジョージ・クリントンのレコード制作に携わるも、大学に戻って音楽から足を洗ってしまったらしい。

 

しかし、2017年に突然リリースされたのがグレッグの” Working Man”という曲。グレッグにとって音楽とのケリをつける意味でも出さざるを得なかった曲らしく、元々ニールと共に親交があったニルス・ロフグレンと作ったデモはアップルレコードに興味を持たれ、ジョージ・ハリスンも聴いたようだ。その後、デュエイン・オールマンらを加えた1971年のレコーディング、アサイラムにてグレアム・ナッシュとスティーヴィー・ワンダーが変名で加わったレコーディングが存在したが、いずれも結局お蔵入りしてしまっていた。2010年のツイッターにはLos DémonesというLAのバンドのプロデューサー、ベーシストを務めていたとあるが、音はどこにもない。あとは2006年にトム・ウェイツ・タイプの南カリフォルニアのシンガーソングライター、ジェシディナターレ(Jesse Denatale)のアルバム『Soul Parade』に参加した情報があるが、音だけでは参加の有無が判らなかった。調べていくとホームページもあったのだが(http://gregreevesmusic.com/)、何やら既視感(Déjà vu)が。おそらく以前も気になって何度か調べたものの、その度に謎が深まり、放置していたのだろう。HPでペイパルを通じて、お布施のつもりで曲を買ってみたが、返事はない。たぶん、いつまで経っても返事はないのだろう。