いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Crosby, Stills & Nash 2015 TOUR(東京国際フォーラム 2015.3.5)

markrock2015-03-07


クロスビー・スティルス&ナッシュ来日公演初日(3月5日)の東京国際フォーラム、行って参りました。やはり行かない訳にはいかないだろうというわけで!休憩を挟んで2ステージ、3時間近くに及ぶ全24曲のステージ。感動がいまだに残っている。



ウッドストック、いちご白書、小さな恋のメロディ…そのメッセージ性も含めてカウンター・カルチャー、フラワー・ムーブメントの寵児だった彼ら。西海岸・カリフォルニアのハーモニー・ポップの伝統とブルーズ/ロックを融合されたサウンド、(ぶつかり合うことがあったにせよ)民主主義的なバンド運営、ホリーズ、バーズ、バッファロー・スプリングフィールドという各バンドの才能の集合体ともいえるスーパー・バンドとしての性格(ヤングが合流したCSN&Yも)…色んな意味でエポックメイキングだった。A,B & Cなんてバンド名が70年代前半にどれだけ量産されたことか。70年代前半のB級C級バンドのレコードを集めているとよくわかる。サウンド的なバッタもんも雨後の筍のように存在しました…CSN関係のレコード、関係者の人脈を丹念に追っていくと、カリフォルニア/ウェストコーストの音楽地図ができあがるというイメージ。我が家ではグループ、ソロ、参加作、関係人脈のレコード・CDだけで本棚1個分になっている。そうそう、日本ではガロ、その弟子格アルフィーという直系がいる。そのガロ・フォロワーにもベルウッドのとなりきんじょ(以前メンバーの方からメールをいただき、ガロが下敷きになっていると種明かししてくれました)などがいたり。



20年ぶりの来日、おそらくファンは人生を振りかえりつつ万感の思いで聴いたのではなかろうか。客層は往年のロックスターのライブにしては(だから、という話もあるが)若年層が少なかったのが意外だった。30代もちらほら程度であまりいなかったのでは?多くは60代のファンかなあ。でも長髪・ヒゲの方が多く、失礼ながら堅気じゃない感満載(笑)50年後のイージーライダー。でもコレ、彼らの音楽がある種の思想を持っていたことの表れでもある。

セットリストなどはほぼ予想通りだったけれど(ネタバレですが下にセットリストを載せました)、来日公演がちょうど重なっている旧友ジャクソン・ブラウンのゲスト登場は予想できなかった。ナッシュのハーモニーと共にジャクソンのギター一本で歌った"The Crow on the Cradle"。ナッシュやジョン・ホールらが発起人になった『No Nukes』でも演じられた楽曲。ファン層が重なるジャクソン公演にも行きたい、と思わせるプロモーション効果を狙った部分もあるのかもしれないけれど、クロスビーが自身の楽曲"Delta"の誕生はジャクソンのお陰だったとエピソードを紹介したように、音楽を通じてプライベートでも彼らと親交のあったなら旧友ならでは夢のゲスト参加かな、と。



ナッシュは日本語を使って愛想良く振舞いつつも、リベラル派らしいメッセージ性の高い楽曲("Military Madness"に始まり、クロスビー&ナッシュで世に出た捕鯨反対の"To The Last Whale"、中国のチベット弾圧に抗議した新曲"Burning for Buddha"…そして二日目は”Chicago”を演ったらしい)を真っ直ぐなMCと共にセットリストに織り交ぜていた。スティルスはまったくと言って良いほど喋らず、クロスビーは日本だろうがアメリカだろうが…という感じでマイペースに英語でおかまいなしに喋っていたり。3人の個性もよくわかって面白かった。何より、ステージで3人同士、曲間によく喋っている。バンドメンバーも含めてコミュニケーションを取りながらステージを進めているところからして仲の良さを思わせる。ちなみにバンドメンバーは2012年のライブ盤と同じ、サポート・ギターがシェーン・フォンテイン(またの名をミック・バラカン、ご存知ピーター・バラカンの弟)、ベースがケヴィン・マコーミック(近年のジャクソン・ブラウンのバックも演っている)、ドラムスはスティーヴィー・ディー、レコーディングでスティルスが弾いているフレーズを忠実に再現していたオルガンのトッド・コールドウェル、そしてCPRでお馴染みのデヴィッドの実子ジェイムス・レイモンドという布陣。

観た人は気付いたと思うけれど、近年心配していたスティルスの衰えが目立つステージでもあって。2009年のライブDVD『Live At Shepherd’s Bush』や2013年の新バンドThe Ridesでは復活しているように思えた声量が大分落ちていて。というかレコーディングならなんとか乗り切れてもライブは厳しいのかも。それでもナッシュはハモる時、声量の出ないスティルスとバランスを取るために時折マイクから下がったりしているように見えた。その、ハイトーンも伸び伸び出ていたナッシュと、復活後進化し続けているクロスビーが得意のディープ・ボイスを披露して大奮闘。ハイライトはクロスビーの”Long Time Gone”や”Almost Cut My Hair”だったんじゃないかな。新曲”What It Makes So”や”Somebody Home”も素晴らしかったし。いずれにせよ彼らのキャリアはそうやって誰かが誰かをカバーして、お互い支え合ってきた。かつてクロスビーがヤクで目が死んでいた時期だってあったわけですから。

そんなわけで、ジョニ・ミッチェル作の"Woodstock"やアンコール後の"Teach Your Children"のあとに"Suite:Judy Blue Eyes"を演ってくれることに密かな期待を寄せていた人もいると思うけれど、高音やファルセットの苦しい今のコンディションだと難しかったと思う。2012年のライブCD+DVD『2012』の輸入盤のシールに"Includes a Rare Performance of"Suite:Judy Blue Eyes"なんてあったのでアレレ?とは思っていた。ストラトから繰り出す爆音フレーズに往年の姿を見ることはできたけれど、ギターソロがなかなか決まらない。元々鈴木茂さんに似たタイプのギタリストで、何分かに一回、電流が走るようなフレーズがあった人だけれど。あのナマズ風の体格を見てもわかるけれど、思った通りに指がついていかない、というもどかしい感じも。ピックをやたら投げて指弾きしていたり。それでもバッファロー時代の"Bluebird"(コレ、近年はやたらポップなリフをくっつけて演っているんですね)や"For What It's Worth"にはただただ感動…アコギ・スティルスをディランのカバー"Girl From The North Country"でしか堪能できなかったのは残念だったけれど、腰が揺れる"Love The One You're With"なんかはもう最高だったし、アコギ弾きがエレキを弾くようになった、という手癖感満載のエレキのフレーズは実にディラン的で堪らない魅力があった(もちろんディランよりソロは上手いけれど)。ピッキングハーモニクスも彼らしくて良かった。クロスビー&ナッシュを聴いているとわかるけれど、やっぱりスティルス抜きだとどうしてもコーラス楽曲になってしまう所があるけれど、そこにロック魂を注入するのがスティルスの役割だった。CSNのファーストもクレジットを元にレコーディングされた音源を聴くとベースやギターにしてもスティルスのオーバーダブで大方作られていたわけで。ナッシュやクロスビーはレコーディングではほぼコーラス隊だったわけだ。今回ライブのオープニングだった"Carry On"にしても、全盛期のライブ音源やブートを掘り返してもレコーディングと同じ音は聴けない。つまりスティルスのコントロールの元でスタジオで作りこまれた音だったということなのだ。



あとはナッシュ楽曲では感傷的な” Just A Song Before I Go”が珍しいな、と思ったり。CSNってシングルでポップヒットした曲があまり無い印象だけどあるにはある。調べてみるとCSN&Yも含めるとビルボードのトップ40に入ったのが9曲。内ナッシュは5曲。クロスビー0曲、という。



Marrakesh Express (1969年28位・N)、”Suite: Judy Blue Eyes”(1969年21位・S)、”Woodstock”(1970年11位・S [Joni Mitchell])、”Teach Your Children”(1970年16位・N)、”Ohio”(1970年14位・Y)、”Our House”(1970年30位・N)、”Just A Song Before I Go”(1977年7位・N)、”Wasted On The Way”(1982年9位・N)、”Southern Cross”(1982年18位・S)



アルバムではクロスビーの存在感は凄いんだけれど。ライブでも”Guinevere”は筆舌に尽くしがたかったし…。でもこんなところが英・ホリーズ出身のポップなナッシュの面目躍如でありまして。こんな側面もこのバンドの面白いところ。"Our House"や"Teach Your Children"でのお客さんの喜びようと言ったら。ナッシュはステージでウドーさんへの謝辞を述べていて、60年代半ばからの知り合いだと言っていたけれど、ホリーズ時代からの付き合いなのでしょう。



…ということで話せばキリがないCSN。1974年の再結成ライブの音源CSNY 1974』も出たし(コレ、DVD映像も付いているけれど8曲のみ。完全盤のDVDはブートで見る限りコンディションの関係で出せなかったんだと思うけれど、素晴らしい…特に”Word Game”などスティルスのソロが神懸かり的です。)諸作聴きながら新旧音源を味わうのも一興。全体的なバンドの充実を思うと、また新作も出るかもしれないですね。

新バンドThe RidesなどスティルスおよびCSN関連の近作のレビューやこれまでの記事まとめ↓
http://d.hatena.ne.jp/markrock/searchdiary?word=stills

クロスビー2014年の新作『Croz』のレビュー↓
http://d.hatena.ne.jp/markrock/20140428


1st
Carry On/Questions
Military Madness
Long Time Gone
Southern Cross
Just A Song Before I Go
Delta
No More Lies
Marrakech Express
"To The Last Whale..." (A. Critical Mass B. Wind On The Water)
Our House
Deja Vu
Bluebird

2nd
Helplessly Hoping
Girl from The North Country
The Crow On the Cradle(Jackson Browne with Graham Nash)
What It Makes So
Guinevere
Somebody Home
Burning For Buddha
Almost Cut My Hair
Wooden Ships
For What It's Worth
Love The One You're With
(Encore)
Teach Your Children