いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

f:id:markrock:20190212213710j:image
いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp


2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230918110205j:image
2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
f:id:markrock:20230813101635j:image
2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの選曲・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230918104848j:image
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230918105526j:image
2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230408155636j:image
f:id:markrock:20230403220702j:image
f:id:markrock:20230403220638j:image
2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230129183945j:image
2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
購入はココをクリック
f:id:markrock:20230403220543j:image

Stephen Bishop / We’ll Talk About It Later In The Car

*[AOR] Stephen Bishop / We’ll Talk About It Later In The Car(BMG / 2019)

f:id:markrock:20200307184734j:plain

スティーヴン・ビショップ、2016年の『Blue Print』に続く2019年の新作。アマゾンでLPを予約していたのだけれど、なかなか入荷せず、結局強制キャンセルになってしまった。予約数が少なく、採算合わずにプレス見合わせかな…と思っていたら、ユニオンに入荷していて拍子抜けした。早速聴いてみる。リアルタイムで酷評しているレビューも読んだけれど、結構良いじゃないですか。歌詞もほぼ無視して、ただ音の要素だけを切り取って評価する日本のAORの美学からすると、バラエティに富んだ楽曲が逆にとっちらかった感じに聴こえてしまったのかも。でもスティーヴン・ビショップは私からすると、AORという感じはあまりせず、メロウなシンガー・ソングライターとしか言いようがない人。


ちなみに欧米のヨットロックと日本のAORっていう概念は、重なるようでちょっとズレている。日本のAORは美学を求めるというか、スティーリー・ダンを極北に、職人気質を賛美するみたいな風土があるけれど、ヨットロックっていう括りは、ハッキリ言ってちょっとダサめの歌謡ロックみたいなものですからね。カントリー・テイストのAORに至っては、堀内孝雄とか高山厳の世界。ちなみにそちらも大好物ですが、何か(笑)


今作は1970年代の未発表曲のリメイクからアルバム制作のアイデアを得たんだとか。ファーストを引用したジャケがそれを表している。老境に差し掛かって、初期衝動に還りたい、と思っているのかもしれない。人生、生と死は円環運動のようなもの。タイトルはスター・ウォーズレイア姫役、そしてポール・サイモンの元妻として知られる故キャリー・フィッシャー(スティーヴンとも親交があったが、2016年に亡くなった)が電話の相手に喋った「あとで車の中で話しましょう」に由来するんだとか。キャリーの母デビー・レイノルズの口癖だったという話もある。


ティーヴンは70年代初頭、メーガン・マックドナウ、ニック・デカロ、ジェイムス・リー・スタンリーなどに楽曲提供し、(リー・カンケルの紹介で)アート・ガーファンクル『Breakaway』に大抜擢されたところからキャリアが開けた人。そのアートの次作『Watermark』はジミー・ウェッブ曲集だったわけだけれど、そこに収録されていた”Someone Else”を今作『We’ll Talk About It Later In The Car』でスティーヴンがカバーしている。”Someone Else”は10代半ばのジミーが初めて作った曲だった。その初期衝動をもエネルギーにしようとしているようにさえ思える。そんなスティーヴンはその後、サタデー・ナイト・ライブジョン・ベルーシ人脈で映画音楽のメインストリームを突っ走り、スティーヴンをレスペクトするエリック・クラプトンフィル・コリンズらと親交を深め、輝かしい80年代ポピュラー音楽最良の時代を経験したのだった。だから今作は、そんな彼のキャリアや人生を振り返るムードを持った作品に思えた。


Side Aはバラードの”Almost Home”、90年代ポップ風の”One In A Million Girl”、そしてアメリカーナな”Like Mother Like Daughter”が印象に残った。一番らしくない”Like Mother Like Daughter”がPVに選ばれている。そしてSide Bはファーストの雰囲気そのもので、”The Day You Fall In Love With Me”や”Nora June”なんて往年のファンには涙ものかも…。”French Postcards”は”Unreleased”とあるけれど、当時(『BISH』の頃みたい)のアウトテイクと思われる。さらにボーナス・トラック扱いの”Tinseltown”は一聴すると1985年の『Bowling In Paris』のアウトテイクでは?これだけは音質があまり良くない。


ちなみにLPプレスのコンディション、少々プレスミスでは?と思われる音の揺れが見られる箇所もあったりしたけれど、内容に免じて、許す!

f:id:markrock:20200307184754j:plain

www.youtube.com