“霧の中のジョニー”といえば、ジョン・レイトン1961年の大ヒット曲”Johnny Remember Me”。フィル・スペクターとも並び称されるポップス狂ジョー・ミークのプロデュース。スペクターやミークのフォロワーである大滝詠一が”さらばシベリア鉄道”としてほぼ引用したのは有名な話。太田裕美のレコーディングもある。
アメリカン・ポップスのメロディの定石に日本語を載せると大滝ポップスが完成するわけだけれど、それを発明したのはシンコー・ミュージックの会長だった漣健児こと草野昌一その人。だから当然、漣健児訳詩の“霧の中のジョニー”は”さらばシベリア鉄道”に聴こえなくもない、というわけで。
漣健児訳詩の“霧の中のジョニー”を歌っていたのは、カバー・ポップス時代にヒットを飛ばした克美しげる。手元にあるのは東芝から出た計8曲収録の10インチ。坂本九とか森山加代子とか、そんな時代の匂い。そして加山雄三とかベンチャーズの日本盤の中古によくある感じのレコードの擦り切れ方(笑)。おまけにキズがひどすぎて音まで飛んじゃうんですが。ちなみに赤盤。
ちなみに「エイトマン」の主題歌を歌うなど一世を風靡した克美しげるだけれど、その後は落ちぶれて、銀座の女性に貢がせたあげく、不倫発覚を恐れて殺めてしまう…という壮絶な人生を送っている。フィル・スペクターのようだけれど、当然10年間刑務所に入ってもいる。ジャケットに映るこの時、そんな人生になることはよもや予想できなかっただろう。