いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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ハイファイレコードストアにて

markrock2018-01-30


そういえば昨年末は帰省の合間を縫いつつ、久々に渋谷・神宮前六丁目のハイファイレコードストアへ。渋谷というと、渋谷系という言葉に象徴されたように、日本が誇る屈指の中古レコード・タウンとして90年代から00年代にDJ文化の中心地として名を馳せた。個人的にはいまだにそんなイメージが無くならない。渋谷のタワレコにはパイドパイパーハウスがあり、レコファンHMVレコードショップもあり、そしてハイファイがあれば大丈夫、という自分なりの安心感がある。近年は適正市場となった音楽市場における、国内外に共通するアナログ・レコード回帰の流れもあった。



ところでしばらく前にヤフーニュースで取り上げられていた、レコードブーム検証みたいな記事を読んだけれど、そこでは、人間の可聴範囲内の音域を収録したCDに対するアナログ盤の音質の優位を引き合いに出して、「聞こえないものは聞こえない」と語られていた。これは果たしてどうだろう。この辺りは本当に議論するのが難しい。私の感覚からすると、まずは世代特有の愛着が大きいと思う。私のような90年代DJ文化を傍目で眺めながらも、レコード狂いになってしまった世代からすると、どう考えても大きいジャケットのアートワークを楽しめて、かつアナログ録音の強みがあり、当時受容されていたままに受容しうるレコードが断然いい、と思ってしまう。その一方で、CD移行期の80年代文化世代でDJ文化や黒人音楽、あるいは60〜70年代の音楽に親和性がなかった人は、CDに愛着を持っているのではないかと思う。アナログのレコ屋にコーナーが少ないジャンルが好きな人ですよね。そういう人は当然アナログはあまり聴かない、と。



そしてまた、最低限のクオリティのオーディオ環境で50年代から70年代にかけてのレコードのもつ真の実力を享受してこなかったならば、レコードの何が良いか、と言われてもわかりようがないのだと思う。まあつまりは、好きな方で聴けばよい、ということにはなるんですが。



で、ハイファイレコードストアでありまして。店頭にはライターの松永良平さんや店主の大江田信さんがいらっしゃる。高田渡に見出され、春一番でも演っている林亭の大江田さんですよ。こんな目利きの方々が選ぶレコードだから、悪いわけがない。しかも、一枚一枚、丁寧に磨かれ、コンディションが表記され、レコードについての愛情溢れるレビューが書かれたプライスカードが付いている。総合芸術のような中古屋さんですよね。音楽への愛情をひしひしと感じるかどうか、という重要な部分。長年愛されているお店ならではだと思う。知らない音楽がまだこんなにあるんだ、という驚きも毎回。伺った時は海外からのお客さんで溢れておりました。

そして、死ぬほど好きなマリーナ・ショウの大名盤『Who Is This Bitch, Anyway?』をとうとうアナログで入手。相当の傷盤だったから、安価で入手できたけれど、これは念願だった。冒頭の男女の会話から”Street Walking Woman”に滑り込む、このスリリングさはアタマから聴かないとダメなんですよね。タメにタメて、来たー!という。サザン”いとしのエリー”の元ネタになっている”You Taught Me How to Speak in Love”、そしてユージン・マクダニエルズの”Feel Like Makin' Love”になだれ込むという…完璧な流れですよね。デイヴィッド.T. ウォーカーのOdeからのソロ3枚も聴きたくなってきてしまう。

あとはカーリー&ルーシー・サイモンのサイモン・シスターズの『Winkin’ Blinkin’ and NOD』。Kappから出た1965年のオリジナル。これも針飛び盤と明記されていたゆえ激安でした。S&Gのファーストとも重なる清廉なイメージ。”You’re So Vain〜”と歌う後年のカーリーではなく純真で。

さらに、ソングライターの自演盤、というのをジャンルを問わず長年集めてきたけれど、このハロルド・アーレンの『Harold Arlen Sings』は持っていなかった。ハロルド・アーレンといえば、オズの魔法使いで世に出たスタンダード”Over The Rainbow”をはじめ、アメリカのジャズ・ポピュラー作曲家の伝説的人物。1983年にお亡くなりになっていて、これは1974年の2枚組。ちょっとキダタローに似てますね。2枚目はミュージカルJamaicaのピアノと唄のデモ演奏を収録。これは付け足し感がありますが。で、1枚目は小粋な雰囲気でなかなか良い。マット・デニス、ボブ・ドロー、そういう小唄系の味ですね。ただ、そうした粋人に比べると、やはり作曲家が本分の人ですから、特別唄が上手いとは言い難いわけだけれど(笑)



帰り際に、畏れ多くも大江田さんからご挨拶頂けて、嬉しかった。実は私のファースト・アルバム『蒼い蜜柑』を置かせていただいているご縁があり、いつか直接お訪ねしたいと思っていたのだった。大江田さんの林亭の相棒、マルチプレイヤー佐久間順平さんが参加している、フォーク・シンガー瀬戸口修さん2009年のシングル『Bolero』。このシングルもハイファイで扱っていて、「想い」という曲には私がコーラスで参加している。そんなこんなで、ファースト・アルバムの販売を快諾してくれたのかもしれない、と今にして思った。嬉しいご縁!