アンダース&ポンシアのピーター・アンダースが昨年亡くなった。余り話題にならず、寂しい死だったような気もする。晩年にリリースしたCD『So Far』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110306)のプロモーションのために作られたホームページ(http://peteranders.net/)はなかなか愛があった。CDにはエルヴィスに提供した曲の印税の小切手なんかがアートワークに含まれていて。年をとるまでそれを誇りにしていたんだなあ、と思ったり。ちなみに左のCDは64曲入りの謎の2枚組コンピ。
さて、ピーター・アンダースが1970年にプロデュースを手がけたレコードがあることは余り知られていない。たぶん日本にはリアルタイムで入ってこなかったはず。同じイタロ系のシンガー、ディック・ドマーニのアルバム『Dick Domane』でMap Cityからのリリース。Map Cityはイタロ・マフィアが絡んでいて、アルバム再発は難しいなんていう話も。Map Cityでディック・ドマーニはブルージェイズというグループを組んでいて、1枚のアルバムやシングル(アンダースのプロデュース)を出している。Map Cityはボビー・ブルームのシングルも出していたり。あとはマルディ・グラズやイエスタデイズ・チルドレンのアルバムとか。
で、このディック・ドマーニ盤はサイケデリック色があるので、アメリカではサイケやガレージの括りで評価されているみたいだけれど、普通にアンダース的なイタロ・ポップとして聴ける作品。ブライアン・ギャリのシングルとか、ドン・シコーニとか、その辺が好きであれば好物な音。アメリカのイタロ系でちょいロックに行った音は、歌のいなたいバタ臭さとサウンドのバランスがなかなかクセになる。シュガーローフのジェリー・コルベッタもそう。収録曲のうちHang Onはブルージェイズのシングルそのものだから、アルバム用に曲が足りなくてねじ込んだのだろう。
ディック・ドマーニは1973年にRCAからホワイト・ウォーターというバンドで唯一作『Out Of The Darkness』をリリースしている。こちらはヴィニ・ポンシアのプロデュース、ということで、アンダース&ポンシアにプロデュースしてもらった幸運な人、ということになる。こちらは結構ファンキーでソウルフルな仕上がり。その後も音楽活動を続けて、自主盤をリリースしたりもしていたみたいだけれど、公式HPも閉じちゃってるみたいだし、現在ご存命なのかもわからない。
そんなこんなでアンダース&ポンシア関係を色々と出して聴いている。ピーターの1972年、ファミリー・プロダクションから出たソロ『Peter Anders』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20070126)。売れる前のビリー・ジョエルがピアノで参加している。ビリーのファースト『Cold Spring Harbor』はファミリー・プロダクションからでているけれど、回転数が間違っていたり、散々なデビューでしたが、オリ盤の音は良かった(→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130508)。プロデューサーのアーティー・リップは発見したビリーに粘着して、その後相当搾取するわけです。ソロデビューの恩人とはいえ、ビリーは嫌だったろうなぁ。
『Peter Anders』は1976年にタイガーリリーから収録曲を微妙に変えて再発されている。(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110108)。
そもそも始まりは『アンダース&ポンシア ポップ・ワークス』。プロデュースした長門芳郎さんのパイドについては→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20150818を。
アンダース&ポンシアのデビューはドゥ・ワップのヴァイデルズ。Mr.Lonelyはとても良い曲。
イノセンスとトレードウィンズ、甘酸っぱい過ぎるポップ・サウンド!
こちらのちょいスワンピーなアンダース&ポンシア盤もなかなか。リチャード・ペリーのプロデュースで、バックはレッキング・クルー。
ヴィニ・ポンシアはキッスやリンゴ・スターなどを手がけて、大プロデューサーになっていくわけです。アンダース&ポンシア気分のポップ・マインドを感じられるのはザ・ムーヴィーズ1976年の『The Movies』かな。ヴィニのプロデュース。
関連でトニー・ブルーノのレビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20161127を!