うわあ!これは最高傑作!!毎回そう思うけれど、今度は段違い。息を飲んでしまった。もう聴きましたか?昨年2016年10月にリリースされたデヴィッド・クロスビー(http://www.davidcrosby.com/)の新作ソロアルバム『Lighthouse』。発売前から注文した輸入LP(ダウンロード・コード付)だけれど、再入荷未定とかで大分待たされてしまった。もしかして、結構向こうでも数が出ているのかも。てか、75歳にしてこの最高傑作って凄くないですか!
正直一番聴きたかったデヴィッド・クロスビーかもしれない。今までの作品で言えば1971年のファースト『If I Could Only Remember My Name』の雰囲気に限りなく近い。バッキングの主体がデヴィッドのリアルな生アコギなんですよ。死ぬほど良い音。変則チューニングのギター、ハーモニー、そしてマイケル・リーグの演奏する12弦やアコギがシンプルに絡む。基本二人で作ったアルバム。結構プログレッシブな展開の曲もあって、耳を奪われる。もちろんここにナッシュの客演があれば…と妄想しなくも無いけれど、クロスビー曲だけ集めて聴いているようなクロスビー・ファンにはこっちの方が良いかも。声もすごく出ている。1989年の復活盤にしても、アルバムに散漫な駄曲が少なからず入っていたクロスビー、曲としての統一性は、ヤクが抜けてからのほうがもちろん良い。だけど、その妖しげな魅力が半減したようで、ちょっと物足りないところもあった。
ちなみに、ぼくがリアルタイムで聴いたデヴィッドのソロは1993年の『Thousand Roads』で、フィル・コリンズ、ドン・ウォズ、グリン・ジョンズ、フィル・ラモーンらが手がけたボーカル・アルバムの趣きだったけれど、これは本当によく聴いた。ジミー・ウェッブやマーク・コーン、スティーヴン・ビショップの曲もあって。その後、CPRやクロスビー&ナッシュの近作も本当に素晴らしくて、ジョニ・ミッチェルの洗練と同じ所に辿り着いていくのだな、と思ったものだけれど。でも、音が足されれば足されるほど、失われている何かもある。
前作2014年の『Croz』(レビューは→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20140428)は、CPRの延長線上にある洗練された音で、今までで最高の仕上がりかな、などと思っていたんだけれど、今回の『Lighthouse』は完全にそれを超えている。実子で前作のプロデューサーだったジェイムス・レイモンドもちょっと悔しいんじゃないかな。
妻のジャンが冒頭のThing We Do For Loveを、そして、ぼくが曲作りのモデルにしているくらい大好きなシンガー・ソングライター、マーク・コーンがPaint You A Pictureの詩を手がけていたり。他にもジャズ・シンガーのベッカ・スティーヴンス(http://www.beccastevens.com/)やトロントの女性シンガーソングライター、ミシェル・ウィリス(http://www.michellewillis.ca/)がBy The Light Of Common Dayで共演しているなどゲスト参加もある。彼女ら二人は昨年末のデヴィッドの新作お披露目ツアーにも参加したみたい。それで、何と言ってもプロデューサーのマイケル・リーグ。ジャズやロックをベースにしたテキサスのジャムバンド、スナーキー・パピー(Snarky Puppy)のリーダー。バンドからはピアノのビル・ローレンスも参加している。で、プロデュースのきっかけはファースト『If I Could Only Remember My Name』の大ファンでアプローチしたことにあるそうだ。すぐに一緒に曲が作れて…という話みたい。きっとクロスビーの刺激にもなったはず。しかしドラッグ禍で廃人同然になったミュージシャンが、ここまで復活したことに、人間の可能性にまで思いを馳せてしまうような…。
『Lighthouse』のアナログは分厚い重量盤。雑なアメリカ盤だから、新品でもちょっと歪んでいたりして、この辺の個体差があるのはいつも通り。音にはほぼ影響ありませんでした。アコギ主体の音ゆえ、アナログで聴くのがなかなか良い。何といっても、ジャケットが気に入った。アナログサイズでも美麗な灯台のアートワーク。そう、アメリカ議会を批判する”Capitol”という曲も息子ジェイムス・レイモンドのサウンドクラウド(https://soundcloud.com/jamesjraymond/david-crosby-capitol)にアップされている。