お正月は、ぼくのアルバムジャケットをデザインしてもらっているミュージシャンの友人とレコードをひたすら聴く会をやった。うーん、とにかく結論として、LPの音はCDと違う、ということだった。わざわざアナログのカセットMTRで録音した音をプロツールスに落とし込むっていう、拘りのレコーディングでCDを作っている彼自身、LP愛好家であるわけなんだけど、改めて、という。特にアコースティック・ギターの中低域の音色と、ベースは比べ物にならないな、と。カート・ベッチャーやポール・マッカートニー関連を聴き比べたり、ベアフット・ジェリーの音作りや匂いまくるアシッド感に改めて驚嘆したり。麻薬が入っている音楽と入っていない音楽ってのは一発でわかりますよね。ASKAは今思うと、SAY YES辺りからフワ〜ッとした浮遊感のあるアシッド・サウンドだった。ぼくは彼の音楽、大好きなんですが。そういえば、あの事件の1週間位前に、唐突にASKAの1988年のファースト・ソロ『SCENE』のアナログってのが聴きたくなって、中古盤屋で探して取り寄せたってことがありました。何の虫の知らせだったんだろう。
ASKAがチャゲ&飛鳥時代に書いた曲でオンリー・ロンリーって曲があったけれど、その語感はYou’re Only Lonelyかな。ロイ・オービソンのOnly The Lonelyではないだろう。さて、唐突ですが2011年に出たJ.D.サウザーのセルフカバー盤『Natural History』のアナログ。You’re Only Lonelyも入っています。コレ、彼の公式サイトで一時期売っていた。6年前は今ほど新譜アナログ熱を帯びていなかったためか、最後は彼のサイトでCDと抱き合わせで叩き売りされていたのを思い出す。なぜかその時手を出さなかったのだけれど、今になってCDと聴き比べしてみたいと思うに至って。しかし時すでに遅し!サイトでは販売終了、2015年の新作『Tenderness』(レビュー→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20150625)のアナログが日本のレコ屋にもたくさん入荷した割に、売れ残っていたのと対照的で。やっぱり有名曲のセルフカバー盤の方が売れたんだろうな。てなわけで、見つけるのに意外と難航して、最後はレコーディングが行われたナッシュビルの業者が持っている在庫を取り寄せた。内容に関しては下に2011年に書いたレビュー(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20110611)を参考にして頂きたい。
で、ジャケットは当時66歳(現在は71歳)のJDの大写し。でも、CDサイズの画像の引き伸ばしによって、わずかに画質が粗くなっていたのはいただけないかな(笑)。CDで一つだけ不満だったのは、コンデンサー・マイク臭が強かったこと。怖い位にリアルで、音はシャリシャリしていて低音が弱い感じがしたから。LPだとどうか…と期待したんだけれど、幾分か中低音域が強調され、耳に優しい音になっていた。これはLPならでは、な音の特性が発揮されており嬉しい限り。ただ、近年の新譜アナログに共通しているのは、デジタルでマスタリングされたものをアナログにしているだけだから、基本的にはCDとそう変わらないということ。もちろんLPの再生環境では強調される音域が異なるからか、今回のJD盤みたいにさらに心地よくなる場合もある。でもこの辺りが、そもそもアナログ用に作られていた過去のアナログと新譜アナログの大きな違いかな。新譜アナログに劇的な音の違いはない、ということ。90年代にリアルタイムでリリースされていたレコードまでは、劇的なアナログの音のよさがある、というのは今まで色々聴いてみた実感。まあいまだにアナログだけ別のミックスやマスタリングをしている拘りミュージシャンもいるにはいるけれど。普通はコストもかかるしそこまで出来ないという。
ちなみにJDのソロ『John David Souther』『Black Rose』『Home By Dawn』の3枚がOmnivore recordingsより、デモ音源などのボーナス・トラックやアウトテイクなどを含めて昨2016年の1〜2月に再発された(http://omnivorerecordings.com/artist/jd-souther/)。イーグルスの楽曲を支えて来た優秀なソングライターとしてのJD、再開したライブ活動も充実し、改めて注目が集まっているタイミングでの拡大版リリースだった。それにしてもファースト『John David Souther』の再発リリースの直後、グレン・フライが亡くなったことは残念で悲しい出来事だった。そもそもグレンの死でJDを思い出し、再発リリースを知ったのだった。