いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 ジョニー・マーサーの自演盤

markrock2016-12-24



作詞家・シンガーのジョニー・マーサーといえば、ジャズの世界では泣く子も黙る…というレベルの人。”Autumn Leaves”の詩もそうだし、ヘンリー・マンシーニとのコンビでは”Days Of Wine And Roses”や”Moon River”を。ハロルド・アーレンとは”Come Rain Or Come Shine”や”Blues In The Night”などを、ホーギー・カーマイケルとは”Skylark”や”Lazy Bones”だとか。他にも”Satin Doll”や”Day In, Day Out”、”Jeepers, Creepers!"などなど。詳細なソング・リストもありますが(http://songwritershalloffame.org/songs/detailed/C18)。キャピトル・レコードの創設者の一人でもありました。

ロック以前のポピュラー・ミュージックを熱心に聴くようになって気付いたのは、当然ながらロック世代の音楽的肥やしになっていたのだと言うこと。老いたロック第一(・二)世代がジャズ・スタンダードを取り上げたりすると、ファンにガッカリされたりすることもあるけれど、実はロックとプレ・ロックは地続きなのかな、と。ロックの名曲とジャズ・スタンダード、歌詞や曲のタイトルが同じものが多いでしょう。これは多分ビートに乗せやすい気の利いた歌詞のフレーズが、作曲時に無意識に鼻歌のように出てきて、そのままタイトルにしちゃった、というパターンでしょう。日本で言えば桑田佳祐的なやり方。ポール・マッカートニージョニー・マーサーと同名異曲の"P.S. I Love You"を書いているし。さらにポールには死の直前1975年のジョニー・マーサーに共作を申し出たというエピソードもある。ジョニーの体調が優れず実現しなかったみたいだけれど。ポール2012年のスタンダード集『Kisses on the Bottom』ではジョニー・マーサーの"Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive"を取り上げていた。この盤はポールの新曲とジャズ・スタンダードを並べるという構成で。ジャズ・スタンダードの列に自分の曲を滑り込ませたい、という…ポールほどのソングライターでありながら、微笑ましいまでの妄想が伺えますよね。

ま、とはいえ、ロックに先行するジャズ・スタンダードが真のオリジナルか、というと、さらにそのイメージの源泉になるものがあったりするんだけれど。その辺りが面白いところ。



で、ジョニー・マーサーを取り上げたのは、先日訪ねた下北沢フラッシュ・ディスク・ランチにて、長らく探していたジョニー・マーサーの自演盤『Sings Just For Fun』を見つけたもので。しかも300円箱に。素敵すぎます。1956年にJupiter Recordsからリリースされた、ポール・スミス・トリオとコーラスのノータブルズとの共演盤。自身が作詞した”Blues In The Night”とか”Skylark、”Accentuate The Positive”、そしてこれは好きで取り上げたのであろう”St.Louis Blues”なんかを歌っている。アルバム・タイトルにも余裕を感じます。

あと手元にあるジョニー・マーサー歌唱盤は『Accentuate The Positive』。これは翌1957年にキャピトルからリリースされたもの。こちらはポール・ウェストン、アルヴィノ・レイらが手がけるオーケストラをバックに。数曲ではコーラスのパイド・パイパーズと共演している。

あと一番有名なのは、1961年にアトコからリリースされた、ボビー・ダーリンとの共演盤Bobby Darin & Johnny Mercer『Two Of A Kind』でしょう。(当時の)若者とおじさんが、ビリー・メイのオーケストラをバックに軽妙な掛け合いでスイングしまくる名盤ですが、二人が共作したタイトル曲がとにかく素晴らしい。ボビー・ダーリンはどの作品も良いけれど、個人的には特によく針を落とす盤。

1976年に亡くなったジョニー・マーサーだけれど、晩年の1973〜74年に行ったロンドン・Pyeスタジオにおける録音はCD2枚組に編集されている。CDのタイトルは『Moon River Johnny Mercer Sings The Johnny Mercer Songbook』。黒眼鏡に帽子姿もなかなかオシャレです。60代半ばの録音だけれど、内容は激渋。”Moon River”をつぶやくようにスイングしていたり。”Autumn Leaves”、”Days Of Wine And Roses”、”Come Rain Or Come Shine”、”Satin Doll”、”Goody-Goody”など諸々の代表曲を網羅している。オケも70年代と言うことで、大分現代的になっている印象。”That Old Black Magic”はロック・コンボをバックにしているし。

CDではキャピトル音源で構成された1991年の『Capitol Sings Johnny Mercer』が、オリジナル・シンガーによる歌唱も網羅しつつ、代表曲を一望できる好編集盤だ。