いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 Johnny Winter

markrock2014-09-18

/ Step Back ( MEGAFORCE RECORDS / 2014 )

嗚呼ジョニー・ウィンター!まさか遺作になってしまうなんて…最近こんなことも多いから、いちいち事実を受け止めるのに精一杯で、あまり筆が進まない。ロビン・ウィリアムスとかもね…とはいえ晩年にこれだけの充実作を2つも残してくれた、ということは、低迷期が長かっただけに(個人的には80〜90年代作はブルーズ・オリエンテッドな充実盤ばかりだとも思うけれど、ジョニー・ウィンター・アンド』を知るリスナーには物足りないか…)、ファンには嬉しかったのではないかな。しかも2011年には奇跡の来日も果たしてくれたし!個人的にはコレに尽きるかな。2011年の公演は行けなかったけれど(WOWOWの映像がDVD化(『Live From Japan』)されているけど、この映像も残されたことに感謝…)、2012年の日比谷野音でサニー・ランドレスらと競演したライブ(JAPAN BLUES & SOUL CARNIVAL 2012)は凄かった。ジョニー・ウィンターはもうダメみたい、とか本当に弾けるのか、みたいな(かといってYouTubeで近況を確認したりなんて野暮なことはしない)往年のギター・キッズが大集結したそのライブはびっくりするくらい良くって。その時に書いたライブ・レポートちょっと引用してみると…

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ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバル2012でのジョニー・ウィンター来日公演、日比谷野外音楽堂、行って参りました!!ギター持って立っただけで歓声、というのはハープに息を吹きかけただけで歓声、というボブ・ディランに匹敵する。まさにオーラが違うということを痛感。



サニー・ランドレスもトリオとは思えぬ音の分厚さで流石のプレイ。見た目は現在のスティーブ・ハウみたいな細身なんだけれど、ギターを幾分か高く抱えて繰り出すスライド・プレイは唯一無二。殆どミスタッチはなく、職人の域に達していたと思う。客を乗らせるみたいなスタイルじゃなくて、ギターとサニーの対話を見ているだけでこっちが熱くなると言う、そんなスタイル。近藤房之介も全然良かったのだけれど、サニーのバンドから音の熱さが違った。実はブルーズはドラムスのパワーによるものも大きいなと思ったり。



そしてジョニー御大ですよ。ステージに出てくるんだけれど、高齢(とは言っても68)と視力・体力の衰えからかステージ袖からよろよろと介護認定のおじいちゃんのように登場。もうこれだけで泣けてくるんだけれど、黒いピアノ用のイスみたいなのに座ってヘッドレスのギターを抱えると繰り出すギター・リックは往年のジョニーそのもの!しかもパワフルなバンドの音に全然負けてない音量、そして凶器のようなスライドの音色…もう打ちのめされました。全然衰えてないじゃないですか。ジョニーというとブルーズがもちろんルーツだけれど、多くの曲のビートはロックンロールでありまして、そこが彼の持ち味だったわけだけれど、今回のライブも枯れたスロウ・ブルーズに逃げる気なんぞ全くなく、前半で"Good Morning Little Scholl Girl"や"Johnny B.Goode"をロックにキメてきて全く老け込むつもりなし!手だけ見てると手数が多く往年のジョニー節なのだ。



ボブ・ディランの"Highway 61"や"Got My Mojo Walking"やらラストのサニー・ランドレスも交えたセッションでのエルモア・ナンバー"Dust My Broom"まで、ゴリゴリおしまくる。ボーカルもかなりの迫力でしたよ。YouTubeに今年1月のデヴィッド・レターマン・ショウの映像(下にリンク貼っておきました)があったけれど(『Roots』のプロモーション)あれを見ると今年のジョニーの充実っぷりがわかるかも。



ちなみに客席は相当いかついオヤジ・ファンが多く。。いかにもブルーズ、ですなぁ。とは言えブルーズは若手にもうちょっとアピールして欲しいものでありまして。改めてブルーズは面白く飽きない音楽だと今日は色々な出演者を見て再認識してしまった。そうそう、司会のゴトウゆうぞうさんはアッパレ名芸人だった!



一緒に行った往年のリアル・タイム・ロック・ファンの大先輩が言うには、昨年初めてというジョニーの来日が遅れたのは服用している薬の認定が日本で認められなかったからだとか。ううむ、なるほど。しかし、こうなったら毎年来て欲しい。行きますよ!!お金を払う価値のあるライブってのはそうあるものじゃないし。

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ファイヤーバードのスライドのうねりに全聴衆が全神経を集中させる、いやはや、叶うならもう一度、あんなライブの現場に身を置きたいものだ…



さて、遺作『Step Back』を見てみよう。輸入盤もそこまで安価ではなく(1800円位)、ダウンロード・カード無しの輸入LPが日本盤とほぼ同価格(2500円位)、ということで、日本盤CDを選んだリスナーも多いかもしれない。1曲1曲が丁寧に作り込まれていて、プロデューサーでバンドのギタリストでもあるポール・ネルスン(ライブでも出過ぎず、ジョニー御大を立てていた)がおじいちゃんの介護のごとく、老ジョニーをレスペクトし、慈しみながら、共演相手を決め、アルバムを作っていった様子が見て取れる。圧倒的に力強い歌声は晩年のライブでも証明済み。前作『ROOTS』(2011年)同様の素晴らしい作品。ロングヘアーでファイヤーバードを弾きまくる往時の姿と比べると見た目の衰えを話している人が多いけれど、70歳ですから年相応でしょう。視力もおぼつかない中、座って一心にギターを弾く姿…いつか見た「最後の琵琶法師」にも近い執念を感じたものだ。

ライブ定番ではなく、“Unchain My Heart”(with ブルース・ブラザーズ・ホーンズ)、”Who Do You Love”、”Long Tall Sally”(なんとレズリー・ウェストとの共演)、”Mojo Hand”(with ジョー・ペリー)といった有名曲を料理しているのも注目だし、他にもエリック・クラプトンとボビー・ブランドの”Don’t Want No Woman”を演ったり、ブライアン・セッツァーベン・ハーパーZZトップのビリー・ギボンズドクター・ジョン、ジョー・ボナマッサなんて布陣も、前作のゲスト・プレイヤーであるサニー・ランドレス、ウォーレン・ヘイズ、デレク・トラックス、スーザン・テデスキ、ヴィンス・ギル達に勝るとも劣らない。



しかし、プロモーションも行われた後の突然の死に次いで世に送られた遺作を前にすると、サン・ハウスの代名詞”Death Letter”なんてのが実に重く響いてくる。ジョニーもドブロで全編弾き語っている。演奏している内にデルタ・ブルーズマンの魂が乗り移ってくるのがわかる。このアルバムがジョニーのデス・レターだなんて、悪い冗談だとしか思えないけれど、そんな事実もどうしようもなくブルーズだ。



ちなみに安っぽいピックが封入されていて、それもジョニー・ウィンターらしくてイイ。またこれから、ジョニー・ウィンター経由で色々と聴いてみようかな。テキサス・ローカルのガレージ系コンピなんかは初期ジョニーの音と共通するものがあって面白いし。そして、ジョニー・ウィンター・バンドのトミー・シャノンとダブル・トラブルで演奏することになったスティヴィー・レイ・ヴォーン、さらにスティヴィーと共演盤も出したロニー・マックと…ギターを持ちながら、ね。