いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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哀しみのダンス

markrock2016-11-17




ただでさえ世界の成り行きに呆然としているのに、舞い込んでくる訃報は心をざわつかせる。モーズ・アリスンまで!結構なお歳だったわけだけど。よくよく思えば今年もぽつぽつ訃報があった。でもここへ来てどっと…りりィさんも驚いたし…私の母と同い年だったから。バイ・バイ・セッション・バンドは日本のスタジオミュージシャンの最高峰とも言えるメンバーが入れ替わり立ち替わり参加していた。フォークがムーブメントとして売れていたから、どちらかと言えばメジャーになれなかったロック志向のミュージシャンが集ったわけだろう。80年代の音楽シーンはそんなメンバーが今度は作り出したものだった。でもやはりその求心力、りりィさん自身の魅力が大きかったからではないかな。ちなみに80年前後も結構良いレコード有るんですが、『たまねぎ』『ダルシマ』『タエコ』『ライヴ』あたりが日本の70年代の女性SSWの傑作だと思っている。五輪真弓ユーミンとりりィ、って感じ。


そしてレナード・コーエン。訃報記事にノーベル文学賞騒動もあってかディランの名前も出されていたけれど。まあコロンビアでジョン・ハモンド、だから。そうなるのかな。新作も出たばかりで、オッ元気だな、とか思っていたところだった。結局遺作もまだ買えずじまいだ。2014年の『Live in Dublin』なんかもとっても良かった。観ようと思って先ほど探したけれど、こういう時に限ってどこかに埋もれて出てこない。ほとんどの作品にハズレがなく、詩人だからじっくり歌詞を読みながら読んだり、したものです。元々スザンヌがジュディ・コリンズに歌われたのが世に広く知られるきっかけだったけれど、楽曲がカバーされることが多かった人で。オムニバスもあるし、ジェニファー・ウォーンズのカバー集も本当に良く聴いた。評判は良くないけれど、フィル・スペクターの貴重なプロデュース作品があるのも最高だし。そう、中古盤を買ったら、誰かに当てたサインが書かれていたなんてこともあった。



そしてレオン・ラッセルね…先日音楽好きのおやぢバンドのメンバーに訃報を教えていただき…落涙。。近年も来日していたわけだし、観に行けば良かった、と本気で後悔した。レッキングクルーの一員として、大滝詠一のナイアガラ・サウンドに継承される鉄板・ドリーミーなアレンジやプレイも最高だったし、スワンプ・シーンの中核として、シンガー・ソングライターとしても、燻し銀の歌声も最高でした。アサイラムクワイアを初めて聴いた時の期待感とか。メアリー・ラッセルとの共演盤のメロウな味わいとか。




ジョー・コッカーもそう言えば2014年に亡くなりました。エルトン・ジョンとの共演作が6年前に出たときは、とうとうレオン・ラッセルがメジャーなシーンにカムバックする!と嬉しく思ったもので。この共演作ジャケ含めて実に完成度が高かった(http://d.hatena.ne.jp/markrock/20101107)。90〜00年代はジャケがかなりチープな作品が多かったから。ニュー・グラス・リヴァイヴァルとの共演作のジャケはヒドかったなぁ。ハンク・ウィルソンの第4弾。でも内容は最高で!今はハンク・ウィルソンの第2弾を聴きながら書いている。追悼盤、ということでエルトン・ジョンとの共演作『The Union』のレビューを再掲します。ちなみにシングルカットで雰囲気のある45回転シングルもリリースされていました。


Elton John / Leon Russell / The Union ( Decca / 2010 )

興奮のデュオ新作。DVD付きの方を輸入盤で入手。最近日本盤はトンと買わなくなったな。安さが一因。



さて、アメリカとイギリスを代表するピアノマンである、レオン・ラッセルエルトン・ジョンがまさかの邂逅。60年代は売れっ子セッションメンとして、70年代にはロック界の顔役だったことを思うと、近年細々とした活動が目立ったレオンにとっては、久々のメジャー復帰。エルトンとビリー・ジョエルはツアーはすれど、共演盤という発想は出なかった。ビリーとエルトンの方が音楽的に近しいモノがあるから、レオンとじゃあエルトンと言えど刺激を感じたのかもね…なんて思いつつブックレットを読み進めていって、その感動的なくだりに涙が出た。



なんでも2008年、エルトンの私生活上のパートナーであるデヴィッド・ファーニッシュと音楽番組を一緒にプロデュースした際(エルヴィス・コステロが出演)、長らく忘れ去っていた3人のシンガー・ソングライターについて話し合ったとか。その3人というのが、ローラ・ニーロ、デヴィッド・アクルス(まさかこの名がエルトンから出てくるとは…)、そしてレオン・ラッセルでありまして。で、3人の音楽を知らなかったデヴィド・ファーニッシュは、iPodに彼らの音楽を入れることにした、と。その中からレオンの『Retrospective』(ベスト盤ですな)を聴かせてもらうことになったエルトン、突然涙が止まらなくなり、彼の音楽が人生における最も美しく素晴らしい時をもたらしてくれたことに気づき…さらに、こんなにも素晴らしい音楽を人々が忘れ去ってしまっていることに怒りを覚えたんだとか。



思い起こせば若き日のアイドルだったレオンと1970年にLAのライブハウス、トルバドールで出会い、レオンはイギリスからやってきたエルトンとの共演を快く快諾したという。ディレイニー&ボニーのツアーやジョー・コッカーとのマッド・ドッグス&イングリッシュマン、そしてチャリティ・イベントの先駆でもあるコンサート・フォー・バングラディシュで一世を風靡したレオンと、”Your Song”のブレイクで一躍ポップスターの仲間入りをしたエルトンの2人が再び重なり合うことはなかったわけだが、ひょんなことでレオンの音楽に突き動かされたエルトン。アメリカにおけるマネージャーを務めるジョニー・バービスがかつてシェルター・レコードのスタッフだった関係から、レオンと連絡が取れて、電話越しに旧交を温めた。その後早速T・ボーン・バーネットに初めて連絡を取り、プロデュースを依頼して…なんだかトントン拍子の夢のような話で、読んでいるだけで胸が熱くなった。



盤の中身は最高!レオン、エルトン&バーニー・トーピンのそれぞれの単独作に、レオン&エルトンやレオン&バーニーの共作も加えて。ボーカルを2人で取るものが特にぐっと来る。昨日このブログで取り上げたロバート・プラント&アリスン・クラウス盤もTボーンのプロデュースだったので、マーク・リボーやジェリー・ベルローズ、デニス・クロウチとか、その盤とも被ったメンツではあるけれど、あっちよりナチュラルな音で、個人的には好みかな。演奏では2人のピアノはもちろん、他にもジム・ケルトナー、ドン・ウォズ、ロバート・ランドルフ、ドイル・ブラムホールⅡ、ブッカー・T・ジョーンズが。コーラスではビル・カントス、ジェイスン・シェフ、ルー・パーディニなんてAORな人が参加している。さらにさらに、”When Love Is Dying”ではコーラスにブライアン・ウィルソン、”Gone To Shiloh”ではニール・ヤングがボーカルを聴かせている。ゴスペル風の女声コーラスもとても良い。



手元にあるのは16曲入り。DVD入りの方が2曲多いので要注意だ。2人が全く衰えていないところがこの盤の価値を高めている。メイキングのDVD(カナリ短い…)を観て、”Border Song”辺りはレオンの影響なのかな、と思ってしまった。こんなベテランになっていながらも、イギリス人がアメリカ音楽に気を許しつつ、でも地が出てしまう感じが良い。冒頭の”If It Wasn’t For Bad”はレオンの会心の1曲で最も売れ線かも。