*[コラム] 札幌のレコード屋
加奈崎芳太郎50周年記念コンサート行商の翌日、19時の飛行機までの間は…というと、書店のチェックと、レコードしか思いつかなかった。東京にいてもやることは一緒。書店はといいますと、札幌駅近くの紀伊國屋書店で発見!面出しで置いて頂けて感謝です。
レコ屋は手始めにすすきの近く狸小路のフレッシュ・エアーという店。早速有名どころからマニアックなレコまで極めてディープ!店の前の300円棚でMurray Headの1987年盤『Sooner Or Later』を発見しただけで、やるな!と思ってしまう。
札幌はディスクユニオンなど中古レコードチェーンが入っていないので、店主独自の品揃えが生きている。ユニオンも好きではあるし、チェーンとはいえ地域により雰囲気も違ったりするんだけれど、一面やはり画一的ではある。で、このお店に入ると、どこから見るか迷う程、天井まで所狭しとレコの山!オールジャンルのこういう店が札幌の音楽文化を育てているのだろう。客足も途絶えない。値段も1000円台と極めて良心的。コロンビアから1972年にリリースされたChris Ducey在籍のデュオPrailie Madnessをまず発見。
Chris Duceyの唯一のソロは持っていた。聴いてみると、エルトン・ジョンとリオン・ラッセルを足したような(彼ら、最後は共演しましたが)、スワンピーで時に叙情的なピアノ・ロック。プロデュースがプロコル・ハルムのMatthew Fisherだったので納得。そして、リプロ盤なんだけど、ジャケの質感も良くできているMellow Candleのカルト名作『Swaddling Songs』、そしてabcから1972年にSteve Barriのプロデュースでリリースされたカントリー・ロック・バンドCherokeeの同名盤『Cherokee』を入手。何気にベースが全編バーズのChris Hillmanだったことに驚いた。Sneaky Peteもペダル・スティールで参加。幸先よし。そういえば店名のFresh AirというB級バンドのLPがEpicにあったことを思い出して店長さんに言うと、「あ~」という返事。
次は通販で買ったこともあるキングコング。大阪にもあったかな。ここはジャズ、ソウルといったヒップホップのネタ中心の店だけれど、2eyes/360soundがディランの60年代中期の盤を想起させるBilly Joe Royalの『Down in the Boondocks』を選び取る。Joe Southプロデュースの有名作だけど、オリジはもっていなかった。
で、その次は割と新しいお店らしいけれど同じくすすきの のファイブワン。日本のフォーク・ニューミュージック関係のアルバムやシングルが豊富だった。既にCDやレコードを持っていたけれど山田パンダ大先生の『ラヴリィ・ハット・ショップ』のサイン入りが300円にて。
あとは東芝エクスプレス・レーベルの女性シンガー4人(りりィ、荒井由美、グラシェラ・スサーナ、浅川マキ)の非売品オムニバスが500円。コレ、結構珍しい組み合わせだなと思った。
あとは英国RAKよりNew Worldという3人組の1971年盤、アルフィーのシングル2枚、ご当地札幌出身・鈴木一平在籍のフォーク・デュオ、ラビのシングル「青春碑/すみれ草」、そしてコレはなんじゃろなというCBSのシングル、ヘンリー「かわいそうな娘/悲しい時には」を。ヘンリーのそれはエミー・ジャクソン「涙の太陽」のモダン・フォーク版と思しき和製洋楽的なものと判断。それにしても松山千春、中島みゆき、ふきのとうといった北海道出身アーティストのシングルは見たことのないようなものまで出て来て。音楽ファンの熱気を感じる地元ならではの雰囲気がいい。
で、最後は時間もお金も尽きてきたので、市電山鼻線という味のあるチンチン電車に乗り、東屯田通り駅前の音楽創庫タナカへ。ここは凄かった!いわゆる一昔前の、自分が中学生の頃に通っていた古本屋のような狭い店内、これまた古本屋のようなベニヤの倒れてきそうな本棚にレコードがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。ここもオールジャンルで在庫多数。なんでここで買ったのかわからないけれどYMOのボール紙の『増殖』とか、加奈崎さん繋がりで、50周年ライブのオープニングのSEでかかっていたザ・バンド(ボブ・ディラン)の”I Shall Be Released”のカバーが入っているRCサクセション『コブラの悩み』のアナログを発見。『コブラの悩み』はカセット/CD時代に入っていた時期のリリースだから、アナログはちょっと珍しい。
あとは100円のシングル盤が凄い量だったので、山田パンダ「落陽」、先ほども買ったラビのもう1枚のシングル「季節/愛の架け橋」、徳永英明のド定番「輝きながら…」、ピンク・ピクルス「一人の道/あなたの手紙」、チャゲ&飛鳥「MOON LIGHT BLUES」、飛鳥涼(ASKA)初のソロより「MIDNIGHT 2CALL」「MY Mr.LONELY HEART」、新井英一の「清河への道」以前の「銀河の流れる街」などを。チャゲアス関係は解散騒ぎもあったからか、往年のファンからと思しき大量のシングル盤が売られていて、ファンの切ない心理を垣間見る。
そしてエレック関係では私のファースト・アルバムで2曲のアレンジをやって頂いた龍(佐藤龍一)さんのシングル「最後のジルバ/夕焼け事件」。これはSF/オカルト・チックなプロモ・シート付なのが珍しかった。このお店もお客さんがとても多くてびっくり。あと、札幌は夫婦でレコ屋に来ている人たちをよく見かけて、女性がレコをサクサクやっているのも印象的だった。これは東京ではあまり見ない風景。最高ですね!