今日も三鷹パレードへ。毎週帰り際立ち寄って、何枚か選んで店長さんとつらつらお話しして帰る…というのが、レコードに狂ってしまった私なんぞにとっては何とも生きている実感に繋がるもので。
若杉実さんという人が書いた『東京レコ屋ヒストリー』という本が今年話題になったけれど。東京のレコード屋の歴史についての聞き書き集。もちろん三鷹パレードや、先日惜しくも実店舗が閉店した高田馬場タイムなども紹介されている。ただ、本のタイトルほど包括的に東京のレコード屋を網羅したものではないのと(著者のレコード個人史的な店舗のセレクトということで)、レコ屋さんの怪しい記憶に頼ったのかリサーチ不足の面があり、相当賛否両論あるようだけれど。色々なレコ屋の店主さんからお話など聞くと、レア盤発掘、と聞いてお客もレコ屋も色めき立ったけれど幻だった、だとか悲喜こもごも、面白いエピソードはいくらでも出てくるわけで。そんなレコードは思い入れある人も多いだけに、全ての人を満足させるのは難しいと思う。ちなみに「古本の本」というのは結構いちジャンルになっている所がある。例えば反町茂雄『一古書肆の想い出』(平凡社)だとか、個人的には熱心に集めているジャンルだったりする。だから、『東京レコ屋ヒストリー』をきっかけに「レコードの本」なり「想い出のレコ屋についてのブログ」なりが今後増えていけば、それでいいのではないだろうか。個人的には通ったり、興味惹かれてきたレコ屋がとにかく被っていた(いる)のでとても面白く読ませていただいた。下北フラッシュやココナッツ・ディスク、伝説のパイド・パイパー・ハウス、このブログでお世話になっている芽瑠璃堂のことも!いやはや素敵じゃないか!
さて今日パレードで選んだのはまず…1927年〜1933年の黒人ジャグ・バンドが誕生した頃のコンピ『The Great Jug Bands』。Origin Jazz Libraryより1962年に出た編集盤でサム・チャーターズがライナーを書いている。1960年代のジャグ・バンドのリヴァイヴァルが始まっていく頃。ガス・キャノンとか、メンフィス・ミニー、あとはバーミンガム・ジャグ・バンド、メンフィス・ジャグ・バンド、ジャック・ケリー、ノア・ルイスなどを収録。当時のアメリカ盤だけれど、後ろに万年筆で感想が英語でつらつら書いてあるのが面白い。でも、ジャグの音がよくわかっていないみたいで「誰かが低い声で唸っている」とか「ベースのイミテーションみたいだ」とか書かれているのが微笑ましかった。
あとドゥービーズ『The Captain And Me』のオリジナル米初盤。ちょっとしたキズがあるだけで300円というのはなんと良心的な…オリジナルの色味は後発盤よりジャケのスカイブルーが濃いのが印象的だった。
あとはシングルを幾つか。吉幾三、1977年のコミカルな再デビュー盤「俺はぜったい!プレスリー」は大好きな曲なので、すかさず。B面「青春荘」はタイトルからして遅れてきたフォーク調だった。「俺ら東京さ行ぐだ」の破壊力はないけれど。山岡英二時代に、フォーク系のミュージシャンが営業で一緒になったけれど感じ悪かった、みたいな負のエピソードをどこかで聞いたことがあるけれど…まあちょっと筋モンの匂いがプンプンするわけですが、好きなんだよなぁ。凄い才能をもったシンガー・ソングライターだと思う。「俺ら東京さ行ぐだ」が今年アナログ再発されたという話も。ジャパ・コミック・ラップの先駆みたいな。私もかつてそのシングル盤を聴きまくりました。
あと長谷川きよし「黒の舟唄/心ノ中ノ日本」。プログレなど尖ったロック・レーベルという印象のヴァーティゴからのリリース。「心中日本」のタイトルにケチがつき、タイトルを変更したという「心ノ中ノ日本」はアルバムで聴いて以来、時折口ずさみ、心の支えのような曲になっている。
ハマクラ・メロディの最高峰「みんな夢の中」。ハスキーで良い声!
瀬戸龍介、吉川忠英など在籍でキャピトルから世界リリースされたイーストのシングル。アルバムの中でも最高の出来の”Beautiful Morning”だけれど、音はなぜかイマイチ。アルバムの方がミックスが良かったかも。
あとは小林旭「自動車ショー歌/ほらふきマドロス」。一番好きなフレーズは「骨のずいまでシボレーで」。
これは正直知らなかった、というのは、シナーラ名義の「どう思いますか。/ブルー・スカイ・ブルー」。ソロ・アルバムがシティ・ポップ名盤として名高いセッション・シンガー木戸やすひろと、元クラフトの三井誠のデュオ。クラフトはさだまさし詩曲の「僕にまかせてください」が売れたため、フォーク・グループのイメージが付いてしまったけれど、実はウェスト・コースト・ロックの素地をもっていたバンド。メンバーの濱田金吾はグループ解散後、AORの良作を多く残すことになるし、三井誠は稲垣潤一「クリスマス・キャロルの頃には」の作曲などで当てることになる。このシナーラ、二人の個性を生かしたブリージーな楽曲を1曲ずつ分け合って歌っている。詩は荒木とよひさ。