ダン・ペンのフェイム未発表曲集第2弾に合わせて、ファースト・ソロ『Nobody’s Fool』のLPリイシューが実現した。ドイツの良心的リイシュー・レーベル、ベア・ファミリーより。ベア・ファミリーと言えば最近『Rock・A・Billy Dynamite』というナント40枚組!のCDボックスを取り寄せたところだった。ちなみにそちらは正直一生かかっても聴き込めない程のシロモノで。エルヴィス、エディ・コクランみたいな定番から絶対誰も知らないような超ローカルなロカビリアンまで、これでもかと詰め込んだボックス。音もアナログに近い凄く良い音で、大興奮していた所。
さて、話を戻してダン・ペンの方。オリジナルを持っている場合はリイシューは手を出さない、という個人的ルールがあるんだけれど、こちらのリイシューLPに手を出したというのはそう、オリジナル『Nobody’s Fool』が高すぎて買えなかった…というわけで。幻の名盤とか言われているモノも、海外から取り寄せると、近年では信じられないくらい安く手に入ることもある。だけれども、この『Nobody’s Fool』はアメリカでもムチャクチャな値段が付いてます。てか、そもそもオリジナルのプレスが相当少ないのではないかな。カットされたシングルの方がまだ手に入りやすかったり。まあ今回のリイシューによって、手放す人もいるだろうから、少しは手頃なオリジナルが出回ることもあるかもしれない。
私はCDでリイシューされた輸入盤を長らく愛聴してきた。1996年にRepertoireから再発されたものと、Marvelas Recordという海賊盤風のリイシューCDが手元にあった。後者はフェイムから公式シングルになった2枚の内1枚、”Close To Me”と”Let Them Talk”が含まれている。このアルバムの内容を地味だとかいう人もいるけれど、この抑制されたソウル・フィールは代替不可能!そして後のダン・ペンを考えると結構派手な音も入っていると思いますよ。アメリカのシンガー・ソングライターものやカントリー、サザン・ソウルを愛する人にとっては、これ以上のモノはない、と思えるの1枚なのではなかろうか。
アナログは分厚く、プレスも実にしっかりしている。見開きのゲイトフォールド仕様。肝心の音も良かった!楽器の一音一音がクッキリと、ボーカルの息遣いもリアルで。しかし改めて、エルヴィスみたいな白い黒人の音。同時代のニュー・ソウルのような攻撃的な部分もなく(強いて言うなら黒人差別に抗議した”Skin”がそんなタッチだけれど)、こうした白人ソウルがゆくゆくはAORの洗練に辿りつく、ということも理解できる。共作しているドニー・フリッツも久々に聴きたくなってきた。
ドニーもそうだったけれど、90年代以降の録音も素晴らしい。そう、ダン・ペン&スプーナー・オールダムの共演ライブ、DVD付の新装盤が出ていたけれど、目玉のDVDは家宝に出来るレベルで素晴らしかった。店によっては輸入盤が2000円しないという、かなりのお買い得盤なので、DVD目当てで買い直してみる価値はあると思う。