/ Same ( United Artists / 1974 )
コレは当たりだった。ソフトなソウル風味のむちゃポップ盤。リック・ホールのマッスル・ショールズはフェイム・スタジオ産というけれど、ブルージーさは皆無。ストリングス・アレンジはジミー・ハスケルが担当していて。ヘンソンというこの人、フェイムのセッションマンとしてビリー・スワン、ルブラン&カー、ピート・カーのソロなどに参加したティム・ヘンソンでしょう。裏ジャケのリック・ホール自身の文章を読むと、9歳で幾つかのレコーディングを経験し、マッスルショールズに出向いてからはマック・デイヴィス、オズモンズ、クラレンス・カーターのセッションに加わったと言う。ヘンソン自身は鍵盤、トランペットを弾き、実にクセのない青春歌唱を聴かせるのだった。
A面は本当に曲が揃っている。A-1”Do Me Wrong, But Do Me”はアラン・オデイ作。AORなホワイトソウルの洗練を兼ね備えていて。余り期待していなかったので針を落としてビックリしてしまった。そう言えばアラン1977年の『Appetizers』に収録されていた。さらに、本作にコンガで加わっているミッキー・バッキンスとバーバラ・ワイリックによる2曲A-2”Like Baby Could”、A-3”Love Could Be So Easy”も本当に素晴らしい。極上のポップ・カントリーのような美メロを持つA-4”Goin’ Through The Motions”は同じくフェイム産のキャンディ・ステイトン盤(1974)に入っている。A面ラストの”Don’t Wait Too Long”はゴフィン&ゴールドバーグ作。間奏はスワンピーだけど、メロは実にポップ。
そしてB面。マッスルショールズとは結びつかないのだが、なぜかB-1で”God Only Knows”をカバー。ココでもヘンソンはビックリするくらい、無垢で透き通った声を聴かせるのだ。そう言えば本家のカール・ウィルスンもソロでは土臭かったことを思い出す。マック・デイヴィスのB-2”Spread Your Love On Me”を経てやっとヘンソンの自作”Part Time Lady”が。ケン・ベルと共作したリリカルなB-4”Crying Alone In Your Sleep”の方が良かったけれど。ラストの切なくポップなB-5”Laugh Til I Cry”まで、捨て曲皆無。まったく期待してなかったけれど、大名盤じゃないですか。