ボブ・ディラン来日でまた陽の目が当たりそうなブートレッグ・シリーズ12弾『1965-1966 The Cutting Edge』。ここ20年のディラン公式盤で初めて、発売と同時に買わなかった。ディラン・ファン失格かな。なんだか今年は以前のような高揚感でこういった蔵出し音源を聴けなくなっていて。情報過多かつブートの背徳感とかも消失してしまった昨今だからか自分でも不思議。ちょっと過剰と言いますかね…本編の方がいいに決まってるし、とか言ったら元も子もないけれど。じきに買って、やっぱり良かった!とか思うんでしょうけれど…
と言うことで、今日はこの時期のディラン関連盤の番外編で、サムライならぬサム・レイを。なんてシャレを言っているとますます寒くなるか。
ポール・バターフィールド・バンドの黒人ドラマーだったサム・レイ。1935年生まれ、リトル・ウォルターのバンドを皮切りに60年代前半にはウィリー・ディクソン、ボ・ディドリー、ハウリン・ウルフ、ジョン・リー・フッカー、マジック・サムと言ったレジェンドのバックを経験。60年代半ばにポール・バターフィールド・ブルース・バンドに加入。ボブ・ディラン1965年のいわゆるニューポート・エレキ事件のバックを務めている。そのサム・レイ、ジェローム・アーノルド、マイク・ブルームフィールド、バリー・ゴールドバーグ、そして当のディランが大音量で奏でた1曲目が”Maggie’s Farm”だった。
このブルーサムよりリリースされた1969年のサム・レイ唯一の叩き、歌うソロ・アルバム『Sam Lay in Bluesland』の1曲目も”Maggie’s Farm”で。なんかこのヴァージョンが好きだ。後半マイク・ブルームフィールドのスライドが唸りをあげる感じとか、何度でも聴きたくなってしまう。音は想像できる通り、シカゴ・ブルーズの音。歌はまんまマディ・ウォーターズ節なのが微笑ましい。”Sam Lay & Mississippi John”なんてミシシッピ・ジョン・ハート愛のある楽曲もある。あとは白人向けのレパートリーだと思ったけれど、”Roll Over Beethoven”のロッキンなカバーとマディの十八番”I Got My Mojo Working”が最高だ。
プロデュースはポール・バターフィールド・バンドの主要なソングライターだったニック・グレイヴナッツ。彼のソロ・アルバム『My Labors』も最近オリジナルを手に入れたけれど、結構エグイ音だった。プレイヤーとしてはエレクトリック・フラッグとかジャニス亡き後のビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーなどでも音盤を残している。アル・クーパー周辺も含めて、60年代後半から70年代のSSWの時代が到来するまでの白人ブルーズ・ロックはそれにしても熱かった。ディランもそこに一枚噛んでいた訳だけれど。黒人ブルーズとはちょっと違う魅力があって、いまだによく取り出して聴いている。
イラストはなんとなくグレイトフル・デッドのあれなんかを思い出したけれど。裏ジャケには手書きで「25」とあって、おそらく「¢[セント]」の所が剥がされている。値段付けるのに元値25¢じゃあんまりだと思ったのかな。