おっ!と思ってしまった。アナログの方が出音が良かったときはちょっと感動する。スティーヴン・スティルスがCS&Nとは別に作ったトリオ、The Ridesの2作目(前作『Can’t get Enough』のレビューはこちらに→http://d.hatena.ne.jp/markrock/20130917)。CDはすでにボーナス・トラック入りの日本盤もリリースされていて、それも買って何度か聴いていたけれど。アナログの音が何とも良い感じだったから。王道すぎるぐらいのアメリカン・ロックだから、フィットするに決まっているけれど。
スティルス以外のメンバーの一人は若手ブルーズ・ギタリスト、といってもすでに今年で38歳のケニー・ウェイン・シェパード。そしてもう一人は大御所キーボーディスト、バリー・ゴールドバーグ。フォーク・ロック期のディランとの活動や、エレクトリック・フラッグ、そしてアル・クーパーにマイク・ブルーム・フィールド、今回再び組んだスティルスとのスーパー・セッションなど、ニュー・ロック期の最重要ミュージシャンの一人だ。ベースはCS&Nのツアー・サポートをやっていたケヴィン・マコーミック。3人の共作およびケヴィンを加えた4人の共作が10分の6。とはいえ実際メロディ・ラインやメイン・ボーカルから考えて、どうにもスティルス色は強いんだけれど。ケニー主体で作った”By My Side”は90年代以降のCS&NやCPRの色もあって、そういったスティルスがハモりやすそうな曲をケニーが作ってあげる辺りのレスペクトが、素敵だなと。親子くらい年の差があるわけだから。
ジェリー・ゴフィンとバリーとの共作でR&Bスタンダードとなった”I’ve Got To Use My Imagination”のケニー歌唱も激シブな仕上がりで。ジェリー・ゴフィンの自演版もなかなかだったけれど。B面に行くと、ゲストでファビュラス・サンダーバーズのキム・ウィルソンがブルーズ・ハープで加わった”Game On”とか、バッファロー時代の楽曲を思わせるスティルスの”Mr.Policeman”がツボだった!ラストはウィリー・ディクソン作のスタンダード”My Babe”。CDのボーナス・トラックにはスティルスの新曲とポール・バターフィールド・ブルース・バンドの”Born In Chicago”(もはやホワイト・ブルーズの古典…)、そしてジミー・リードのカバーということで、そちらも見逃せないモノばかりだったけれど、レコードのまとまりとしてはボーナス抜きの10曲がシンプルでやっぱり、気持ちいい。
それにしてもほとんど新曲ばかりの新譜が出てくるとは思わなかった。一時期はどうなるかと思ったスティルスも、老いてなお盛ん、71にして枯れたくないっていう気概がちょっと凄いなと思ったり。
LPのプレス自体は新品なのに普通に擦り傷があったり、アメリカ盤ならではの荒っぽい感じもあるけれど(笑)、往年のジャズ・ファンみたいにロックを聴く人もまさかいないでしょう。アンプのツマミを緩めて、バカでかい音でガツンと鳴らすのが最高に良い。ダウンロード・カードは付属していなかったけれど、3人のサイン入りの盤というのが相当数出回っているみたいで、アナログはそちらを手に入れてみた。最近フィジカルCDの売り上げが落ちているからだろうけれど、アメリカを中心に、相当サイン盤を売っているミュージシャンが増えている。でも、そもそもダウンロードじゃないブツの良さはこういった所にあったわけだから。
そう、最近アナログを手に入れたオウ・ゴー・ゴー・シンガーズ。バッファロー・スプリングフィールド結成前の、若き日のリッチー・フューレイとスティーヴン・スティルスの記念すべきデビュー盤だ。スティルス歌唱の” High Flying Bird”は何々シンガーズ、といった当時の数多のお利口さんフォーク・グループの範疇を超えたブルーズ・マインドに驚かされる。当時19歳。これも贔屓目抜きで、CDよりアナログの方が音が良かった。たぶんそこまで手の込んだリマスターがなされていなかったからだろうけれど。いずれにしても、ここから52年の時を思いつつ…新作を聴くのも感慨深い。