いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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Chelsea Beige / Mama, Mama, Let Your Sweet Bird Sing ( Epic E-30413 / 1971 )

markrock2016-10-01



まだ聴いたことのない70年代初頭のロック・バンドなんてあるんだなぁ、とアメリカ音楽の懐の広さを思い知らされる。日本にリアルタイムで紹介されなかったバンドも沢山ある。こちらはチェルシー・ベージュというバンド。

1973年くらいまでのアメリカン・ロックにはほぼハズレがない、というのは個人的な感想。経験上どんなB級、C級バンドでも生楽器のアンサンブルでスリリングなロック・ミュージックの醍醐味が味わえる。コレ、日本でもそうじゃないでしょうか。日本だとちょっと遅れていたせいか、1976〜77年くらいまではイナタイ感じのロックバンドがいた。でも1978〜79年頃になってニュー・ミュージック的な雰囲気が挿入されてくると途端にズッコケてしまうという。

さて、チェルシー・ベージュだけれど、この唯一作『Mama, Mama, Let Your Sweet Bird Sing』、音としてはブラス・ロックという括りになる。アート・ロック的ごった煮テイスト。エピックのバンドだから、音作りも期待していたけれど、期待通りのエグイ音。ブラスやエレキ・ギターの一音一音がぐいぐい迫ってくる感じで。リード・ボーカルとピアノのアラン・スプリングフィールドが全曲を手がけている。シカゴやBS&Tなんかとも決してひけをとっていない曲もある。ボブ・ディラン風のフォーク・ロックなテイストの曲もあるけれど、そこにブラスが絡む感じも面白い。ジャズ、ロック、ブルーズ、カントリー…と幅広い音楽性を持っているようだ。プロデュースはコロンビアのプロデューサー、エンジニアだったジョン・マクルーア。アレンジがなかなか秀逸だと思ったら、アラン・スプリングフィールドと共にアレンジを手がけるサックス/クラリネットのケニー・リーマンはディスコ時代にシックをプロデュースし、ナイル・ロジャース、バーニー・エドワーズと"Dance, Dance, Dance"を共作するなどして名を挙げた人だった。



調べてみると、何でもリーダーのアラン・スプリングフィールドはニューヨーク・ブロンクスの生まれで両親はホロコーストの生き残りだったとか。スキャンダルのパティ・スマイスの母、ベティ・スマイスが運営していたギャスライトなどで演奏していたバンド、テイク・ファイヴ(もちろんデイブ・ブルーベックの曲から命名)がチェルシー・ベージュの前身。メンバーチェンジを経て、結局キャピトルと契約。S&Gなどを手がけたあの黒人プロデューサー、トム・ウィルソンがバンド名をザ・ラスト・リチュアルと改めて1969年に唯一作『The Last Ritual』をリリース。

BS&Tのフォロワーといった体だったようだけれど、余り売れず、アランのドラッグ禍で解散。メンバーの一人、ボビー・リッチグは後にシールズ&クロフツのメンバーになり”Summer Breeze”や”Diamond Girl”などのヒットを飛ばす(しかしシールズ&クロフツのバハーイ教の信仰についていけなくなって脱退し、今度はドゥービーズを脱退したマイケル・ホサックらとボナルーを結成)。

ザ・ラスト・リチュアルの解散後結成されたのが今回取り上げたチェルシー・ベージュだけれど、結局アランのドラッグのオーバードーズでその活動も頓挫したみたい。アランのドラッグ癖はそのまま治らず、1982年には残念ながら亡くなっている。ちなみにチェルシー・ベージュのメンバー、ジョン・スコーゼロ(トランペット)はビッグバンドのメンバーになり、BS&Tと後に共演している。