いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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ジェフリー・フォスケットが残そうとしているもの

markrock2015-12-09



ブライアン・ウィルソン・バンドから古巣マイク・ラブ・バンドへ。歌う場所は変わっても、カール・ウィルソンのパートや往年のブライアンのファルセットを歌える人は彼を置いて他にいない。新しいものを作ることも大切だけれど、スバラシイものを残していくことも大切だと思っているから、このジェフリー・フォスケットというシンガーには頭が下がる。私も ブライアン・バンド含めて何度か生で見たけれど、ブライアンや天国のカールがもはや歌えないフレーズを、愛情たっぷりに、そして緻密に再現してくれていた。

初めにベスト盤を買って、それから4枚のアルバムを手に入れて、10年くらい前は特に熱心に聴いていた。とにかく良い声で。とりわけ『12&12』に収録されていたブライアン・ウィルソンとの共演”Everything I Need”が気に入っていた。ブライアンの自演が聴けるとは思っていなかったので。

さて、本作『Classic Harmony』( VIVID / 2015 )を聴いてみると完全な16年ぶりのオリジナル・アルバム、かと思いきや、旧譜からのセレクトもあって、新しい世代にもアピールしようとした盤なのかも。ちょっと残念なようで、まあこのボリューム(16曲入)だから良しとしよう。山下達郎”踊ろよ、フィッシュ”の英語詩カバー(アラン・オデイの訳詩)なんて、どれだけビーチ・ボーイズ・フリークの曲だったのか、ということに、メロディに英語が載っかって初めて気付いたことなど思い出す。MFQのヘンリー・ディルツ本人をバンジョー奏者に招いた”This Could Be The Night”も初めて聴いた時、コレこそが決定版だと思ったのだった。



しかし今作、通して聴いてみると、今までの作品が余りにもビーチ・ボーイズの呪縛に囚われすぎていたでは、と思うくらい、ジェフリー自身のルーツとも言えるパワーポップやカリフォルニアのフォーク・ロックを感じさせるロックな仕上がりで。まあ僕が頭に描いてしまったイメージのせいかもしれないけれど。バッファロー・スプリングフィールドニール・ヤング)の”On The Way Home”とか、バッドフィンガーの”No Matter What”とか、ディラン(バーズ)の”My Back Pages”とか。ロック黄金時代にリスナーだったど真ん中世代の選曲。僕なんかもこの時代からなかなか出られないわけなんだけれど…余りにも魅力的で。そうなると、もちろんあのファルセットが出てこなければ、ジェフリーのアルバムを聴いていることすら忘れてしまうほどなんだけれど、彼の純粋な音楽の好みに触れたれたようで、とても嬉しかった。他にも坂本九のスキヤキの日本語カバー(アレンジまでコピーされていて、ニッポンの高度成長期の郷愁としてべったり消費されてしまっているこの楽曲をジェフリーが歌うことの意味、なんてのを考えてしまったり。あ、これってアメリカでサーフィン・ソングを歌い継ぐ感覚と一緒かもしれませんね…)なんかも面白かった。かつて共演があったビーチ・ボーイズゆかりのシカゴのロバート・ラムとの共作”The Mystery of Moonlight”は何やら聴き覚えがあるなと思ったら、ロバートのソロ作『Subtlely & Passion』に入っていた曲だった。

実は一番楽しみだった、というかこのアルバムを買おうと決めたのがシルヴァーの”Wham Bam”のカバー。「恋のバンシャガラン」という途轍もない邦題が付いているけれど、名曲だ。シルヴァーのメンバーのジョン・パドロフが組んでいたパドロフ&ロドニーも含めて、愛して止まない70年代のアコースティックなポップ・グループ。しかしこれはオリジナルのフンワリした切なさには達せていなかったかな。ちょっと唄のパンチが強すぎるような。まあ好みの問題ですけれど。しかしコレもアレンジがオリジナルと一緒、というのがポイント。はじめの話に戻るけれど、新しいものを作ることも大切だけれど、スバラシイものを残していくことも同じくらい大切だと思っている。タイトルの「クラシック・ハーモニー」がそれを物語っているようで。