/ Back Pages ( eone / 2011 )
8月16日のビーチ・ボーイズの来日公演のゲストはアメリカ!70年代のアクースティック・ポップ・バンドの雄。ロンドンで結成されたアメリカ人によるグループなだけにバンド名には郷愁もあるのかな。”名前のない馬”とか”金色の髪の少女”とか、名曲多数。日本のフォーク・ミュージシャンにも少なからず影響を与えていたと思う。”ヴェンチュラ・ハイウェイ”みたいにインパクトのあるアコギのイントロがジャネット・ジャクソンのヒット・アルバムにサンプリングされたり、フリー・ソウル好みの弾むようなドゥウェイ・バネルの楽曲にも魅力がある。ボーカルは流石にドゥウェイがニール・ヤング似でありすぎて、”名前のない馬”をニールの曲だと思いこんでいるアメリカ人もいるみたい。
メンバーのダン・ピーク(2011年に死去)が抜けて以来ドゥウェイ・バネルとジェリー・ベックリーとのデュオ編成。ビーチ・ボーイズとの繋がりで言えば、ジェリー・ベックリーがビーチ・ボーイズの故カール・ウィルスン、シカゴのロバート・ラムと“ベックリー・ラム&ウィルスン”なるトリオを組んでいたことがあった。ジェリーは非常にビートルズ・ライクなポップ・センスを持った人。
さて、本作はアメリカの最新カバー集。想像以上にフレッシュな出来!ビーチ・ボーイズの”Caroline No”も現ビーチ・ボーイズ・バンドのメンバー、ジェフリー・フォスケットを交えて取り上げている。来日公演でも演るかも!アメリカはオールディーズ・サーキットでかなりまだ人気があるようで、定期的にライブ盤やベスト盤をリリースしている。今作はかつて組んだことがあるフレッド・モーリンによるもの(ミックスはナッシュビルのカイル・ラーニング!)。フレッドはジミー・ウェッブの新作もプロデュースしていたし、ジミー・ウェッブ作の楽曲が使われたアニメの名サントラ“Last Unicorn”(のちの宮崎アニメのスタッフが参加)にアメリカによる歌唱が収められたこともあった。今作にはジミーの”Crying In My Sleep”の感動的なカバーも収録されている。ジミー自身のレコーディングにジェリーが参加していたり、相性は良すぎるくらい。
冒頭からサイモン&ガーファンクルの”America”なんだから気が利いている。改めて良い曲だし、結構コード進行がひねくれているのは一緒になって弾いてみると気付く。ファウンテインズ・オブ・ウェインの”A Road Song”には”金色の髪の少女”の一節が織り込まれていて。”Someday We’ll Know”も”A Road Song”みたいな新世代の楽曲だけれど、自分のものにしていて、なんとも初々しい。ジェイムス・テイラーが歌っていたマーク・ノップラーの”Sailing To Philadelphia”ではマーク自身の印象的なエレキが入って好カバー。ジェイムス・テイラーと言えばデビュー盤より”Something In The Way She Moves”をカバー。最近アニタ・カー・シンガーズのヴァージョンもよく聴いていたところだった。ゾンビーズの”Time Of The Season”はハマっているし、ニール・ヤングの”On The Way Home”を演る辺り、この歳になって自虐&ネタばらしかな。絶対初期のドゥウェイ作のアメリカ作品はメジャーセヴンスを使ったこの曲辺りをモデルにしているはずなんだから。ニールはこういうタイプの曲をもう作らなくなったけれど。
タイトル曲はボブ・ディランの”My Back Pages”。なんとアコーディオンを弾いているのはヴァン・ダイク・パークス!これならビーチ・ボーイズ来日のゲストにアメリカを持ってきてのも頷けるでしょう。