いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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2023年7月28日発売、リッチー・ヘヴンス『ミックスド・バッグ』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年8月26日(土)に『ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクル』の発売を記念して、西荻窪の素敵なお店「MJG」でイベントをやります。
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2023年6月30日発売、ルーツ・オブ・サイモン&ガーファンクルの選曲・解説、ジャッキー・デシャノン『ブレイキン・イット・アップ・ザ・ビートルズ・ツアー!』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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2023年3月31日発売、スコッティ・ムーア『ザ・ギター・ザット・チェンジド・ザ・ワールド』、オールデイズ音庫『あの音にこの職人1:スコッティ・ムーア編』、ザ・キャッツ『キャッツ・アズ・キャッツ・キャン』の3枚の解説を寄稿しました。
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2023年2月24日発売、ビッグ・ボッパー『シャンティリー・レース』、フィル・フィリップス『シー・オブ・ラブ:ベスト・オブ・アーリー・イヤーズ』、チャド・アンド・ジェレミー『遠くの海岸 + キャベツと王様』の3枚の解説を寄稿しました。
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2022年12月23日発売、バディ・ホリー・アンド・ザ・クリケッツ 『ザ・バディ・ホリー・ストーリー』(オールデイズレコード)の解説を寄稿しました。
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The Beach Boys

markrock2013-06-29

/ Live 50th Anniversary Tour ( Capitol/Universal / 2013 )

メンバー紹介から始まる高揚感をまた味わえるなんて!ザ・ビーチ・ボーイズ50周年再結成ツアーの公式ライブ盤CD2枚組がやっとお目見え。2012年夏のQVCマリンフィールドでの来日公演がWOWOWで放映されたり、再結成ツアーの模様を収めたDVDも出ていたし、来日公演の感動を何度も追体験していた所だけれど、また買ってしまった。それらの映像では未収録だった多数の音源も収録されて全41曲は本当に嬉しいヴォリューム!そしてやっぱり、音だけが良いな。DVDだと「ながら聴き」もできないし、曲間もまどろっこしいし。


うーん、それにしてもどうしてここまで完全復活できちゃったんだろう。やっぱりブライン・ウィルソン、マイク・ラヴ、アラン・ジャーディン、ブルース・ジョンストンに加えてデヴィッド・マークスというオリジナル・メンバーがそろい踏みしたことが大きいのかな。それぞれのビーチ・ボーイズ公演で感じられたもどかしさがやっと解消。近年のブルースとのビーチ・ボーイズ公演では7割のヤル気で流してたんじゃないかと疑ってしまうマイク・ラヴの覇気が特筆すべきだった気がする。そして、ダリアン・サハナジャやジェフリー・フォスケットらがバックアップした分厚いコーラスの存在も大きい。ブライアン・バンドでその実力は保証済みでしょう。レコーディングとライブが別物だってのは、1980年のカール中心のビーチ・ボーイズのお世辞にも精緻とは言えない(でもワイルドな)ライブを聴いても良く判る。だから、現在のメンバーが、比較的レコーディング音源に近い音をライブで作り出せたってのは奇跡に近い。しかも、生で見て判ったことだけれど、バックのメンバーの助力だけで再現できたって感じではなく、コーラスに関してはオリジナル・メンバーが揃うとこの音が作れるのだということ。そしてそして、ドラムスがマイク&ブルースのバンドから、カウシルズのジョン・カウシルだってのも嬉しい。ちなみに60年代のカリフォルニア産ロックをレスペクトしていた80年代の女性バンド、バングルスのヴィッキ・ピーターソンは今ジョン・カウシルの奥さんなんですね。


さて、ほとんど聴きたい曲を網羅している41曲のうち(ジェフリーがリードを取った曲は当然外されている)、特に嬉しかったのは来日公演で聴けなかったブルースの”Disney Girls”かな。ノスタルジックな歌だし、どうにも涙が出た。ブルースの声にはなんだか涙腺を緩ませるものがあって。マイクとのビーチ・ボーイズではいつもカールの”God Only Knows”を歌ってくれる。


新作『That’s Why God Made The Radio』も本当に素晴らしい出来だったと思う。音楽とラジオが共犯者だった旧き良き時代。アメリカでビーチ・ボーイズは、ベトナム以前の汚れなきグッド・オールド・デイズの象徴として今もある。以下、新作のレビュー等を再掲載します。ツアー後の新作が噂されていてそのことにも触れているけれど、その後まさかのマイク・ラヴ脱退!のニュースもありました。ってか単に元のバンドに戻るってことみたいだけれど…いずれにしても今年の夏は笑っちゃうくらいビーチ・ボーイズ漬けかな。6枚組ボックスも出るし…

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The Beach Boys
/ That’s Why God Made The Radio ( Capitol / 2012 )

ビーチ・ボーイズの感動的な新作。今回は意味ありげなタイトルに思える新録"Do It Again 2012"(冊子付の新しいベスト盤に入っていたもの)を入れてくれた日本盤をオススメしたい所。


いやはやブライアンとアル・ジャーディンのカムバックで、マイク・ラブブライアン・ウィルスン、アル・ジャーディン、ブルース・ジョンストン、そして短期間在籍したデヴィッド・マークスというメンバーが揃い踏みしたわけで。それだけでこの作品をかけがえのないモノにしてくれているけれど、中身も抜群に良いんだから言うことはない。比較的良い仕上がりだったブライアン参加のTHE BEACH BOYS(1985)だって復調前のブライアンだったわけだし。ジャケがビーチ・ボーイズらしい色づかいとは言え、ベスト盤かと思うくらいシンプルなのがちょっと惜しいけれど。まあ、ベテランの新作は老いた姿を全面に出さない場合が多いから仕方ないかも。


素晴らしいタイトル曲はラジオで伝播した青春の音楽への鎮魂歌。同じくポップ・マエストロのニック・ロウがギターを弾いている。全体的にはペット・サウンズ時代のビーチ・ボーイズを楽器やボーカルのアレンジで聴かせていたりする箇所もある。冒頭”Think About The Days”の悲愴感ただようアカペラとか、あざといほどでもあるけれど、涙してしまう自分がいて。『Imagination』で相性の良い所を見せたジョー・トーマスと組んだのは大正解。それにしても『Imagination』ってのも凄いアルバムだったなぁ。ほとんどを手がけるブライアンのソングライティングは2000年代に入って明るいものに変化していて(再現スマイルですら、私には明るい音楽に聴こえた)、充実したモノ。この明るさなら、そりゃマイクとブルースが演っている常夏ビーチ・ボーイズに合流できるでしょう。とは言え、マイク・ブルースのビーチ・ボーイズやアル・ジャーディンのビーチ・ボーイズもメンバーの一部が参加しているのみで、ブライアン・バンドのメンバー、ジェフリー・フォスケットやダリアン・サハナジャらが参加したブライアン楽曲主体の作り。それでもマイクの子クリスチャンやエイドリアン・ベイカー、ジョン・カウシルなど、それぞれのバンド・メンバーも参加させている辺りが、良好なメンバーの関係を物語っていて嬉しい限り。ボーカルは、マイク、ブルースの来日公演でも感じたけれど、マイクの衰えは隠せないんだが、それでも彼が歌うパートではある種のビーチ・ボーイズらしさを演出できている。アルは衰えぬ声に驚かされること間違いなし。ブライアンがツアー後制作する可能性のある新作ではロックンロールものも入れたいと言っているようだけれど、それはサーフィンU.S.A.なビーチ・ボーイズも演りたい、ということかな。そうそう、今作ではロックなギター・フレーズが聴ける曲もあったけれど、元スティーリー・ダンドゥービー・ブラザーズのジェフ“スカンク”バクスターが参加しているトラックもあって。ジョン・ボン・ジョビとの共作曲なんてのも特に違和感が無く。


8月の来日も決まっている。もちろん行きます!!オープニング・アクトは故・カール・ウィルスンとジェリー・ベックリーが同じグループを結成したこともあったアメリカ。アメリカは近年もライブ活動を積極的に演っていることもあり、かなり充実したステージになること間違いない。


あと、以前紹介した、ニール・ヤングも参加したアル・ジャーディンのソロ・アルバムもボーナス・トラック2曲付で出ていたので最近改めて入手した。

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2012年8月16日、千葉はQVCマリンフィールドでの、涙涙のビーチ・ボーイズ来日公演を思い出しながら、屈託のないマイク・ラブのソロ・アルバムを聴いている。

8月16日はちょうど6月から制作中だった私いしうらまさゆき2枚目のアルバム『愛すべき音楽よ』のレコーディング、ミックス、マスタリングが終わった日で。プロデューサーの馬下氏と二人で行って来たのだけれど、二人の長年の共通項がブライアン、そしてビーチ・ボーイズだったわけで、何やらナントモ感慨深かったのだ。


会場は熱かった割に球場だからか、お茶以外のドリンクは入り口で取り上げられて。ビールも外でどうぞ、と言う。コレに関してはそりゃないよな、という感じで。で、前座が星野源アメリカ。星野源には間に合わなかったのだが、ちょっと分が悪いよな、という感じだったと思う。前座のセッティングをした人は誰なんだろう。いいミュージシャンなだけに可哀想にも思えてしまう。アメリカのステージは流石の一言!初めて生で見たけれど、"名前のない馬"をはじめヒット曲のオン・パレードで。ジェリー・ベックリーのボーカルのコンディションが悪くて、”You Can Do Magic”なんかはカナリ辛そうだったけれど、万年青年といった青臭いボーカルは素晴らしかったし、”Sister Golden Hair”のイントロは改めて杉田二郎”男どうし”に丸パクリで転用されたのだな、と思ってしまったり(どちらも良い曲だけどね…)。ドゥウェイ・バネルの安定感は流石。相当意識したであろうニール・ヤングとスティーヴン・スティルスの個性を併せ持つ感じ。”Tin Man”なんかで見せるハードな側面も魅力的で、また観たいなと思う。途中ゲストで、ブライアンズ・ビーチ・ボーイズでカール役の名人ジェフリー・フォスケットの代役を務めることもあるクリストファー・クロスが登場(ちょうど来日中)。美声を披露する。ビーチ・ボーイズのステージでも素晴らしいボーカルを聴かせてくれた。AORのリスナーとビーチ・ボーイズのリスナーがあまり交わらないのは悲しいけれど、この人の単独公演もいつか観てみたい。


そして本家ビーチ・ボーイズですよ。彼らのコーラスを初めて聴いてやっと最後のピースがハマったというか…。感動し通しだったブライアン・バンド公演でも何か歯がゆかったあの感じ…昨年マイク・ラブ&ブルース・ジョンストンのビルボード東京公演で常時感じた安っぽいニセ者感(失礼!)…アル・ジャーディンのビーチ・ボーイズのライブ盤(結構完成度高し)での10%しかないホンモノ感(さらに失礼!)、これが吹き飛んだのですよ。



とりわけマイク・ラヴの調子がかなり良くて、YouTubeなんかで観た近年のライブの中でも低音高音ともに出色のボーカルだったんじゃないかな。一方ブルース・ジョンストンは”Disney Girls”すら披露せず裏方に徹していたが奥ゆかしくて。ただブルース、ビルボード公演で聴く限りではかなりボーカルに衰えがあったことは確かだし、致し方ないかも。そしてブライアンは肌が土気色で、幾つかの曲では微動だにしなかったり、未だかつて無く元気がなかったのが気になった。アルやデビッドは元気そのもの。アルのボーカルは実にビーチ・ボーイズらしさ、の何がしか、だったことにも改めて気付く。ちなみに2010年リリースのアルのソロ『A Postcard From California』http://d.hatena.ne.jp/markrock/20100901)は必聴です。