年も暮れに差し掛かり…今年一年頑張った自分を褒めてあげよう、などと理由を付けてずっと聴きたかったレコードを買う、という儀式。こんなことを毎年やっているような…
今年の気分だったレコードは、ルイ・ジョーダン!ずっとオリジナルで聴きたかった『Somebody Up There Digs Me』を。未来を思うと何かと悲観したくなる、そんな時代だから。カラ元気かもしれないけれど、ルイ・ジョーダンを聴くと元気になる、という法則が自分の中にある。
ルイ・ジョーダンと言えば、その入口はその昔手に入れた中村とうようさん編集のベストだった。後にLPも手に入れたけれど、はじめはCDだったはず(探したけれど最近CDは棚の奥の奥なので、すぐには出てこない…)。ジャンプ、ジャイヴだとか、キャブ・キャロウェイくらいしか知らなかった頃、聴いてみると、間違いなく白人ロックン・ロールのルーツにあるものの一つだということがわかり、黒人音楽の芳醇さに触れたような気がしたものだ。ビル・ヘイリーのロック・アラウンド・ザ・クロックがロック誕生、なんていうのは白人の作った正史だったのか!(それはそれで一理あるのだけれど…)と思ってしまった。軽妙でユーモラスな語り口(吾妻光良さんのThe Swinging Boppersがそれを日本語で再現しているけれど)、サウンドはそっくりそのままロックだもんね。ラッパをギターにしたらロックン・ロールそのもので。音も遠い昔に思えた1940年代をグッと身近に感じさせてくれた。エリアコード615のハーピスト、チャーリー・マッコイが最近観たライブで”Choo Choo Ch’Boogie”を歌っていたけれど、よく考えてみたら、そんなロック世代の人達が生まれた頃の音楽だと思えば、そんなに古くもない。
さて、ずっとオリジナルを聴きたいと思っていた『Somebody Up There Digs Me』は1956年、つまりロックン・ロール・エラが到来した直後にマーキュリーと契約して出した再演アルバムだ。代表曲”Caldonia”はこの再演ヴァージョンではエレキ・ギターのソロになっていて、ほぼチャック・ベリーの世界。ビートルズが突然変異ではなかったように、そのビートルズのルーツの一つであるチャック・ベリーも突然変異ではなかったということだ(ルイはチャックに明らかに影響を与えている)。この再演盤のプロデュースはクインシー・ジョーンズ。1908年生まれのルイ・ジョーダンを手がけた彼が後々、2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンを手がけることになるというのは、ブラック・ミュージックの100年にも及ぶ歴史の橋渡しとしても興味深い。音も生々しく、爆音で聴くと最高!オリジナルながらコンディションが良いものは流石に手が届かず、ジャケのコーティングが褪せてほぼ消えている…盤で手を打った。まあオリジナルの音が聴ければよいかな、と。
ちなみにコレ、音源自体はジャケ写を流用している、旧西独のベア・ファミリーから出た80年代の編集盤『Rockin’ & Jivin’ 1956/57 Vol.1』にも収められている。この同『Vol.2』も含めて永いこと愛聴しているけれど、未発表テイクも良い具合にちょこっと入り、愛のある良くできた編集盤だ。