どちらかと言えば昔から英国ロックよりも米国ロックを贔屓にしている。どちらも大好きではあるけれど。評論家の人達もどちらかと言えばそのどちらかに分かれていたような。個人的には、伝統は浅いにしても、自由や平等と言ったアメリカ建国の普遍的・理想的価値に無意識的に惹かれてきた。しかもどっこいブルーズの伝統、ということではイギリス人もアメリカに惹かれ続けてきた。エリック・クラプトンもその一人だろう。
先日の来日公演のこともあったからか、今更、ヤードバーズのファースト英国盤を入手してみた。60年代のオリジナルは目が飛び出るほどだから、70年代の再発で、しかも盤質Cみたいなやつを見つけて。
昔から音が悪いだとか、キース・レルフのボーカルがイマイチだとか、余り良い評判でなかった盤。私も1993年に日本のJIMCOからリリースされCDを持っていたけれど、確かにその評判通りの音で、何度も聴こうとは思えなかった。ちなみに1992年にキングから出た編集盤『The Yardbirds Featuring Eric Clapton』はジャケットにつられて『Five Live Yardbirds』かと思って買ったら、ソニー・ボーイ・ウィリアムスンとの共演を含む、全然違う編集盤だったという。ややこしいわ!って思ったりしました。
てなわけで今更、この英国盤を聴いて…ぶっ飛びました!司会のマイクの破裂音まで鮮明で。「エリック・スローハンド・クラプトン!」なんていう紹介でドッと会場が沸いて、チャック・ベリーの”Too Much Monkey Business”が始まって…何度となくCDで聴いていた音だけれど全く違っている。ロンドン・マーキー・クラブの熱気がダンゴ状になって迫ってきて。特にクラプトンの高速ギターソロで各曲がオーガズムを迎えるんだけれど、ほぼ狂ってますね。ロックン・ロールが何の隠語だったのか、を思い起こさせてくれる。この時代のギタリストの誰を取ってもこんな風には弾けなかったはずだ。キース・レルフのボーカルだってそんなに悪くないし。
ところで、日本盤のレコードの音は今にして聴くと種々多様だ。盤によっては安定した中音域を誇り、米盤よりも良音だったりするものも。ただ、ひどいと盤起こしもあるし、ジャケットもコピーで色味がオリジナルと大分違っていたり(これはとても多い)。CD化が行われた1990年前後も、現在のようなリマスターがなされていなかったし、オリジナルの音圧を再生できていなかった。とりわけ日本では、e-bayでペペッとクリックすれば買えて決済までできてしまう現在とは違い、オリジナルの入手が長らく困難だった事情もあるだろう。情報の受容・発信も一部の評論家や好事家に限られていたから誤解も大いに有り得た。一方ではそうした情報への渇望や一枚かかったフィルターがリスナーの想像力をかき立ててきた部分も無視できないのだけれど。
とはいえ、現代の視点でもう一度、過去のミュージシャンやバンドの音を再構成する作業は面白い。色々と聴き比べてみよう。
学生時代に先輩の家に呼ばれて「この"Hidaway"を聴け!」って正座させられました。その先輩、何年も留年したあげく、突然「長野に帰る」って。今頃どうしているだろう。下宿の片付けを手伝ったお礼にもらったゲイリー・ムーアのLPが今も家にある。
リプロ盤でも結構昔は高嶺の花だったような…ペイジ時代のヤードバーズ。
こんなの持ってたっけ…と思ったけどジム・マッカーティ達が作ったバンド「Shoot」の盤。久々に聴くと、明らかにCS&N症候群ですね。結構好きな音!