いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 ジョン・レノンを思う

markrock2015-12-08



12月8日。真珠湾攻撃の日、とか言うけれどやっぱり、1940年に生まれたジョン・レノンが1980年に40歳で暗殺された日…ジョンの命日という印象の一日だ。そう言えば私の父の誕生日もこの日だったから、何かと色々なことを思ってしまう。



誕生日というと、先月の11月25日は母の母、つまり祖母の誕生日だった。45年前のこの日はあの三島由紀夫楯の会のメンバー4人と自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺した日だ(1970年)、と母が言っていた。まだ18歳だった母が祖母の誕生日を祝おうと家に帰ったら、そんな衝撃のニュースが耳に飛び込んできたのだという。金閣寺潮騒を読んだばかりだったから、その凄惨な事態が余りに生々しく迫ってきて、飲み込む余地がなかったらしい。しかもその日、母の父の給料袋が窓を割って入った泥棒に強奪されるという事件もあって…その一日が忘れられないのだと言っていた。



凄惨な事態、と言えばジョンの死もまさにそうだった。なぜジョンの死が起こったのか知りたくて、以前色々な本を買って読んでみたのだけれど、その一冊にジョンの最期の様子が余りに生々しく描写されていて。深夜その本を読みながら、じっとりと手が汗ばんだのを覚えている。ジョン・レノンはその時何を思ったのだろう。



歴史にもしも、はないけれど、ジョン・レノンが生きていたら、と思ってみたりもする。ある種無思想でフレンドリーなポールと比べて、良い意味でも悪い意味でもかなり厄介な爺さんになっていたのではないかな(笑)何らかの社会運動にコミットしていた可能性もある。とはいえ晩年のジョンは米のレーガン支持という、団塊の世代の今を予見するような(そこまで短絡的な物言いは出来ない話だけれど…)ある種の保守回帰もあったらしい。それでも僕はファンで居続けたと思う。そう思うと今のヨーコさんは、ジョン・レノン幻想をある地点から再構成して、我々の望む姿で提供し続けてくれているのかもしれない。そんなラブ&ピースなジョン・レノンのあり方も僕は肯定する。ジョン・レノンが初めて出会ったヨーコの個展で、指示書きの通りにはしごを登ったら、天井に「Yes」と書いてあった…という話が好きだ。「Yes」は問答無用の肯定の一語だ。不遇な幼少期を過ごしたジョンがその言葉に人生を突き動かされたということ。否定からは何も生まれない。ありのままの自分の姿を肯定してもらえるだけで、ちっぽけな人間は歩みを前に進めることができるのかもしれない。



今年もジョンにまつわるレコードを幾つか手に入れている。まずはビートルズ『1』のリマスター再発。目玉はプロモーション映像を収めたDVDの画質の良さ!まとまりが良いと感じた27曲入りCD+DVDのフォーマットで入手。発売日に5回くらい連続で見てしまったけれど、メンバーの肌つやまで分かるくらいでブートとの落差はかなりのものだった。そして、映像で見るにつけビートルズがいかにジョン+αのバンドだったかということも改めて理解できた。

そして、リアルタイムでフィーヴァーを体感した『Live at the BBCのUKアナログ盤。これも今年何気なく手に入れたもの。BBCの続編は音が悪くてダメだったけれど、こちらは抜群に良い。LPの音も悪くなかった。そう、ビートルズものではサージェントの70年代のUKプレスのLPも、最後の溝に入っているエンドレスの笑い声だけ聴きたさに今更入手。なーんていいつつ全体的な音もまた別物の良さだった。

さらにジョンの『ROCK’N’ROLL』のUKオリジナルも今年コンディション激悪盤を入手。コンディションが悪いオリジナル盤は確実に安い。コレなんか相当持ち主が聴き込んだのだろう。写真では分かりづらいけれど、ジャケはボロボロで真ん中から左右に豪快に裂けている(笑)。でも、盤自体聴けないような代物には滅多に出会ったことがないので、余り気にしていない。音はもう最高!バーコード付きの再発LPより音圧があった!

ということで、今日は最後に昔から聴いている晩年・死後の2枚を聴こう。これももしも、の話だけれど、生きていたらダブル・ファンタジー以降の音楽がどう展開していったのか、未発表曲集も含めてこんなことを想像していくと夜も寝られない。