いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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【書評掲載】
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『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
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The Family Dogg / The View from Rowland’s Head ( Buddah / 1972 )

markrock2014-06-28


アメリカの無名メキシコ系ミュージシャンが、本人も預かり知らぬ間に南アフリカでスーパースターになっていた!という昨年日本でも話題になった映画シュガーマン 奇跡に愛された男』http://www.sugarman.jp/)(制作は2012年)。ご覧になった音楽ファンも多いだろう。ステージで拳銃自殺した、という噂が広まっていた謎のシンガー・ソングライター、シクスト・ロドリゲス(Sixto Rodriguez)が実は左官工を細々とやりつつシカゴにいまだ生存していることが判明し…その後は南アフリカ国賓級の待遇を受けて招かれ、狂喜乱舞する大観衆を前に凱旋公演をするくだりには私自身、正直涙が止まらなかった…南アフリカではアパルトヘイト下、70年代初頭の中流以上の白人家庭にはサイモン&ガーファンクル『明日に架ける橋』ビートルズ『アビー・ロード』と共にロドリゲスの『Cold Fact』が傍らにあったという。本国アメリカではビル・ウィザースらを輩出したサセックスからLPを出しながら、商業的成功に恵まれなかった彼の音楽がまさか南アフリカで反アパルトヘイトのシンボルとして祭り上げられていようとは。売れたレコードの収入も一切本人には届かなかったようだし。でも、多くを望まずつつましく暮らすロドリゲス本人はそんなことに拘らず、自分の音楽が再び人々に必要とされていることを素直に喜んでいた。音楽をしぶとく続けることの大切さや、国境を越えていく音楽の摩訶不思議を思いつつ三度観てしまった素晴らしいドキュメンタリー映画



ロドリゲスのアルバムは『Cold Fact』『Coming from Reality』の2枚だけれど、最近流石にLPは高騰している。『Coming from Reality』なんかは10数年前くらいにはたいした値段じゃなかった気もするんだけれど、これは私の記憶違いかな。



ロドリゲスの才能は楽曲を聴けばよくわかる。噛みしめるようで、とても誠実な歌声。シンプルながら、一度聴いたら忘れられないメロディ。ボブ・ディランのようでいてそれ以上だというミュージシャンの評価も良くわかる。ディランのように聴き手を錯乱させる底意地の悪さは無い。 “失業しちまった、クリスマスの2週間前に…”なんて絶望的な歌詞なんだけれど、絶望の押しつけもせず、あくまでたんたんと、誠実な歌を届けてくれる。大学を哲学を専攻していたというが、歌詞も物事の本質を見抜いたもので。今の時代もロドリゲスを必要としているのではないか、と思えてしまう。

一枚目の『Cold Fact』(1970)はロドリゲスを発掘したマイク・セオドアとギタリストのデニス・コフィがプロデュースを手がけている。白人でありながら、数々のソウルメンのバッキングを務め、歌うようなギターを弾くデニス・コフィは、かき鳴らすロドリゲスの生ギターに確実にロックのフィーリングをもたらしている。この辺が南アフリカの白人ロック・ミュージシャンに影響を与えたというのもとても面白い。メキシコ系にネイティブ・アメリカンの血も入っているというロドリゲスのリズム感も、白人フォークシンガーのようで、ホセ・フェリシアーノのようなラテンアメリカの匂いもあり、ソウルフルでもあり、という。

そして2枚目、最後のアルバムとなったのが『Coming From Reality』(1971)。彼に惚れ込んだのは、俳優出身で後にピーター・フランプトンらを手がける大物プロデューサー、スティーブ・ローランド。クリス・スペディングもギターで参加した良いアルバムながら全く売れず、歌詞の通り、クリスマスの2週間前にサセックス・レコードから契約を解除されたという。再発されたCDには、1972〜73年に再びマイク・セオドアとデニス・コフィが録ったという未発表デモが3曲入っているがこれも素晴らしかった。

そしてそして、番外編ながら昨年珍屋さんで見つけたレコードがファミリー・ドッグの『The View from Rowland’s Head』。ファミリー・ドッグと言えば、あのアルバート“カリフォルニアの青い空”ハモンドや彼のソングライティング・パートナーとなるマイク・ヘイゼルウッドらが在籍していたグループとして知られている。ちなみに、ハモンド&ヘイゼルウッドが作り、ホリーズらが歌ってヒットした”The Air That I Breath”のコードを利用して作られたのがレイディオヘッドの”Creep”であり、”Creep”の楽曲クレジットにはレイディオヘッドと共に、ハモンド&ヘイゼルウッドの名前が入っている。



で、彼らのセカンドはなんとロドリゲス完コピ曲集の趣き。アルバートハモンドを脇に置いてグループの指揮を執っていたのが『Coming From Reality』のプロデューサー、スティーブ・ローランドその人だったわけで。アルバムのタイトルからしても、ローランドの頭の中がロドリゲスで一杯だったことが推測できる…映画にも社長が出てきたブッダ・レコードからのリリースで、クリス・スペディングが参加している。"Advice To Smokey Robinson"なんていう、デトロイト出身のロドリゲスらしい未発表曲も含まれている。今年2枚組でCD化もされたので、映画に続けて聴いてみる価値はある。