いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 NORA

markrock2014-03-08

/ ノラ VOL.Ⅰ( AARDVARK AV-3004 / 1973 )


自分の3枚目のCD制作もいぜんとして続いていて。自分以外のミュージシャンに参加して貰うレコーディングがまだもうちょっと残っている。なかなか世に出るまでホッとできないもの…でも今回のレコーディングに参加してくれたラッパーさんの新ユニットの楽曲提供を依頼されたり!と、嬉しい出来事もあって。ロジャー・ニコルズの気分で暇を見つけてはソフト・ロックなデモを作ったりしている。


今回はディストリビューターさんを探したり、CDの届け方を色々模索しつつ。少しでも多くの方に聴いて貰えたら、と思うのはミュージシャンなら当然のことなんだけれど、音楽を取り巻く状況が厳しくなってきていることを肌で感じてもいる。発売前後3ヶ月が勝負ですよ、そこで頑張って営業をかけましょう、とかって話を聞くと、まあ確かに判るけれど、正直そんな使い捨ての商品にされてしまうことに辟易してしまう。リスナーとしての我々も「はい次、次…」って感じでそれに慣れっこになっているのかもしれないけれど。前作のタイトル曲”愛すべき音楽よ”(芽瑠璃堂マガジンのタイトルにもなりました)はまさにそんなことを歌った曲だったのでした(http://www.youtube.com/watch?v=WolGqQrbu_8)。


資本主義社会に生きるからには、金儲けが全てなのは判っているけれど、そういう匂いを肌で感じてしまうとすぐに逃げ出したくなってしまう。思えば20代で7つ職場を変えたのもそれかな。現代社会(いや、近代以降の社会か)で「効率が悪い」とされていることにも意味があると信じているから。思えば右も左もありますが、社会主義だって資本主義だってつまりは効率至上主義。別に要領悪いのが好きだとかそーゆー趣味はないけれど、やりすぎだとなるとワタクシ個人の脱走本能が働いてしまう。人間であって機械じゃないからね。


そうそう、今日近田春夫『考えるヒット2』(2001)の巻末の生前の阿久悠との対談をたまたま読んでいたら


「僕が一つ思うのは、最終的には音楽はタダになるんじゃないかということ。」


とあって、近田さん13年前に凄いな、慧眼だな、と。


そう思うとイマドキ、タダか場合によってはマイナスにさえなる、にも関わらず音楽をやる、というこの非効率にはもしかすると意味があるのかもですね…全てのしぶといミュージシャンに幸あらんことを!!

さてさて、そんな話はさておき。最近感動したバンドのレコードを。1973年発売のノラのLP『NORA VOL.Ⅰ』。ずっと探していたけれど、見つかるときはひょいっと見つかるものです。コレ、相当ハイレベルな初期ビートルズ直系バンド。チューリップやビートルズのコピー・バンドのバッドボーイズ(元オフコースの清水仁在籍。どうでもいいですが、最近フルメンバーで再結成したタイガース森本太郎のバンド、スーパースターにもベーシストとして参加してました!)と並び称されてもおかしくない音。日本の場合、ハンブルク時代、1960〜1962年の皮ジャン・ビートルズを模したキャロルが1972年デビューだったように、この頃は10年遅れてこんなに本格的な音が作られるようになっていた。


そう、このバンドはキャロル矢沢永吉のソロ作品”ウイスキーコーク”や”アイ・ラヴ・ユー、OK”などで作詞を担当していた相沢行夫(ギター、ヴォーカル)が在籍していたバンド。相沢はキャロル解散後、ソロ初期の矢沢のバックバンドを木原敏雄(キャロル結成前の矢沢と「YAMATO」というバンドを組んでいた)らと務め、その後相沢と木原は1981年にNOBODY(http://www.nobody.co.jp/index.html)でデビュー。アン・ルイスの”六本木心中”” あゝ無情”や吉川晃司の”モニカ””サヨナラは八月のララバイ”といったロック歌謡のソングライター・チームとしてもチャートを賑わしたのであった。

その他のノラのメンバーはというと、石田斉(リズムギター)、杉浦芳博(ヴォーカル、アコギ)、松田良一(ベース、ヴォーカル)。ドラムスにはサポートの加藤直久が。他には深町純やジョニー(ジョン)山崎らがレコーディングに参加。山本コータローは当時は相当高価だったであろうリッケンバッカーを「貸した」ということでクレジットされているのが面白い。彼は既に一儲けしていたんでしょう。その上、リッケンを弾くようなキャラでもなかった気がするし。


大きく分けると12曲中、相沢楽曲4曲、杉浦楽曲5曲、松田楽曲3曲の割合。メンバーの多くにソングライティングの才があった。ここに石田曲はないけれど、ノラ解散後のビロージュというバンド(杉浦がソロになったためだろう。石田、相沢、松田に斉藤実夫というメンバーが加わった4人組)のシングルには石田楽曲が収められていた。


特にA-1”あの娘に首ったけ”(相沢詩曲)とA-2“アン”が良すぎる!思った以上に音が良くて。ギターとかエグすぎる位に生々しい音。一聴するとキャロル”ルイジアンナ”と被る雰囲気で、明らかに”I Saw Her Standing There”みたいな初期ビートルズが下敷きになっているんだけれど、そこに甘いメロが入る感じがキャロルよりもポップで、後の相沢楽曲の心得たツボを感じてしまう。A-2は田口淑子作詞で相沢の曲。田口淑子は同時代”春だったね”だとか、よしだたくろうの詩も書いてましたね。松田楽曲もA-3”今日から君は”やA-4”二人の唄”とかも甘酸っぱすぎて最高。日本語の載せ方も実にムダがない。大体元ネタは浮かぶんだけど、それをこんな風にそれっぽく演っちゃうってやり方も、現代の方がウケがいいかも。あっぷるぱい、がシュガーベイブっぽい曲を演奏しちゃったみたいに。


エキゾチックなB-1“デゾ・エレロ”やB-4”静かに”にしても、杉浦楽曲にはフォーク歌謡っぽさがあったから、後にそっちの方向で引っ張られてソロになったんじゃないかな。ロックを貫いた相沢は80年代になって売れる、つまり時代が追いついた、と。ノラはその後2枚目のアルバムは出ず1974年解散。シングルのみの楽曲に”忘れかけた愛の言葉” “レンガ路/夢が始まる時”がある。

ちなみに杉浦芳博はソロで『杉浦よしひろⅠ 街』(1976)をポリドールからリリース。ルパンで有名な大野雄二が全編の編曲を手がけ、石川鷹彦松木恒秀、岡沢章、村上(ポンタ)秀一らが参加。フォルクローレ風の”白い街”が強烈な印象だけれど、ノラ時代のロック感覚を維持した爽やかなポップ・ロックが展開されている。他にもとんぼちゃんや絵夢に曲を書いたり、すぎうらよしひろ名義で『マッハバロン』主題歌(阿久悠井上忠夫コンビ)といったアニソン録音も残している。


一方、松田良一は松田良名義で作曲家として活躍。彼の名前、かつてJ-POPのクレジット・マニアだった私は高橋真梨子の”遙かな人へ”の作曲家として頭の片隅にあった。1994年リレハンメル・オリンピックの主題歌としてヒットしました…ってもう20年前ですか!