/ Same ( Wea / 1973 )
ジャパニーズR&Rの古典と言いますと、東のキャロルと西のファニカンというわけで。そうは言ってもいまだにファニカンの方が再評価されないのはなぜだろう。キャロルの方がアーリー・ビートルズのコピーってな明快なヒット曲があったことは事実だけれど。ロックにこだわったソロでの成功を収めた矢沢とセクシャル・バイオレットな歌謡曲に魂を売り渡したようにみなされた桑名正博の立場の違いか?個人的にはリアルタイムで知っているわけでもないし、どちらも等しくカッコイイと思っている。
さて、このファーストはもちろんLPでも持っているけれど(アトランティックのレーベルがなんとも良いのだ)、今日聴いているのはCD。“ニューロックの夜明け”シリーズでCD化された時のもので、”彼女は待っている〜ロックンロール・メドレー”と”暗闇”(栄孝志ボーカルのカントリー・ロックな作)がボーナス収録されている。
R&Rを貴重としながらも、南部っぽい泥臭いブギーなノリがある所がキャロルとは全く違った個性になっていることが、“魔法の気体”を聴けば一発で判る。桑名と栄孝志のギターの音が全編とても良い。桑名のボーカルの巧さはそりゃ折り紙付きでしょう。元Mの西哲也が本作ではゲスト・プレイヤー扱いながらドラムスを担当していて、本作をとびきりロックに仕立て上げている。スワンピーな”退屈はあぶくになって…”、アクースティックでブルージーでバラード”今ここに僕はいる”、代表曲”スウィート・ホーム大阪”など、聴き所満載。”気違い”なんて言葉も飛び出す”僕もそのうち…”やタイトルからしてニュー・ロックの熱気を感じる”無意味な世界”辺りも熱い。アクースティック・ロックなM-7”午後一時ちょっとすぎ”は拙いながらはっぴいえんどから明らかにインスパイアされた詩。しかし、唄が上手すぎますね。はっぴいにしても、創成期の日本語ロックは唄がヘタなのが一つの”ロックらしさ”とみなされているような所があって(もちろんだからこそ当時売れなかった)。そう思うとファニカンがロックとして評価されなかったのはそこかもしれませんな。