いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

f:id:markrock:20190212213710j:image
いしうらまさゆき へのお便り、ライブ・原稿のご依頼等はこちらへ↓
markfolky@yahoo.co.jp

f:id:markrock:20190212212337j:image
[NEW!!]極北ラジオ石浦昌之の「哲学するタネ」が書籍化されました。 『哲学するタネ【東洋思想編】――高校倫理が教える70章』(石浦昌之 著)2018年9月発売!! ●石浦昌之著 ●定価:本体2500円+税 ●A5判(並製)384頁
詳細はココをクリック
注文はココをクリック

【書評掲載】
『情況』2018年秋号 田中里尚(文化学園大学准教授)「教えられぬことこそ語り続けなければならない―石浦昌之の実践について―」
『日本教育新聞』2019年3月18日 都筑 学(中央大学教授)「先哲から学ぶ人生の知恵」
ココをクリック

Willie Wright

markrock2013-06-07

/ I’m On My Way( ARGO LP-4024 / 1963 )

三鷹のネオ書房、と聞いてピン来る人はいるだろうか。漫画本を中心にした品揃えの現役の貸本屋だ。

それがそれが、今日たまたま店の前を通ると、なんと「1冊100円」の貼り紙が。しかも上から消されて「1冊10円」になっている。まさか、と思って店内に入ると、かつて狭い店内にうずたかく積み上げられていた本や雑誌がほとんど無くなっており、空っぽの本棚だけが寂しく立っている。


店主のおじさんに尋ねると、「閉店したんだけどね」とのこと…閉めても店を開けていたのはなぜなんだろう。「若い人は本を読まなくなったし、本は昔よりも安くなったからねぇ」。おじさんの話につられて色々聞いてしまった。なんでもネオ書房、もともと大阪で商いをはじめたらしい。戦後間もない、娯楽の少なかった時代。大阪では話題となり、東京進出、と相成ったようだ。中央線沿線の店舗は親戚の皆々で運営されていたそうだ。そういえば高円寺だかどこかで見たことがあるような…貸本屋の全盛期、東京にはまだ同業が少なかったこともあって、それはそれは大きく賑わったようだ。

三鷹の人達は優しいから、なんとか続けてこられた」。以後なんと63年間、商売を続けてきたとのこと。店内は開店当時のまま、本棚は当時職人さんが作ったもので、いまもびくともせず頑丈だ。お若く見えるおじさんも実は昭和3年の生まれ、ということは85歳でいらっしゃった!まったくそんな風には見えなくて。志願兵として中学の時分から戦争に行っている。お話によると、今82歳の人がギリギリ兵隊として戦争を知っている世代だという。


新聞屋なら取材お断り、なんてこともおっしゃっておられたので、いち住民としての私がここに書くことも良しと思わないかもわからない。でも、三鷹の大好きな風景の一つが消え去る前に、何か書き残しておきたかった。63年間も商売を続けるなんて、想像もつかないことだけれど、時代の流れとはいえ、一世を風靡したお店を畳むことを感傷的に描かれるのは、我慢できないことなのかもしれない。少なくなった本の中から、五木寛之『青年は荒野をめざす』を買った。10円ではなく、100円だった。

                                                                                                                                                                                                                        • -

さて、黒人男性フォーク・シンガーというと…ポピュラーな所ではハリー・ベラフォンテ(かなりクロスオーバーな音楽性ですが)、そしてジャッキー・ワシントンとかリッチー・ヘイヴンス、エリック・ビブの父レオン・ビブ、昨年亡くなったテリー・キャリアーなどがいる。女性だったらオデッタの系譜がある。

ウィリー・ライトのLPは初めて買ったもの。Argoというレーベルは相当フォーク・レーベルとして年季が入っているみたい。フォーク好きのつもりでそこまで注目していなかった。
http://folkcatalogue.wordpress.com/2010/02/07/pre-history-1925-1951/


録音はシカゴ。1963年。シカゴのフォーク・シーンというとちょうど同じ頃デビューしたテリー・キャリアーを思い出す。ウィリーのギター&ボーカルに加え、レイ・テイトのギター・バンジョー・ハーモニカ、ジャック・チェチニのギター、エルディー・ヤング(ex.ラムゼイ・ルイス・トリオ、ヤング・ホルト・アンリミテッド)のベース。


冒頭はボブ・ギブソンの”Daddy Roll ‘em”でこりゃ強烈だな、と思うけれど、徐々にフォーク・ミュージックの持つブルーズ・フィールが自然に醸し出されてくる。だから、パブリック・ドメインとしてクレジットされているフォーク・ソングの解釈がどうにも素晴らしい。なんといってもテリー・キャリアーのファーストにも入っている”Cotton Eyed Joe”が白眉でしょう。定番”House Of The Rising Sun”も演ってました。


レア・グルーヴの文脈で掘り起こされた1977年盤も話題になったけれど、本盤の深遠な響には叶わない。