いしうらまさゆき の愛すべき音楽よ。シンガー・ソングライター、音楽雑文家によるCD&レコードレビュー

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 いしうらまさゆき

markrock2013-03-09

/ 愛すべき音楽よ(MASH RECORDS / 2012)


私いしうらまさゆき の2枚目のアルバム『愛すべき音楽よ』だが、昨年末のリリース以降、耳にして頂いた方々からは色々とご好評の声を頂いている。ありがたいことだ。今をときめく音楽ライターの清水祐也さん(TRASH-UP誌、EX.モンチコン)や行川和彦さん(ミュージック・マガジン誌)にも素晴らしいレビューを書いて頂いた。特に50〜60年代のロックンロール以降のポピュラー音楽をじっくり聴いてこられたリスナーの方々からの反応があったのは、制作者の本望とも思えることで、嬉しいことだった。

タイトル曲の『愛すべき音楽よ』は、高校生の頃に高田馬場レコード屋をはしごした想い出と音楽業界の現状へのエールを歌った、そんな曲なのだけれど、最近びっくりしたニュースがあった。危惧したレコード文化の斜陽が現実のものとなったような悪夢。それは新譜CD店『ムトウ楽器』の閉店(2013年4月末で…)。『ムトウ』と言えば、学生の街・高田馬場で戦前からあったと聞いている。70年代の本などを読んでいて、高田馬場のムトウと新宿紀伊国屋の帝都無線でレコードを見た、なんて一節に出くわしたこともある(帝都無線はまだある)。


私が高校生の頃の『ムトウ』は、横断信号を挟んで2店舗あって。エスカレータを登った2Fの方には少し楽器も置いていた。1994〜97年くらいかな。ちょうどナイス・プライス・ラインだとか、Q盤だとか、洋邦の名盤のCD再発がむちゃむちゃ盛んだった時代。在庫を目で確かめられるあのお店は貴重だった。ギャラガー&ライル『ブレイカウェイ』を買ったよね。でもたいていは欲しくてもお金がないから、何時間もただ見るだけ、こんなレコードもあるのか〜なんて知識だけを付けてねばったりして。


その後はこれまた中古レコード屋の名店『タイム』に立ち寄る。実はこのお店が”愛すべき音楽よ”のモデルになっている。とてもキレイにレコードが並べられ、おじさんはいつもレコードをピカピカに磨いている。買うとどんなに安い盤でも「なにか不具合ありましたらお持ち下さい」と必ず一言添えられる。素敵なお店だったな。店頭の均一棚でエヴァリー・ブラザーズのケイデンス時代の輸入ベスト盤(ライノだったかな)やボブ・ディランジョーン・バエズが共演するニューポート・フォーク・フェスティヴァルのライブ盤を見つけた時は本当に嬉しくて小躍りした!1Fでは出るのが早かったサンプル盤もよく買った。クラシック中心の2Fにもフォーク・ブルーグラスのコーナーがあったり、400円均一があったり。エアプレイのレコードとか、杉真理あたりを買った気がする。2Fで夢中になってレコードをめくっている人達、音楽愛に溢れたなんとも言えない静かな午後のひととき、大好きだった。


それと、レーザー・ディスク中心だけどサンプル盤CDにしばしば出物があった『DISCAT』もよく通った。なんかお店のお姉さん目当てだった気もするけど。あとレコファン。ジミー・ウェッブのベスト盤を発見した感動は忘れない。それに住宅街の一角、愛国製茶近く、北口のジャズ専門店『DISC FUN』(今はもうない)。入り口に裸のCDプラケースに値札が無造作にセロテープで貼り付けられた100〜300円の激安CD棚があった。大好きなシンガー・ソングライター、マーク・コーンのサイン入りCDもそこで発見した(誰が売ったんだろう…)。それにレコードの激安10円〜のエサ箱も無造作に置かれていて。日本のフォークとか、ロック定番のレコードのコレクションの中核はあそこで揃えたような気がする。吉田拓郎の1979年のライブLPボックスとかも、ジャケットにマジックで「○10」(10円)って書いてあって、あくまでカス盤扱い。店内はもっと凄くて、ジャズ以外のレコードはおかしい位に安く、思い思いのレコードを手にした人々で店内はいつも殺気立っていた。ウェスト・コースト・ロックやシンガー・ソングライターものの定番もあの店に通っていたら全て揃った。間違いなくレコード狂いを加速させた店のうちの一つだ。


今住んでいる三鷹で通い続けている中古レコード屋『パレード』三鷹でも中古盤屋は一店舗のみになってしまった。なんとも居心地が良く大好きなお店だが、これは是非聴いて貰わなくちゃ、と最近持参した『愛すべき音楽よ』を店長さんがとても気に入って下さって。お店に来るお客さんで聴かせたい人がいる、なんて言って2枚買って頂いたり。


いや、これがまた、なんという偶然か、パレードの店長さんこそ、”愛すべき音楽よ”のモデルとなった高田馬場『タイム』で修行されていた方だったのだ。それまで全く知らずに通っていたわけだけれど、確かにタイムのマナーが息づいている。店長さんはいつもレコードを拭いていて、「なにか不具合ありましたらお持ち下さい」と一言が添えられる。今は亡きタイムの店長さんの意思が『パレード』には確実に受け継がれていた(同じくタイムから独立された方のお店、お茶の水マーブルディスクは既に閉店している)。パレードの店長さんと話していたら、「音楽が好きだと思ってこの商売を続けてきたけれど、ある時、もしかしてレコード(を拭くこと)が好きなんじゃないか、と思えてきた」なんて仰っていた。奥深い…そんなパレードが大好きだ。


…ところで、いまだに見る夢がある。それは、高田馬場の早稲田通りをまっすぐ行って交差点の左手に花屋があり、その店舗の階段を下りると、中古レコード屋があって日本のフォークを中心に結構在庫があって…驚喜して買おうとしたときに、ハッと目が覚める、という。レコード好きならこういう夢、見たことないですか?何度もその夢を見るものだから、ある時、本当に確かめるべくその店に行ってみたら、お店は存在していなくて…。自分でも夢なのか、本当にあったお店なのか、いまだに判然としない。でも一度行ったような気がするんですよ、その時は持ち合わせがなくて何も買えなかったような…誰かこの店の真相を知っていたら教えて下さい。レコード・バカの他愛ない夢物語なんですが…